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一般社団法人や公益法人にも税務調査は入る!脱税が疑われるケースも
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
一般社団法人や公益社団法人は、非営利法人であり、税制の優遇措置を受けることができます。しかしながら、一般社団法人や公益法人を設立しても、納税義務がすべて免除されるわけではありません。そのため、一般企業や個人事業主と同様、一般社団法人や公益法人も税務調査が行われており、場合によっては脱税目的で一般社団法人や公益法人を設立したのではと疑われるケースもあります。
では、一般社団法人や公益法人の税務調査ではどのような点をチェックされるのでしょうか。
今回は、一般社団法人や公益法人の違い、税務調査時の注意点などについてご説明します。
目次
一般社団法人と公益法人について
まずは、一般社団法人と公益法人の違いについて確認していきましょう。
一般社団法人とは
一般社団法人とは、一般社団法人及び財団法人に関する法律に基づき、設立された非営利法人のことです。一般社団法人は、定款を作成後、公証人の認証を受け、法務局で登記申請を行うことで設立ができます。2名以上の設立時社員がいれば、資本金も不要であり、審査を受ける必要もありません。
一般社団法人は「非営利型法人」と「非営利型法人以外の法人」の2つに区分されます。このうち、非営利型法人の要件を満たす一般社団法人は、法人税法上の法人区分が公益法人等として扱われます。そのため、法人が行う事業のうち、収益事業から生じた所得のみが法人税の課税対象となるといった、税法上の優遇措置を受けることができます。一方、非営利型法人以外の法人については、法人税法上では普通法人として扱われ、すべての所得が課税対象となります。
公益法人とは
一般社団法人や一般財団法人のうち、民間有識者で構成される第三者委員会による公益性審査を経て、行政庁から公益認定を受けた法人が公益社団法人、公益財団法人です。
一般社団法人が公益認定を受けるためには、公益目的の事業費率が50%以上であり、収支相償であると見込まれる、事業を行う技術的能力がある等の条件を満たす必要があります。
公益法人になると、公益目的事業会計における利益が法人税上非課税になったり、一定の源泉所得税が免税になったりといった税制上のメリットを受けられます。また、収益事業の資産を収益事業以外の事業に支出した場合、収益事業にかかる寄付金として扱えるみなし寄付金制度なども活用できます。
一般社団法人は登記のみで設立が可能であったのに対し、公益法人は厳しい審査を通過する必要があり、その分、税法上の優遇措置も大きくなるというわけです。
一般社団法人や公益法人の税務調査
繰り返しになりますが、一般社団法人や公益法人も納税の義務があります。したがって、一般社団法人や公益法人であっても、正しく納税を行っているかどうかを調べる税務調査の対象となり得ます。では、一般社団法人や公益法人の税務調査ではどのような点を調べられるのでしょうか。
一般社団法人や公益法人が納めるべき税金とは
一般社団法人や公益法人が納めるべき主な税金は次の5つです。
・法人税
・法人住民税
・特別法人事業税
・消費税
・源泉所得税
法人税と特別法人事業税については、公益法人の場合は、公益目的事業を除く収益事業によって生じた所得に対して課税されます。一般社団法人の場合は、非営利型法人であるか非営利型法人以外の法人であるかによって課税対象が異なり、非営利型法人の場合は収益事業分の所得、非営利型法人以外の法人については全所得が課税対象となります。
法人住民税については、公益法人の場合は公益目的事業を除く収益事業にかかる法人税額にかかる法人税割と均等割の最低税率が課せられます。一方、一般社団法人では、法人税割については、非営利型法人は収益事業にかかる法人税額、非営利型法人以外の法人では全所得にかかる法人税額に課税されます。また、均等割はいずれも最低税率が適用されます。
ただし、自治体によって収益事業を行わない公益法人に対しては住民税の均等割を免除するケースがあります。
一般社団法人や公益法人の税務調査のポイント
一般社団法人と公益法人の場合、非営利型法人であるか非営利型法人以外の法人であるか、公益法人の認定を受けているかどうかによって、法人税の課税対象が変わってきます。
したがって、税務調査では公益認定を受けているのか、非営利型法人の要件を満たしているのかに基づき、正しく確定申告が行われているのかについて調査がなされます。また、後述しますが、同族役員の割合によって一般社団法人であっても特定一般社団法人とみなされる場合があります。税務調査時には、特定一般社団法人に該当しないか、その場合は相続税を適切に納めているかについてもチェックがなされるでしょう。
一般社団法人を脱税に悪用するケースが増加した過去
かつては、社団法人の設立には主務官庁の許可が必要でした。しかし、2008年12月1日に施行された一般社団法人及び一般財団法人に関する法律によって、法務局への登記のみで一般財団法人や一般財団法人を設立できるようになりました。
ところが、この法改正を悪用して一般財団法人を設立し、設立した一般社団法人に個人の財産を寄付という形で移行することで相続税対策を行う人が増加したのです。
2018年の税制改正による規制と税務調査時の注意点
そこで2018年度の税制改正では、一般社団法人のうち、特定一般社団法人に該当する法人の場合、理事が死亡した際には一般社団法人に相続税を課すと定めました。特定一般社団法人とは、次のいずれかに該当する一般社団法人です。
・相続開始直前の時点で同族役員が全役員の1/2を超えている場合
・相続開始前の5年間で同族役員が全役員の1/2を超えている期間が3年以上である場合
被相続人や被相続人の配偶者、3親等内の親族などが役員となった場合、同族役員としてみなされるのはもちろんですが、被相続人が役員を務める企業の役員従業員も同族役員の対象となります。したがって、全役員の半数以上に第三者が入っていない一般社団法人でなければ、特定一般社団法人の扱いを受ける可能性が高くなるのです。
2008年の法改正時に個人の相続税の節税対策として一般社団法人を設立したケースもあるでしょう。そのような場合、一般社団法人に個人の財産を譲渡した形を取っても、税務調査によって特定一般社団法人であるとみなされれば、相続税の脱税をしたと指摘される可能性が高くなるのです。
一般社団法人・一般財団法人が100億円の脱税を指摘された事例も
一般社団法人や公益法人を対象とした税務調査では、相続税の脱税だけが指摘されるわけではありません。法改正に伴い、法改正以前の慣習にしたがって確定申告を行っていた場合も税務調査で脱税を指摘されるケースがあります。
2018年には、静岡県の陸上自衛隊東富士演習場の土地を国に貸与している一般社団法人・一般社団法人の計10の法人が、2017年以前の5年間の賃料収入を巡り、総額100億円超の申告漏れを指摘される事件がありました。一般社団法人は、演習場の周辺住民らで構成され、年間数億円の賃料を国から受け取っていたものの、申告を行っていませんでした。
この10団体は、かつては公益法人が2008年の法改正によって公益法人の要件が厳格化したことに伴い、公益法人の認定を外れ、一般社団法人と一般財団法人となった団体でした。いずれの団体も、非営利型法人として法人税法上は公益法人等の扱いを受けていましたが、非営利型法人であっても土地を貸して得た所得は収益事業とみなされ、法人税の課税対象であると指摘されたのです。追徴税額は、過少申告加算税を含め約20億円に上ったとされています。
まとめ
一般社団法人や公益法人も納税の義務があり、普通法人や個人事業主と同様に税務調査の対象となります。公益認定を受けているのか、非営利型法人に該当するのかなどによって、課税の対象が異なるため、税務調査では法人の実態や会計処理について詳しく調査がなされます。
また、一般社団法人は登記申請のみで設立できるようになったため、個人の相続税対策として設立された社団法人も少なくありません。しかし、法改正により特定一般社団法人には相続税の納税義務が課せられるようになっています。税務調査では相続税についても確認されるケースが多いはずです。税務調査で脱税を指摘されることのないよう、正しく確定申告を行うようにしましょう。
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