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質問応答記録書とは?税務調査への影響や回答時の注意点についても紹介
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
質問応答記録書とは、調査官が納税者に対して行う質問と、その回答を記録した書類です。
本記事では「質問応答記録書とは」について紹介します。
他にも「質問応答記録書による税務調査への影響」や「質問応答記録書の回答時の注意点」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、質問応答記録書について理解を深めてみてください。
目次
質問応答記録書とは?
税務調査においておこなわれる「質問応答記録書」とは、調査官が納税者とのやり取りを基に作成する文書です。
納税者が自分で作成するのではなく、調査官が責任を持って記録をおこないます。
具体的には、質問に答えるのは経営者や経理担当者であり、適切に対応すれば自社に有利な内容だけを伝えることも可能です。
また、調査官がすべてのやり取りを厳密に記録するわけではなく、特に不利な情報が積極的に記録される可能性は低いのも事実です。
さらに、税務調査の担当者の判断が働くので、むしろ有利な内容が強調される場合もあります。
質問応答記録書の必要性
質問応答記録書の必要性については、以下の2つが挙げられます。
- 調査内容の証拠として活用
- 重加算税の事実確認
それぞれの項目について解説していきます。
調査内容の証拠として活用
税務調査における質問応答記録書は、調査の際に話し合った内容や、申告書を提出するまでの経緯を記録するための文書なので、調査内容の証拠として活用しています。
調査を担当する職員は、調査の結果を内部用の文書として残しますが、これは客観性が欠けているので、裁判などでの証拠としては十分ではないと判断されます。
また、税務調査では録音による証拠保全がおこなわれることはありません。
そのため、税務署の職員は、納税者が署名した質問応答記録書を作成し、それを証拠として活用しています。
重加算税の事実確認
質問応答記録書は、重加算税の事実確認としても活用されています。
重加算税とは、税務違反に対する罰則の一つであり、この税を課すためには、その違反を裏付ける具体的な証拠が必要です。
疑念があったとしても、証拠が揃っていなければ重加算税を課すことはできないのも事実です。
実際に、単純な計算ミスから重大な不正行為に至るまで、最終的な判断は税務調査官がおこなうので、納税者は正確な情報を提供することが求められます。
調査官が事前に予想していた内容と、実際に確認された事実が異なることもあるので、経営者は慎重に対応し、質問には正確に答えることが重要です。
質問応答記録書による税務調査への影響
質問応答記録書による税務調査への影響については、以下の3つが挙げられます。
- 作成を拒否すると調査が長引く可能性がある
- 作成しただけでは重加算税の対象にはらない
- 税務調査の結果には直接影響しない
それぞれの項目について解説していきます。
作成を拒否すると調査が長引く可能性がある
調査担当者から質問応答記録書の作成を求められた場合、その作成を拒否することは可能です。
しかし、作成や署名を拒んでしまうと、調査担当者は他の証拠を基に重加算税の適用を試みることがあります。
その結果、申告書の作成過程や相続後の行動について再度確認が行われる可能性があります。
さらに、金融機関への調査がおこなわれることで税務調査が長期化するリスクも考えられます。
作成しただけでは重加算税の対象にはらない
質問応答記録書に署名をすることは、あくまで書類に記載された内容に同意したことを示すものであり、それだけで重加算税が適用されるわけではありません。
しかし、意図的に税務を逃れるための行為がおこなわれていた場合、質問応答記録書が証拠となり、結果的に税務署が重加算税を課す根拠となってしまうケースもあります。
回答内容は調査担当者によって文書として整えられるので、実際に答えた内容と記録書に残る内容が異なる場合も考えられます。
署名する前には、必ず記録書の内容を確認し、必要に応じて修正を依頼するようにしましょう。
税務調査の結果には直接影響しない
質問応答記録書を作成したとしても、税務調査の結果には直接影響しません。
税務署が加算税を課す際には、申告内容に誤りがあった場合なので、その内容に応じて適切な加算税の種類を選定します。
納税者が意図的に所得や取引を隠蔽するような行為をおこなわなかった場合、税務署は重加算税を適用することはできません。
しかし、税務調査時に質問応答記録書で仮装隠蔽の事実を認め、その上で納税者が署名した場合、記録書が存在することにより、重加算税が適用される可能性が高くなってしまいます。
税務署が質問応答記録書を求めてきた際の対処法
税務署が質問応答記録書を求めてきた際の対処法については、以下の2つが挙げられます。
- 拒否しても法的には問題ない
- 税理士に立ち会ってもらう
それぞれの対処法について解説していきます。
拒否しても法的には問題ない
税務署が実施する税務調査は、基本的に任意でおこなわれるので、質問応答記録書を拒否しても法的には問題ありません。
質問応答記録書は税務調査の過程を記録するための文書ですが、この文書の作成もまた任意となります。
このように、調査担当者から質問応答記録書の作成を求められた場合でも、納税者がこれを拒否しても法的な問題は発生しません。
税理士に立ち会ってもらう
税務調査で質問応答記録書にサインを求められた際に断る自信がない場合や、質問応答記録書の内容を自分で適切に確認できるか不安がある場合は、税理士に立ち合いを依頼することをおすすめします。
税理士に立ち合いを依頼することで、税務署との交渉を代わりに進めてくれるため、手続きがより円滑に進むことが期待できます。
しかし、税務調査への立ち合いを受け付けない税理士事務所もあるので、事前に確認をしておきましょう。
質問応答記録書の回答時の注意点
質問応答記録書の回答時の注意点については、以下の3つが挙げられます。
- 沈黙は避ける
- 質問された内容だけ回答する
- 質問応答記録書の控えは発行されない
それぞれの注意点について解説していきます。
沈黙は避ける
調査官の質問に対する回答は、質問応答記録書に詳しく記載されてしまうので、沈黙は避けるようにしましょう。
実際に、調査官の質問に対して答えられず沈黙してしまった場合、その沈黙も「沈黙した」として記録に残されてしまいます。
質問の意味を考えていたとしても、調査官はこの沈黙を「答えたくない質問をしているため、何か隠しているのではないか」と解釈してしまうケースも少なくありません。
質問がわからない場合は、そのまま黙っているのではなく、もう一度質問を確認することが重要です。
また、冷静になる時間を確保したり、自分を落ち着かせることができ、余裕を持って対応することにつながります。
質問された内容だけ回答する
質問されて内容に対して、多くの情報を回答してしまうと、調査官に対して新たな疑問が生じる可能性が高くなってしまうので、質問された内容だけ回答するようにしましょう。
実際に、調査官が「都合の良い部分」だけを取り上げてしまうリスクもあるので、経営者が必要以上に情報を回答することは、リスクを高める結果につながってしまいます。
このように、税務調査を円滑かつ正確に終わらせるためには、質問された内容に対してのみ、簡潔に答えることが重要です。
質問応答記録書の控えは発行されない
質問応答記録書の控えは発行されず、写真撮影も禁止されています。
質問応答記録書は、調査担当者と回答者のやり取りを正確に記録し、調査に関連する公式な文書として利用するために作成される行政文書になります。
回答内容は調査官が作成するこの記録書にのみ記載され、それが証拠資料として使用されてしまうので、いい加減な回答は不利になってしまうリスクがあります。
しかし、重加算税に関する理由に納得できず、訴訟に発展した場合には、質問応答記録書の開示を求めることができます。
請求には手数料がかかってしまうので、事前に費用を確認しておくことが必要です。
税務調査で質問応答記録書を作成させないための対策
税務調査で質問応答録書を作成させないための対策については、以下の2つが挙げられます。
- 適切に申請する
- 書面添付制度を利用する
それぞれの対策について解説していきます。
適切に申請する
意図的に税金を不正にごまかそうとしていると、税務調査で質問応答記録書を作成されてしまうので、適切に申請することが重要です。
実際に、正しく申告書を作成し提出している限り、税務調査で質問応答記録が作成されて、重加算税が課されるリスクはありません。
申告内容にミスがあったとしても、それが故意でない場合は、重加算税よりも軽いペナルティである無申告加算税や過少申告加算税が適用されるだけになります。
また、私的な支出を経費として誤って申告しないように、経費として計上できるものとできないものを正確に理解することが重要です。
例えば、以下のような支出は経費として認められません。
- 個人的な支出(プライベートの飲食代、私用の服や美容関連費)
- 個人事業主が負担する福利厚生費(健康診断費や人間ドックの費用)
さらに、自宅を仕事場として利用している個人事業主の場合、家賃や光熱費、通信費などは、事業使用分と家庭使用分を分けて計上する必要があります。
このように、適切な経費計上をおこなうことで、税務調査で質問応答記録書を作成させないための対策につながります。
書面添付制度を利用する
書面添付制度を利用することで、税務調査で質問応答記録書を作成させないための対策につながります。
書面添付制度とは、税理士が申告書を提出する前に、納税者から申告内容やその背景について詳しくヒアリングをおこない、その内容を申告書に添えて提出する制度を指します。
実際に、国税当局が積極的に推奨しており、書面添付制度を利用することで、税務調査が実施される可能性が低くなると考えられています。
また、税務署が書面添付された申告書を調査する際には、まず税理士に意見を求める手続きが必要です。
このように、税務調査を回避できれば、余計な心配を抱えることがなくなるので、書面添付制度を取り入れている税理士事務所を選ぶことをおすすめします。
納得できない質問応答記録書にサインしてしまった場合の対処方法
内容に納得できない質問応答記録書にサインしてしまった場合は、あらためて内容をしっかり確認し、修正を依頼しましょう。
再確認の際は、質問と回答が事実に基づいているかを重視するようにしましょう。
例えば、回答の中に一般的な納税者が使わないような税務用語が含まれている場合は、それが税務調査官の誘導によるものであり、自分が意図して答えた内容ではないと主張できる可能性があります。
質問応答記録書の修正を求めた際に拒否された場合は、個人であれば、「保有個人情報開示請求書」を提出することが有効です。
法人の場合は、調査官に対して「修正の権利がある」と主張し、内容を再確認するようにしましょう。
また、記録書の内容が実際の主張と大きく異なる場合には、公務員による有印公文書偽造の疑いや公務員職権乱用罪に該当するので、税理士に相談することをおすすめします。
税務調査に関する相談なら税理士がおすすめ!
今回は、質問応答記録書や質問応答記録書による税務調査への影響を紹介しました。
質問応答記録書とは、調査官が納税者とのやり取りを基に作成する文書で、納税者が自分で作成するのではなく、調査官が責任を持って記録をおこないます。
また、質問応答記録書による税務調査への影響については、以下の3つが挙げられます。
- 作成を拒否すると調査が長引く可能性がある
- 作成しただけでは重加算税の対象にはらない
- 税務調査の結果には直接影響しない
今回の記事を参考にして、質問応答記録書を作成させないためにしっかりと対策をおこないましょう。
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