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個人事業主の経費ボーダーラインは?家族名義カード・家賃や車はOKか
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
個人事業主だと事業専用のクレジットカードなどを持たず、プライベートのものを使用している人もいるでしょう。
本人名義のものを常に使用していれば問題ないかもしれませんが、クレジットカードや家賃の支払いなど、家族名義で支払いをしている場合があります。
例えば夫がサラリーマンで、妻が自宅で個人事業をスタートさせた場合などです。
自宅で仕事をしているので事務所代として住宅費が経費にできるはずですが、夫の名義で支払いをしていても妻の経費にできるのでしょうか。
個人事業主の経費について、家族名義で支払いをした場合や収入を得た場合の処理についてまとめました。
家事按分の計算方法についてもお伝えしますので、確定申告時の参考になさってください。
目次
- 1 個人事業主が家族名義のカードを経費に使えるか
- 2 明細があれば家族名義でも使用可能
- 3 家族名義のカードを使用する注意点
- 4 家族名義の持ち家は経費にできるのか
- 5 家族名義でも使用可能
- 6 住宅関連で経費に入れられるもの
- 7 賃貸住宅の家賃は経費にできるのか
- 8 家族名義の車は経費にできるのか
- 9 家族名義の車は使用可能
- 10 車関連で経費に入れられるもの
- 11 同一生計親族間の経費に関するルール
- 12 生計を同一にする親族 とは
- 13 生計を同一にする家族と個人事業の具体例
- 14 親族への給与支払い
- 15 家事按分の計算方法
- 16 家事按分による費用計上
- 17 家族名義口座へ個人事業主の収入が振り込まれた場合
- 18 支出の領収書が準備できない場合
- 19 個人事業主の経費に関するよくある質問
- 20 生計を一にする家族への外注費は経費として認められますか?
- 21 夫が妻に車を買ってあげると贈与税はかかりますか?
- 22 家族名義の領収書は経費になりますか?
- 23 個人事業主の平均経費はいくらですか?
- 24 個人事業主は適切な経費管理を
個人事業主が家族名義のカードを経費に使えるか
個人事業主が事業に関連する支払いをする場合、クレジットカードを利用すると便利です。
「銀行振込の手間が省ける」「すぐに支払いが完了する」などのメリットがあるからです。
しかし決済カードの種類に制限がある場合など、家族名義のカードでの決済を余儀なくされる場合があるかもしれません。
個人事業主が家族名義のカードを使用した場合、事業の経費と認められるのでしょうか。
- 明細があれば家族名義でも使用可能
- 家族名義のカードを使用する注意点
明細があれば家族名義でも使用可能
結論としては、家族名義のカードでも経費として認められます。
ただし、事業に使用したという目的が明確にわかるよう、明細書を保管しておきましょう。
何に使用したのかという用途が不明な状態だと、国税調査で指摘されても反論できなくなってしまうためです。
用途を明確にするためには、明細書だけでなくレシートも必要になるでしょう。
家族名義のカードを使用する注意点
家族名義のカードで決済した際、その支払いはプライベートな支払いではないかと疑われる可能性があります。
当然ですが、プライベートな支払いに関するものは経費としては認められません。
税務調査では3年前まで遡って領収書などを確認しますので、最低でも3年分は保管が必須です。
もし家族名義のカードで支払い、お金の流れを明確にしたおきたいという場合は、経費分ピッタリの金額で家族名義の口座に振り込んでおくと、経費として明確に説明できます。
家族名義の持ち家は経費にできるのか
個人事業主で、自宅を事務所として事業をしている方は多くいらっしゃいます。
家族名義でローンの支払いをしている場合、家族名義の持ち家を事務所にする場合は、経費として計上できるでしょうか。
- 家族名義でも使用可能
- 住宅関連で経費に入れられるもの
- 賃貸住宅の家賃は経費にできるのか
家族名義でも使用可能
結論としては、家族名義の持ち家であっても経費となります。
ローンなど支払いが家族名義の口座から引き落とされているものであったとしても、大丈夫です。
ただし事業で使用している部分と、プライベートで使用している部分を分けなければいけません。
事業用とプライベート用の経費を割合で分け、家事按分をして経費を明確にします。
家事按分の計算には、床面積の比率や使用時間の比率が関係してきます。
家事割合と事業割合を計算し、事業に使用した部分が経費になります。
住宅関連で経費に入れられるもの
持ち家の住宅関連で個人事業主が経費に入れられるものは、以下のようなものです。
- 固定資産税
- 減価償却費
- 住宅ローン金利
- 火災保険
- 電気代
- 水道代
- 管理費
- 駐車場代
- 修繕費
これらは全て家事按分を計算し、事業に使用している部分のみが経費として認められます。
家族の口座から落ちていたとしても、経費となります。
賃貸住宅の家賃は経費にできるのか
持ち家同様に、家族名義の口座やクレジットカードで家賃を支払っている場合も経費となります。
例えば、成人した子供が個人事業主で、大家さんとなる親に家賃を払っている場合も経費と認められます。
すでにご紹介した通り、家事按分を計算し、事業で使用したと認められる部分に限ります。
家族名義の車は経費にできるのか
個人事業主として事業をしていると、自家用車で移動をする日もあるでしょう。
仕事に関する移動であれば経費になるはずですが、家族名義の車を使用してもいいのでしょうか。
- 家族名義の車は使用可能
- 車関連で経費に入れられるもの
家族名義の車は使用可能
クレジットカードや住宅の時と同様に、家族名義の車も経費になります。
プライベートの利用目的で購入した車であっても、事業で使用すれば、事業で使用した分が経費となります。
ガソリン代や外出先での駐車場代や高速道路の料金など、日付と内容がわかるレシートなどを保管しておくといいでしょう。
車関連で経費に入れられるもの
車に関する支払いで、経費になるものはこちらです。
- ガソリン代
- 駐車場代
- 減価償却費
- 自動車税
- 車検の費用
- 自動車保険
- 洗車代
頻繁に事業でも車を使用するようであれば、家事按分の割合から車検の費用や自動車保険なども経費にできます。
プライベートでは全く使用しない車であり、100%事業で使用するというのが明確な場合は、100%が経費として認められます。
同一生計親族間の経費に関するルール
クレジットカードや住宅、車に関して、家族名義の支払いであっても事業に使用したものであれば、個人事業主の経費になります。
同一生計親族感の経費に関するルールに基づいた考え方なので、このルールについて理解しておくといいでしょう。
- 生計を同一にする親族 とは
- 親族への給与支払い
生計を同一にする親族 とは
個人事業主が確定申告で支払う所得税では、同一生計親族間の経費に特別ルールが設けられています。
同一生計とは生計が同じである、つまりお財布が一緒の家族という意味です。
具体的には同居している家族や、同居をしていなくても仕送りをしている家族を指します。
第三者間では家賃や水道光熱費などには賃金を支払うべきですが、
生計を同一にする親族間では特別ルールが設けられており、一体として取り扱います。
生計を同一にする家族と個人事業の具体例
夫がサラリーマンであり、妻が自宅で個人事業主として事業を行う場合などが具体例となります。
夫の名義で住宅ローンや家賃、水道光熱費を支払っていたとしても、家事按分で事業の必要経費となった部分は妻の経費となります。
この場合に、妻が事業の分だからという理由で夫に家賃を支払ったとしても、経費にはなりません。
同じように「夫名義の車を1日事業に使ったから」といって、謝礼を渡したとしても経費にはなりません。
お財布が一緒の夫婦は、財布内での資金移動のようなものとなり、「一体」として扱います。
親族への給与支払い
個人事業主として事業をしていると、家族がお手伝いをしてくれる日があるかもしれません。
感謝の気持ちから給与を支払いたいと考えるかもしれませんが、生計を同一する家族への給与は経費になりません。
個人事業主が所得税の申告をする際、家族は配偶者控除や扶養控除など控除の対象となります。
節税のために家族への給与を経費にしたいと考えるのであれば、青色申告を行うといいでしょう。
参考:国税庁|親族が事業から受ける対価の取扱いについての一考察
家事按分の計算方法
個人事業主の経費を計算する上で覚えておきたいのが、家事按分の計算方法です。
住宅や光熱費など、プライベートでも必要不可欠な出費を事業経費とどう分けていくのでしょうか。
家賃などの住宅に関して、水道光熱費、通信費など、内容ごとにご説明します。
家事按分による費用計上
プライベートの出費と事業の経費の区分を明確にするために、家事按分の計算を行います。
「だいたいこのくらい」というアバウトな計算ではなく、誰が見ても事業経費と認められるように正確に計算していきます。
主に家事按分の計算の対象となるものをご紹介します。
家事関連費 | 按分方法 |
---|---|
住宅 | 床面積割合 使用時間 |
水道光熱費 | 床面積割合 使用時間 コンセントの数 事業で使用する前の料金と比較 |
通信費 | 通話時間 使用時間 |
車両関連費 | 走行距離 使用日数 |
住宅に関して
住宅の家事按分は、床面積の割合や使用時間によって計算します。
賃貸住宅で50㎡の住宅の20㎡分を事業として使用しているのであれば、20%が事業部分と認められます。
白色申告で家賃の家事按分を計算する際には、上限50%ルールがありますので覚えておきましょう。
持ち家であれば減価償却費や固定資産税が事業の経費となります。
水道光熱費
パソコン作業をしている場合は電気代、料理教室などガスや水道を使う場合はガス代や水道代も経費となります。
床面積の割合や使用時間で計算しますが、事業を始める前と後で比較して差額を必要経費とする方法もあります。
通信費
パソコンやスマホでインターネットを事業で使用している場合、通話時間や使用時間で通信費の按分をします。
事業で使用する割合が多い場合は、専用のWi-Fiを用意するなど全額経費にした方が計算が楽になります。
車両関連費
車両関連費の家事按分は、走行距離や使用日数をもとに事業割合を求めます。
事業で使用したと明らかに分かるガソリン代やパーキング等の駐車場代、高速道路の料金は按分せずに100%が事業経費となります。
家族名義口座へ個人事業主の収入が振り込まれた場合
個人事業主への収入は、基本的には本人名義の口座などに振り込まれるものです。
では、家族名義の口座に収入が振り込まれた場合はどう扱うのでしょうか。
一時的な取引先や、振込手数料の関係で、家族の口座をやむを得ず指定する場合があるかもしれません。
この場合は、あくまでも個人事業主の収入と認められますので、個人事業主の収入に含めなくてはいけません。
経費の時と同様に、請求書や領収書など内容がわかるものを保管しておくといいでしょう。
支出の領収書が準備できない場合
家族名義のクレジットカードや口座から決済を行ったにも関わらず、領収書やレシートが準備できない場合は経費にならないのでしょうか。
事業で使用したという事柄がわかればよいので、支出の事実が明らかになるものを残しておくといいでしょう。
- 納品書
- クレジットカードの利用明細書
- ATMの振込明細書
- 預金通帳の記録
- オンラインショップの確認メール
取引先とやり取りをしたメールでも構いませんので、支出の事実がわかるものは保管しておいてください。
個人事業主の経費に関するよくある質問
個人事業主の経費に関するよくある質問について、まとめました。
- 生計を一にする家族への外注費は経費として認められますか?
- 夫が妻に車を買ってあげると贈与税はかかりますか?
- 家族名義の領収書は経費になりますか?
- 個人事業主の平均経費はいくらですか?
生計を一にする家族への外注費は経費として認められますか?
生計を一にする家族への外注費は経費にはなりません。
しかし青色申告をしていて一定の条件を満たせば、青色事業専従者給与の特例が適用されます。
夫が妻に車を買ってあげると贈与税はかかりますか?
夫が妻に車を買ってあげる時の目的がポイントです。
妻が生活する上で必要の範囲内で車を使用するのであれば、贈与税はかかりません。
ただし夫名義で購入した車を妻名義に変更すると、妻への贈与となり贈与税がかかるなど状況によって判断されます。
家族名義の領収書は経費になりますか?
家族名義の領収書でも、個人事業の経費になります。
これまでもお伝えしている通り、その内容が重要であり、事業に対するものであるとわかれば事業経費になります。
個人事業主の平均経費はいくらですか?
個人事業主の経費の平均額は、およそ売上の30%〜60%です。
しかし経費に上限があるわけでなく事業内容も異なりますので、平均値を意識して経費を計上するものではありません。
個人事業主は適切な経費管理を
個人事業主は、プライベートと経費の線引きが曖昧になる時もあるかもしれません。
自身名義のクレジットカードや口座からの引き落としであったとしても、確実に事業で使用したものであると明確に説明できるようにしておけるようにしておきましょう。
家族間には、同一生計親族感の経費に関するルールがあります。
そのため家族名義のクレジットカードや口座からの引き落としであっても、個人事業主の経費にできます。
そのため配偶者名義で支払っている家賃などの住宅に関するものや、水道光熱費も事業経費として計上できます。
プライベートな支払いであると疑われてしまわないよう、適切に経費管理をしていきましょう。
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