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税務調査 2024.10.01

税務調査の通知が来た!立ち会いは弁護士に依頼すべき?

この記事の監修

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏
(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。
多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税務調査が実施される際には、税務署から事前に通知を受けるケースが一般的です。調査対象の納税者だけが調査に立ち合うケースもありますが、初めての税務調査の場合などは、どのような調査が行われるのか不安になる方も少なくありません。そのため、税務調査を受ける際には、税の専門家である税理士に立ち会いを依頼する場合もあります。

しかし、実は弁護士にも税理士業務は認められています。そのため、税務調査の通知が来たときには、税理士ではなく弁護士に立ち会いを依頼した方がよいのではと思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、税務調査の立ち会いを弁護士に依頼すべきなのか、税理士に依頼すべきなのかについて、両者の役割の違いなどを確認しながらご説明します。

弁護士と税理士の役割の業務範囲の違い

では早速、弁護士と税理士の役割や業務範囲の違いから確認してみましょう。

弁護士の業務

弁護士資格は、法律に関するすべての業務に対応できる国家資格です。弁護士法には、弁護士は基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とすると記されています。

社会生活を営む中では、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。弁護士には、これらのトラブルに対し、法の面から向き合い、依頼者の権利を守る役割があります。具体的には、民事裁判の代理人、刑事裁判における弁護人としての活動、法律についての相談、交渉、示談、契約書作成、損害賠償の請求などの業務が弁護士の仕事です。

税理士の業務

税理士は、税の専門家です。税理士法には、税理士は税務に関する専門家として独立した公正な立場において、申告納税制度の理念に沿い、法令に規定された納税義務の適切な実現を図ることが使命であると規定されています。

税理士の具体的な業務は、確定申告書等の提出や税務調査の立ち会いといった税務代理業務、確定申告書や相続申告書などの書類の作成と提出業務、税金に関する相談対応などです。

税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つの業務は、税理士にのみ認められている業務であり、税理士以外の人が行うことは認められていません。

したがって、税務調査に立ち合い、納税者に代わって発言をしたり、納税者側の主張を訴えたりといった行為は、税理士だけに認められる業務になるのです。

弁護士には税理士業務も認められている

弁護士と税理士の業務の違いについてご説明しましたが、弁護士には税理士業務も認められています。弁護士法第3条の2では「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。」と明記されているのです。また、税理士法第51条では、所属弁護士会を経て国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、弁護士は随時、税理士業務を行うことができると示しています。

税理士の資格は、税理士試験合格者のほか、弁護士と公認会計士の資格を持つ人にも与えられます。また、税理士資格を持つ人が税理士業務を行うためには、日本税理士連合会の税理士名簿への登録が必要ですが、弁護士や公認会計士の資格を持つ人も税理士名簿に登録すれば、税理士として活動することが可能です。

したがって、弁護士も必要な手続きを行えば、税務調査時に立ち合い、納税者の代理として意見を述べたり、調査官と交渉を行ったりという税務代理業務が認められるというわけです。

税務調査で弁護士に立ち会いを依頼するメリットとデメリット

ご説明したように、弁護士であっても国税局長に通知をし、税理士連合会に登録すれば、税理士として業務を行うことができます。では、税務調査で弁護士に立ち会いを依頼した場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

税務調査に弁護士が立ち会うメリット

弁護士は、交渉が必要となる業務と日常的に向き合っています。そのため、税務調査の場においても調査官の指摘を受け、どのように交渉すれば納税者の権利を主張できるのか、適切な判断を行うことが可能です。

また、弁護士は法律の専門家であるため、税務調査における指摘事項が本当に法律的解釈上で正しいといえるのか、調査官への疑問を提示できます。法的根拠を求め、法に基づいた判断を行えば、交渉を有利に進められる可能性があるでしょう。

税務調査によって問題が指摘され、更正処分がなされた場合は、不服申し立てを行いますが、不服申し立ての結果に納得できない場合は、訴訟を起こすことができます。万が一、税務調査の結果に納得がいかず、訴訟にまで進むような事態に発展したときには、弁護士のサポートが不可欠となります。

税務調査に弁護士が立ち会うデメリット

税務調査に弁護士に立ち合ってもらう場合、メリットばかりではなく、デメリットが生じる可能性もあります。

弁護士は、税理士業務を行うことが認められています。しかし、弁護士が税理士業務を行うにあたって必要な手続きは、国税局長に通知をすることと税理士連合会に登録することの2つだけです。つまり、弁護士は税理士試験の受験をせずに、税理士としての業務に就く資格が与えられるといえます。したがって、弁護士の中には、税理士業務を行える資格は保有していても、実際には税務についてはあまり詳しくないケースがあるのです。

もちろん、税務についても積極的に学び、詳しい知識を持っている税理士の方もいるため、一概に弁護士の方は税務には詳しくないと申し上げることはできません。しかし、多くの弁護士は税理士業務ではなく、弁護士としての業務に力を入れているため、税務調査の立ち会いを依頼しても納得できる結果を得られない可能性もあるのです。

税務調査の立ち会いを依頼すべき人とは

税務調査の立ち会いを認められているのは、税理士業務を行える人です。では、税務調査にはどのような人に立ち会いを依頼すべきなのでしょうか。税務調査の立ち会いを依頼すべき人についてご説明します。

税務調査の経験を豊富に持つ税理士

税理士試験に合格し、税理士資格を取得している人は、税務についての専門的な知識を持っています。しかしながら、税理士にはそれぞれ得意分野があり、税理士だからといって全員が税務調査に強いわけではありません。税務調査では、納税者の主張をしながら、納税者も調査官も納得できる落としどころを目指した折衝が重要になります。税理士であっても税務調査に立ち合った経験が少ない人であれば、なかなか納税者と調査官の双方が納得できるポイントを見出すことはできません。

税務調査の立ち会いを税理士に依頼する際には、税務調査の立ち会い実績を豊富に持つ税理士への相談がおすすめです。

税務に詳しく、届出を行っている弁護士

国税局長への通知や税理士会への登録など、必要な届出を行っている弁護士も税務調査の立ち会いが可能です。ただし、前述のように弁護士の資格を持つ方は税理士業務も行えますが、税務についてはそれほど詳しくないケースも少なくありません。弁護士に立ち会いを依頼する際には、弁護士としての実績だけでなく、税務調査の立ち会いの実績があるか、税務について専門的な知識を保有しているのかを確認することをおすすめします。

税務調査に詳しい国税OB税理士

国税OBとは、国税専門官として税務署などで勤務経験があり、退官後に税理士の資格登録をした税理士です。税理士になるには、4つの方法があります。1つは、最も一般的なルートで、税理士試験に合格するケースです。前述のように弁護士、公認会計士の資格を持つ人は税理士になる資格が与えられます。また、税理士試験を免除される人がおり、国税OB税理士とはこの4つ目の条件に合致した人です。

税理士試験では、会計学に属する2つの科目と税法に関する3つの科目に合格しなければなりません。しかし、10年または15年以上、税務署などに勤務した国税職員は、税法に属する科目が免除されます。また、23年または28年以上税務署に勤務し、指定研修を終了した国税職員は、会計学に属する科目も免除されるのです。

国税OB税理士は税理士としてではなく、税務署職員としての立場から税務調査に関わった経験があるため、調査官との折衝のポイントなどを心得ている場合が多く、スムーズに税務調査を終えられる可能性が高くなります。

税務調査の立ち会い依頼が重要な理由

税務調査では、必ず税理士資格を持つ人の立ち会いが必要なわけではありません。しかし、立ち会いを依頼すれば、さまざまなメリットを得られます。

税務調査の流れ

税務調査では、事前通知が行われ、調査を実施する日時や調査対象となる書類などが伝えられます。税務調査は、抜き打ち的に行われるものではなく、原則として、事前に調査日時が伝えられたうえで実施されるものなのです。急に税務調査を実施しても、必要な書類を揃えるための時間が必要になるため、効率的に調査を進めることはできません。そのため、税務調査では事前通知を行い、実地調査の日までの準備期間が与えるのです。

実地調査当日は、納税者について質問をしながら準備しておいた資料を調べ、申告内容に問題がないか詳しく調べられることになります。

立ち会いを依頼すれば事前の準備もスムーズにできる

サポートを依頼すれば、税務調査に必要な書類を準備する段階では不足分の書類がないか、どのような点をチェックされやすいか、どのように回答すればよいかといったアドバイスを受けることができます。事前の準備をスムーズに終えられれば、調査当日も安心して迎えられるでしょう。

調査官の指摘に適切に対応してもらえる

税務調査では、調査官が帳簿などを確認しながらさまざまな質問を行います。しかし、調査官の指摘がすべて正しいわけではなく、解釈の違いによってとらえ方が変わるケースもあります。税務調査に詳しい税理士や弁護士であれば、納税者側の主張を適切に伝え、指摘に反論できるため、追徴課税のリスクを抑えられる可能性があります。

修正申告の対応を依頼できる

税務調査の結果、申告内容に誤りがあり、修正が必要になった場合、立ち会いを依頼した税理士に修正申告書の作成を依頼できます。修正申告には提出期限があるわけではありませんが、修正申告に時間がかかるとその分、延滞税の額も増えてしまいます。修正申告の煩雑な処理を税理士に依頼できれば、速やかに修正申告に対応でき、延滞税の額も抑えられるといったメリットがあります。

まとめ

所定の手続きを行えば、弁護士資格を持つ人も、税務業務を行えます。そのため、税理士ではなく、弁護士に税務調査の立ち会いを依頼することも可能です。

しかしながら、弁護士の多くは、税理士業務ではなく弁護士としての仕事に力を入れているため、税務に詳しい弁護士の方はそれほど多くはありません。税理士ではなく、弁護士に税務調査の立ち会いを依頼したいと考えている場合は、税務に詳しく、税務調査の立ち会い実績などを持つ弁護士を選ぶようにしましょう。

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