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宛名なしの領収書は違法?税務調査でチェックされる項目や宛名がない場合の対処法
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
領収書に記載する宛名は、誰がどこに代金を支払ったのかを明確にするために必要なものです。
しかし、領収書に宛名が記載されていないケースや会社や個人名ではなく「上様」と記載されているケースもよくあります。
では、領収書に宛名がない場合は業務や法律上、有効なのでしょうか。
本記事では、領収書の役割と税務調査でチェックされる項目、宛名がない領収書の扱いについて詳しく解説します。
結論として、税務調査で提出した領収書に宛名が記載されていなければ、それが経費と認められず、税の負担が大きくなる恐れがあるので注意が必要です。
ぜひこの記事を参考に、業務において領収書を正しく扱い、税務調査で疑われないように対処しましょう。
目次
税務調査で領収書はどこまでチェックされる?
「税務調査で領収書のなにをチェックするのか」「税務調査で領収書は細部まで見られるのか」このように、気になる方もいるでしょう。
結論として、税務調査では領収書を全て隅々まで見られていると思った方が良いでしょう。
税務調査での領収書チェックでは金額だけでなく、以下の項目も見られています。
- 内容や中身を確認
- 不正がないか
- 架空計上がないか
- 資産計上すべきものがないか
それぞれ見ていきましょう。
内容や中身を確認
領収書の内容、つまり支払ったものの中身を細部まで確認します。
事業に関わりのない支払いを計上していないか、たとえ小さい金額であったとしてもチェックされます。
事業をするにあたって必要なものは経費にできますが、明らかに関係のないものや生活費だと思われるものに関しては経費と認められません。
不正がないか
税務調査では領収書について、不正がないか厳しくチェックしています。
特に、手書きの領収書は数字の改ざんがしやすく、脱税のために不正行為を行う人もいるのです。
しかし、手書きの領収書の不正は筆跡などからすぐに発覚してしまいます。
領収書の数字の改ざんを疑われると、取引先や領収書の発行元に調査が入る可能性が高いです。
架空計上がないか
領収書の架空形状がないかについても、税務調査ではチェックされる項目です。
たとえば、白紙の領収書をもらって、自分で好きな金額を記入するという不正行為がないかも確認されます。
存在しない費用を計上するのは違法となるため、絶対に行わないようにしましょう。
資産計上すべきものがないか
経費として購入したものの金額が10万円以上の場合、原則、資産として減価償却をする必要があります。
品目ごとに定められている耐用年数で分割し、1期ごとに経費計上しなくてはならず、車両や機械設備等がこれにあたります。
そのため、税務調査では領収書を確認し、適切に資産計上すべきものが含まれていないか、チェックしているのです。
宛名なしの領収書とは
宛名なしの領収書とは、以下2つのいずれかの条件を満たす領収書を指します。
- 宛名の欄に何も記載されていない
- 宛名の欄が「上様」になっている
領収書には代金を支払った人の名前を記載する欄があります。
本来、領収書を受け取る際にはこの欄に個人名もしくは、会社名を記載することになっていますが、記載されていなかったり、「上様」と記載されていたりする場合が「宛名なしの領収書」となります。
領収書の役割と記載すべき項目
領収書は一般的に、経費としての支出を客観的に証明するために発行される書類です。
領収書に記載するべきとされる項目は主に以下の5つです。
- 発行者
- 取引年月日
- 但し書き
- 金額(内訳・消費税)
- 宛名
それぞれの項目について以下の表にまとめました。
発行者 | 領収書発行者の氏名または名称、連絡先を記載。 |
取引年月日 | 領収書を発行した日付を年月日で記載する。
和暦・西暦どちらの場合でも、省略はしない。 |
但し書き | サービスや商品の内容を、一目でわかるように具体的に記載する。 |
金額 | 税抜額と消費税額を分けて、金額を記載する。
改ざん防止のために、金額の先頭に「¥」末尾に「-」をつける |
宛名 | 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称。
会社名・個人名は略さずに正式名称で記載する。 |
領収書の保管期間
領収書の保管期間は、法人の場合、原則として領収書を受け取った事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間と法律で定められています。
万が一、税務調査で領収書が保管されていないと発覚した場合、経費の証明ができず、余計な税金を納めなければならなくなるので、保管期間を把握しておき、紛失しないように対策をとるようにしましょう。
領収書は紙で保管する以外にも、電子帳簿保存法が法律で認められたことにより、データで保管する方法もあります。
宛名のない領収書は有効か
領収書に宛名が記載されていない場合、業務や法律上で問題はないのでしょうか。
実は、領収書の目的や用途によって、宛名が必要な場合と不要な場合があるのです。
それぞれ詳しく解説していきます。
経理上は宛名がなくても問題ない
経理上、領収書に宛名を書くのは必須ではありません。
支払日や支払金額、用途・領収書の発行者の記載があれば、支払いの事実が明確に分かるため、宛名がなくても問題ないといえます。
ただし、高額な支払いの場合には、経理上、精算が認められないケースもあるため、領収書に宛名を記載してもらった方が良いでしょう。
また、会社の規定で必要な場合もあるため、あらかじめ確認しておくのがおすすめです。
消費税法上は原則として宛名が必要
消費税法上は、仕入税額控除の要件として、請求書や領収書に宛名が記載されている必要があるとされています。
つまり、消費税を納める必要がある法人、または個人は原則として、宛名の記載がない領収書を正式な領収書として認められないということになるのです。
ただし、以下の事業では領収書に宛名の記載が必要ないとしています。
- 小売業
- 飲食業
- 写真に関する業
- 旅行に関する事業
- バス、鉄道、航空会社などの旅客運送業
- 駐車場業
この業種以外は基本的に、高額の領収書に宛名がなければ消費税の仕入税額控除ができないため、注意しましょう。
税務調査で指摘される恐れがある
税務調査においては、領収書に宛名が記載されていない場合、金銭のやり取りをした事実関係が明確ではないと判断されて、領収書が認められない可能性があります。
領収書が経費として認められないと、追徴課税が課される恐れがあるため、不正を疑われないように、あらかじめ領収書に宛名を記載してもらった方が良いでしょう。
そのため、税務調査が入るかどうかに関わらず、従業員には領収書の取り扱いを周知させる必要があります。
領収書の宛名が「上様」で認められないのはなぜか
領収書の宛名を「上様」とするケースはよくありますが、これは、相手の名前がわからない場合や、相手が個人である場合に、慣行上このような記載をしているのです。
しかし、領収書の宛名が「上様」では、受取人が特定されないため、税務調査では認められないと考えた方が良いでしょう。
先述した通り、小売業や飲食業などの業種で日常的に発生する少額の取引であれば、宛名が「上様」の領収書でも経費の証拠書類として提出できるでしょうが、極力「上様」を避けて正しい書き方でもらうのが望ましいです。
領収書に宛名が必要である理由
宛名のない領収書は、目的や用途によって有効である場合とそうでない場合があると説明しましたが、では、具体的にどのようなケースで必要になるのでしょうか。
領収書に宛名が必要である理由について詳しく説明していきます。
第三者に悪用されないため
宛名なしの領収書を紛失してしまうと。第三者に拾われて自分の領収書として使われる恐れがあります。
万が一、宛名なしの領収書を第三者に悪用されて脱税に利用された場合、領収書を発行した会社が脱税をほう助したとして罰せられる可能性もあるのです。
このように、第三者に悪用されるリスクを避けるためにも、領収書に宛名を記載する必要があります。
税務調査があったときに証拠として出せる
宛名がしっかり記載されている領収書は、税務調査でも経費の証拠として提出できます。
たとえば、税務調査で高額な支出かつ宛名のない領収書が大量に出てきた場合などは、調査官も怪しむしかないでしょう。
そのため、経理上や消費税法で問題がないとしても、できるだけ領収書の宛名を正しく記載してもらうのが望ましいです。
反面調査を防ぐため
領収書に宛名がなければ、税務調査で取引が本当に行われているのか疑われる可能性があります。
場合によっては反面調査といって、取引実態があるのか取引先の会社に確認をとるケースもあり、取引先の会社に迷惑がかかる恐れもあるのです。
特に、高額な支払いに発生した領収書に宛名がない場合は、調査員に疑われやすくなり、反面調査のリスクが高まるので、注意しましょう。
二重請求を防ぐため
領収書は金銭を確実に支払ったことの証拠となり、二重請求や過払いを防ぐのに重要な役割を果たします。
領収書に宛名がなければ、仮に取引先から二重請求されてしまっても、すでに払った証拠を提示できないということになるのです。
そのため、このようなトラブルを避けるため、そして自分の身を守るために、領収書の宛名書きは重要になります。
社内ルールとして必要なケースがある
経理上、領収書に宛名の記載が必要ないとしても、社内ルールで宛名書きが必須となっている場合もあります。
宛名がない領収書は、実際に誰がどの目的で使用したのか把握できず、不正な経費申請が行われ、会社の資金が不正利用される可能性があるためです。
特に、高額な領収書は宛名がなければ経費として認められない場合もあるため、社内ルールをしっかり確認するようにしましょう。
領収書に宛名がない場合の対処法
本来、領収書には宛名を記載して渡しますが、発行元のミスなどで宛名がない領収書を受け取ることもあるでしょう。
では、領収書に宛名がなかった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
ここでは、領収書に宛名が記載されていない場合の対処法について紹介していきます。
発行元に相談して対処してもらう
領収書の発行元に問い合わせをすると、領収書の交換や再発行が可能な場合もあります。
そのため、領収書に宛名が記載されていないときは、経理担当者に相談のうえ、対応してもらえるか確認してみましょう。
ただし、領収書は取引記録を証明するための重要な書類であり、再発行すると二重請求など不正利用される恐れがあることから、再発行が不可能な場合もあると覚えておく必要があります。
購入が証明できるものを添付する
領収書に宛名がなく、税務調査でやむを得ず領収書を提出しなければならない場合は、納品書などの購入が証明できる補助資料と一緒に提出するのが有効です。
しかし、納品書はあくまでも取引があったことを証明するものであり、支払いが完了したことを示すものではないため、単体では領収書として扱えないという点を留意しておきましょう。
ただし、納品書兼領収書の場合は、領収書の代わりとして経費計上できます。
自分で記入するのは避ける
領収書に宛名が記載されていない場合、自分で会社の名前や個人名を記載しようとする方もいるでしょう。
しかし、領収書はそれを発行する事業者や、その従業員が作成しなければならず、宛名を自分で記載した場合、刑法159条の私文書偽造等の罪に該当する恐れがあるので、注意が必要です。
これは宛名に限らず、日付や但し書きなども同様であるため、宛名がないからといって自分で記入するのはやめましょう。
領収書は必ず宛名を記載してもらおう
業務で使った経費の領収書に宛名が記載されていない、もしくは「上様」としか記載されていなければ、以下のリスクがあります。
- 第三者に悪用される
- 税務調査で指摘を受ける
- 反面調査が行われる恐れがある
- 二重請求のリスクがある
- 社内ルールとして認められない
そのため、領収書を受け取る際は、金額や但し書き、日付のほかに、宛名が正しく記載されているかについても確認するようにしましょう。
また、経理上、宛名なしの領収書でも有効である場合がありますが、トラブルに繋がる恐れもあるため、少額だとしてもなるべく領収書には宛名を正しく記載してもらうのが望ましいです。
ぜひこの記事を参考に、正しく領収書を扱っていただけたらと思います。
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