2024.11.7
  • 無申告

個人事業主が無申告だとリスクのみ!税務署にバレる理由とペナルティ

個人事業主無申告

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

個人事業主は1人で事業を行っていますので、どの程度の収入があるのかを申告しなければ「税務署にはバレない」と甘く考えてはいませんか?

現実はそう甘くはなく、税務署は多方面のアプローチから無申告を突き止めてきます。

 

油断をしていると、ある日突然税務調査が行われるかもしれません。

「個人事業主が無申告だとなぜ困るのか?」「税務署はなぜ無申告を把握できるのか」についてお話します。

 

確定申告のペナルティについても触れていきますので、無申告の個人事業主の方は速やかに税申告を行っていきましょう。

個人事業主が無申告だとなぜ困る?

個人事業主無申告リスク

個人事業主は、無申告でいるとなぜ困るのでしょうか。

「税金を払いたくないから」という理由から確定申告をせずに無申告でいると、以下のような問題が浮上します。

 

  • 収入が証明できない
  • 国民健康保険料の減額が受けられない
  • 住民税も未納付になる

収入が証明できない

個人事業主で確定申告をしていないと、収入を証明するものがありません。

住宅ローンを組む時や事業用の融資を受ける時だけでなく、子供を保育園や学童に預けるためには収入の証明が必要です。

 

個人事業主だと確定申告の控えが収入証明書の代わりとなります。

また所得証明書を発行してもらおうと思っても、無申告の個人事業主に所得証明書は発行できません。

国民健康保険料の減額が受けられない

個人事業主が加入する国民健康保険料は、収入によって減額や免除を受けられるシステムになっています。

赤字の個人事業主であっても、国民健康保険に加入できるようになっています。

 

しかし無申告では収入の証明ができませんので、国民健康保険料の減額が受けられません。

住民税も未納付になる

住民税は確定申告による収入をもとに計算されて、納付書が発送されます。

無申告だと住民税の計算ができませんので、住民税も未納付という状態になってしまいます。

 

住民税決定通知書は、毎年5〜6月頃に届きます。

納付期限を過ぎると住民税に延滞料がかかりますので、正しく申告し期限内に納税するようにしましょう。

無申告が税務署にバレる理由

無申告なぜバレる

「個人で事業を始めた当初から確定申告をしなければバレない」と思っている方がいるようですが、そうではありません。

以下のような方法で個人事業主の無申告がバレてしまいます。

 

  • 税務調査を行っている
  • 支払調書をチェックしている
  • 銀行口座をチェックしている
  • 税務署へのタレコミ

税務調査を行っている

毎年3月には確定申告があり、税務署は税務調査を行っています。

税務調査とは、事業者が税申告や納税を正しく行っているかを調査するものです。

 

「確定申告をしていなければ税務調査の心配はない」と考えるかもしれませんが、取引先への税務調査をキッカケに無申告がバレるケースがあります。

芋づる式に無申告がバレて、個人事業主やフリーランスであったとしても税務調査が行われます。

支払調書をチェックしている

支払調書とは、個人事業主や企業が、誰に、なぜ、年間いくら支払ったのか、を示す書類です。

取引先や付き合いのある個人事業主が税務署に支払調書を提出すると、無申告がバレてしまいます。

 

支払調書を見れば、おおよその収入もわかりますので、無申告である個人事業主への税務調査が行われる流れになるでしょう。

銀行口座をチェックしている

税務署は、個人の銀行口座のお金の流れをチェックしています。

預貯金の金額だけでなく、入金や送金の流れといった履歴も確認できるようになっています。

 

銀行口座の履歴は手書きの領収書のように簡単に偽装できないものなので、銀行口座をチェックされると無申告がバレてしまいます。

税務署へのタレコミ

無申告通報

「税務署の関係者に言わなければバレない」というものではなく、第三者からのタレコミで無申告が発覚するケースがあります。

国税庁のホームページには匿名で情報提供できるようになっていますので、もしかしたら身近な人間が通報をしているかもしれません。

 

実際に、「不正・不当に所得金額を少なく申告する」「無申告を公言・吹聴している者がいる」というような情報提供が寄せられているようです。

参照:国税庁|課税・徴収漏れに関する情報の提供

確定申告を行わないと課されるペナルティ

確定申告の不正に関するペナルティは、以下のような種類があります。

該当すれば重複してペナルティが課されますので、例えば無申告であれば無申告加算税と延滞税が課されます。

 

無申告であれば納税をしなくて良いものではなく、ペナルティにより本来よりも多く納税しなければいけなくなります。

 

名称 概要 課税割合
無申告加算税 確定申告を行わなかった 15%

20%

30%

過少申告加算税 過少に見せかけた申告 10%

15%

重加算税 悪質な申告 35%

40%

延滞税 期限までに納税しなかった 2.4%~14.6%

参照:国税庁|加算税の概要

参照:国税庁|延滞税の割合

無申告の個人事業主のリスク

確定申告を行わない、無申告の個人事業主はリスクしかないといっても過言ではありません。

無申告加算税や延滞税といったペナルティのリスクについて、お伝えします。

 

  • 無申告加算税を課される
  • 延滞税を課される
  • 所得税とともに住民税が徴収される
  • 青色申告の個人事業主が無申告だったら

無申告加算税を課される

無申告加算税とは、確定申告を行うべき3月15日の期限を過ぎても申告がない事業者に課されるペナルティです。

本来納付すべき税金にプラスして、無申告加算税を納付します。

 

無申告加算税は本税に対し15%、50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分に関しては30%ものペナルティとなります。

もし期限を過ぎてしまっても、税務署からの指摘を受ける前に自主的に申告をすれば無申告加算税の課税割合は5%まで軽減されますので覚えておきましょう。

延滞税を課される

無申告延滞税

期限までに納税されなかった場合には、延滞税が課されます。

課税割合は大きく幅があり、最大で年14.6%にもなります。

 

期限後申告となると納税も遅れている状態ですので、延滞税は免れません。

納税が遅れた日数分の延滞税がかかりますので、1日でも早く納税をするべきであるといえます。

所得税とともに住民税が徴収される

先述した通り、個人事業主の住民税は確定申告を行うと納付書が送られてきます。

確定申告をしていないと住民税の納付書が送付されておらず、住民税も未納という状態です。

 

そのため無申告が発覚し税務調査を受けた後、所得税の支払いと共に住民税も徴収されてしまいます。

本来はすでに納付しているべきものではありますので冷静に考えれば当然ですが、ペナルティも課された上に同じタイミングで住民税の徴収があると、負担が大きくなってしまいます。

青色申告の個人事業主が無申告だったら

確定申告書には青色申告書と白色申告書があり、青色の方が節税対策になります。

最大65万円の青色申告特別控除が受けられるという特徴がありますが、期限後の申告になると控除額が10万円と大きく減額されてしまいます。

 

控除額が減額されると納める税金が増えてしまいますので、青色申告の恩恵を受けられなくなってしまいます。

期限を過ぎると申告の意思があっても無申告とされてしまいますので、必ず期限内に申告するようにしましょう。

確定申告で不正をした時のペナルティ

確定申告で悪質な不正を行うと、重加算税というペナルティが課されます。

意図的な隠ぺいや仮装というように、故意に不正をしたと明らかな場合に重加算税が課されます。

 

故意な脱税は、逋脱(ほだつ)と呼ばれる犯罪です。

国家収入を減少させ、納税を正しく行っている国民の不満を呼び起こす罪があります。

 

35%や40%と課税割合が高いので納付額が高額となる場合があり、支払いができないと最悪の場合は財産差し押さえとなってしまうケースもあります。

無申告でもペナルティがない個人事業主

無申告ペナルティなし

確定申告を行わない無申告の個人事業主にはペナルティが課されるとわかりましたが、中にはペナルティがない場合もあります。

災害などのやむを得ない事情がある場合には納税の猶予が与えられるとされており、具体的には「災害や盗難にあった」「納税者やその家族の病気や負傷」などの条件が挙げられています。

参照:国税庁|No.9206 国税を期限内に納付できないとき

 

ただしやむを得ない事情がある場合であっても、手続きをしなければ無申告となってしまいますので注意しましょう。

このような場合は「災害による申告、納付等の期限延長申請書」という書類を提出し、申告できない旨を税務署に報告します。

参照:国税庁|災害による申告、納付等の期限延長申請書

確定申告をしなくてもいい個人事業主

個人事業主の中には、そもそも確定申告をしなくても良い人がいます。

年間の所得が48万円以下の個人事業主です。

 

売上から経費を差し引いたものが所得とみなされ、売上金額ではありませんので覚えておきましょう。

年間所得が48万円以下であり、確定申告が不要な個人事業主は、住民税の申告を忘れないように行ってください。

確定申告の不備への対処法

個人事業主が確定申告を行い、自身で誤りや修正箇所があると気付いた場合はどう対処していけばいいのでしょうか。

誤りに気付くタイミングによって対処法が異なります。

 

  • 確定申告の期限を忘れていたら
  • 確定申告後に誤りに気付いたら
  • 申告期限後に誤りに気付いたら

確定申告の期限を忘れていたら

確定申告をするつもりであったとしても、申告期限を過ぎてしまうと無申告となってしまいます。

期限を忘れてしまっていたら、気付いた時点で速やかに申告を行うようにしましょう。

 

なるべく早く、自主的に申告を行うと、ペナルティがあったとしても最小限に抑えられます。

「このままバレないだろう」「税務署の指摘があってからでいい」と考えていると、後悔する状態になるかもしれません。

確定申告後に誤りに気付いたら

確定申告の書類をすでに提出したという状態で、誤りに気付くという場合もあるでしょう。

法定申告期限は毎年3月15日となっていますので、その期限前であれば新たな確定申告書を再提出しましょう。

申告期限後に誤りに気付いたら

法定申告期限を過ぎてから確定申告書の誤りに気付いた場合も同様に、速やかに修正をします。

実際の納税額よりも少なく申告している場合は、過少申告であると指摘を受ける前に修正申告を行いましょう。

 

税務署からの指摘を受ける前に行動すると、ペナルティの負担を抑えられます。

税金を多く申告してしまっている場合には、税金の還付請求が可能です。

個人事業主の無申告に関するよくある質問

個人事業主無申告

個人事業主の無申告に関する質問をまとめました。

 

  • 個人事業主が税務署に目をつけられる基準はありますか?
  • ゼロ申告とはどういう意味ですか?
  • 税務署は個人の通帳をどこまで調べますか?

個人事業主が税務署に目をつけられる基準はありますか?

個人事業主の課税所得が1,000万円を超えると、税務調査の対象になりやすくなります。

個人事業主としては事業規模が大きい金額となりますので、簡単な計算ミスといった不備が起こりやすくなります。

 

また課税所得1,000万円は消費税の課税義務が発生するラインでもありますので、1,000万円ギリギリという個人事業主も目をつけられやすいと覚えておきましょう。

ゼロ申告とはどういう意味ですか?

ゼロ申告とは、1年間無収入であると申告する行為です。

年間所得が48万円以下の個人事業主は確定申告が不要だとお伝えしましたが、国民健康保険料や保育料は所得が少ないと減免が受けられる可能性があります。

 

ご自身の状態により、ゼロ申告を行うメリットがある場合があります。

税務署は個人の通帳をどこまで調べますか?

税務署が個人の銀行通帳を調査しようと動けば、対象者個人の通帳はもちろん、家族や親族、関係者の口座まで調べられてしまいます。

もちろん無駄に広範囲の調査を行うわけではありませんが、必要があると判断されれば隠しようがありません。

 

無申告に気付いたら速やかに申告を

個人事業主が無申告のままでいると、リスクしかありません。

税務署からの指摘を受けてからではペナルティがかかりますし、申告に時間がかかればかかるほど延滞税もかかります。

 

「どう確定申告をしていけばいいかわからない」「何年も無申告なので不安だ」という場合は、税理士にご相談ください。

 

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