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無申告加算税がかからない場合がある?宥恕規定が認められる正当な理由とは
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税申告・納税の期限を過ぎてしまうと課されるペナルティが、無申告加算税です。
無申告加算税には宥恕規定(ゆうじょきてい)があり、無申告加算税がかからないケースがあります。
「正当な理由がある場合」とされていますが、正当な理由とは具体的にどのような理由なのでしょうか。
無申告加算税がかからないケースや加算税率、無申告加算税にプラスしてかかる延滞税の税率についてもご説明します。
目次
無申告加算税の宥恕規定(ゆうじょきてい)とは
税法上における宥恕規定(ゆうじょきてい)とは、やむを得ない事情があり期限を過ぎてしまった時の救済処置のようなものです。
「宥」も「恕」も、許すという意味があります。
無申告加算税には宥恕規定がありますので、その条件をしっかりと理解しておくのが重要です。
税務署は「血も涙もない」とか「とにかく厳しい」「相談しても無駄」というようなイメージがあるかもしれませんが、諦めずに相談するのがおすすめです。
無申告加算税とは
確定申告の申告期限を過ぎてしまったら、無申告加算税がかかります。
加算税率は以下のようになっており、自主的に申告をした場合と税務署から指摘を受けた場合で異なります。
条件 | 納付すべき税金 | 加算税率 |
自主的に申告 | 税額に関わらず | 5% |
調査の事前通知の後
から 税務調査までの間 |
50万円まで | 10% |
50万円~300万円 | 15% | |
300万円を超える部分 | 25% ※ | |
税務調査の後 | 50万円まで | 15% |
50万円~300万円 | 20% | |
300万円を超える部分 | 30% |
※令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)
本来納付すべき税金の金額が高額になるほど、無申告加算税の税率が高くなります。
さらに青色申告の控除適用は本来最大65万円ですが、10万円に減額となってしまいますので覚えておきましょう。
無申告加算税が発生する要件
無申告加算税がどのような場合に発生するのかを確認しておきましょう。
- 確定申告の期限内に行われなかった
- 確定申告の期限後に申告をした
- 期限後申告で修正・更生が発生した
- 所得金額の決定を受けた
確定申告の期限内に行われなかった
期限までに確定申告が行われなかった場合に課されるペナルティが、無申告加算税です。
確定申告の期間は毎年2月16日~3月15日と変動がありませんので、忘れずに申告するようにしましょう。
郵送で提出する方は到着日が受付日となりますので、消印日と間違えないように準備しましょう。
申告だけでなく、所得税の納付期限も確定申告と同じく3月15日までです。
所得税の納付まで済ませる必要がありますので、ギリギリにならないよう時間に余裕を持って確定申告に取り掛かりましょう。
確定申告の期限後に申告をした
期限後に確定申告をすると、数日でも日数に応じてペナルティが課される可能性があります。
後述しますが、正当な理由があると認められるケースではこの限りではありません。
状況によっては無申告加算税がかからないケースもあります。
期限後申告で修正・更生が発生した
確定申告の内容に誤りがあったと自身で見つけ、申告をする場合があります。
確定申告の期限内であれば、修正をしてもペナルティの課税はありません。
ただし申告期限である3月15日を過ぎてしまうと、無申告加算税の対象となってしまいます。
「誤りのないように申告をする」「早めに確定申告を済ませておく」というような基本的な点を意識しておきましょう。
無申告加算税がかからない場合
無申告加算税がかからない時、宥恕規定が認められる時とは、どのような条件の時なのでしょうか。
- 期限内申告をする意思があった時
- 正当な理由があると認められる時
- 無申告加算税が5,000円未満の時
期限内申告をする意思があった時
納税者が期限内に確定申告をするという意思があった場合には、無申告加算税がかからない可能性があります。
ただし自己申告で「申告するつもりでした」と言えばいいわけではなく、以下の条件を満たしている必要があります。
- 確定申告期限の1ヶ月以内に自主的に申告している
- 納税は期限内に済ませている
- 過去5年間で無申告加算税や重加算税が課税されていない
本来の申告期限である3月15日までに、全額納税を済ませているかという点がポイントです。
あくまでも申告のみが遅れているという場合が、このケースに該当します。
正当な理由があると認められる時
「確定申告が期限内にできなかった」という正当な理由が税務署に認められれば、無申告加算税がかかりません。
では税務署が認めてくれる、正当な理由とは?
実は税務当局は、この正当な理由についての具体例を公表しているわけではありません。
公表されていないという事実を前提に理解していただいた上で、過去に無申告加算税の免除が認められたケースをご紹介します。
- 大規模な災害に見舞われた時
- コロナ禍
- 納税者自身が体の自由を失っていた時
- 交通・通信の途絶え
このような状況で、期限内の申告が難しいと認められれば無申告加算税がかからない可能性があります。
ただし震災の規模や、どこまで体の自由がきくのかといった明確なボーダーラインがあるわけではありません。
可能であれば期限内での申告が望ましいですし、どんな状況であれ期限後の申告にはリスクがあります。
無申告加算税が5,000円未満の時
無申告加算税といったペナルティは、一定額以下の少額であれば課税されないというルールになっています。
無申告加算税の場合は「税額が5,000円未満の場合」または「本来納める税金が1万円未満の場合」にかかりません。
つまり赤字申告の場合は本税が発生しないため、無申告加算税もありません。
無申告加算税と延滞税
期限内に納税がされない場合には、延滞税がかかります。
無申告加算税も例外ではありませんので、無申告加算税だけでなく延滞税も上乗せされます。
納付期限の翌日から納付するまでの日数に応じて延滞税がかかりますので、1日でも早く納税するべきです。
延滞税の割合は納期限から2ヶ月を境に変更され、納税が遅れるほど税率もアップします。
法定納期限翌日~2ヶ月 | 2ヶ月目翌日~完納日 | |
令和3年 | 2.5% | 8.8% |
令和4年 | 2.4% | 8.7% |
令和5年 | 2.4% | 8.7% |
令和6年 | 2.4% | 8.7% |
参照:国税庁|延滞税の割合
無申告加算税を課されないために
無申告加算税が課されてしまうと、追加の納税という経済的な負担だけでなく、手続きも必要になり手間もかかってしまいます。
「書類の作成が間に合わなかった」「うっかりしていた」というようなイージーミスをしないよう、日頃から丁寧に収支の管理をしていけるようにしましょう。
- こまめに経費計上を行う
- e-Taxを利用する
- 専用ソフトを使う
- 税理士に確定申告を依頼する
こまめに経費計上を行う
確定申告は1年分の経費をまとめて計上しますが、社内ではこまめに経費計算をしておくべきです。
「確定申告に合わせて1年に1回やればいいや」という考えでいると、確定申告の時期だけ慌てて経費計算をしなくてはいけなくなってしまいます。
1年に1回確定申告はあるものなので、普段からルールを決めて領収書の整理や出入金の管理をしておきましょう。
取引を行ったらすぐに記録をつけておけば、領収書の紛失といったアクシデントのリスクも少なくなります。
e-Taxを利用する
確定申告の時期は税務署は大変混雑し、駐車場に車を入れるまで待つ、順番待ちの行列に並ぶ、などとにかく時間がかかります。
税務署に出向くという方法でなく、郵送やe-Taxも利用してみると申告がスムーズになります。
電子申告であれば当然待ち時間はありませんので、本業への支障を最低限に抑えられます。
また青色申告特別控除額が10万円増額するというメリットがあり、節税という意味でもe-Taxでの申請がおすすめです。
専用ソフトを使う
自社で帳簿を作成していくのは大変かもしれませんが、専用の会計ソフトを使うと管理が楽になります。
日々の経費計上に使い、そのまま確定申告を行えるものもあります。
確定申告の手間や負担を減らしたいという方は、専用ソフトを比較し、検討してみるといいでしょう。
税理士に確定申告を依頼する
「本業が忙しく税申告まで手が回らない」「難しそうな処理はやりたくない」という方は、税理士にご相談ください。
1年に1回の確定申告はもちろん、税務書類の作成も外注できます。
税理士は税のプロであるため、見落としていた節税や資金繰りに関するアドバイスができる場合もあります。
もし税務調査が入った時でも、税理士が立ち合って調査官の対応が可能です。
「税金に関するアドバイスが欲しい」という方も、是非ご相談ください。
納税できない事情がある場合の対処法
「事情があり国税を期限までに納付できない」「業績の悪化により納税が厳しい」という場合は、まずは所轄の税務署に相談してみてください。
生活の維持や事業の継続が困難であると認められれば、猶予制度が適用される可能性があります。
1番良くないのは「納税できないから」といって相談もせずに、督促状を無視し続ける行為です。
納税に関する総合案内がありますので確認してみるか、税理士にご相談ください。
無申告加算税に関するよくある質問
無申告加算税や税の未納に関するよくある質問をまとめました。
- 無申告加算税は経費として処理できますか?
- 無申告加算税は1日遅れてもかかりますか?
- 税金を納めないとどうなりますか?
- 税金の差し押さえは家族も対象ですか?
- 相続税の申告が間に合わないと無申告加算税が課されますか?
無申告加算税は経費として処理できますか?
無申告加算税は原則として、損金とは認められません。
加算税には他にも、過少申告加算税、不納付加算税、重加算税があり、同様に損金とは認められません。
延滞税も経費としては処理できません。
無申告加算税は1日遅れてもかかりますか?
無申告加算税は1日遅れでもかかります。
お伝えした通り、自主的に申告し納税すれば5%の加算税となります。
1日でも遅れないために、計画的に確定申告の準備をして申告・納税できるようにしておきましょう。
税金を納めないとどうなりますか?
税金を納めないでいると、お伝えした通り延滞税がかかり納税額がどんどん増えていきます。
そのまま放置していると督促状が届き、さらに放置していると給与・預貯金・不動産等の差押えが行われてしまうかもしれません。
差し押さえた不動産や自動車、生命保険などは差押財産の換価が行われ、滞納している税金に充当します。
税金の差し押さえは家族も対象ですか?
税金未納の差し押さえの対象は、納税義務者本人のみです。
名義人が配偶者である不動産や車、子供名義の預貯金通帳などは差し押さえの対象になりません。
ただし家族で住まいとしている家や日常的に使用している車が差し押さえの対象になれば、家族の生活が圧迫される状態になるのは間違いありません。
相続税の申告が間に合わないと無申告加算税が課されますか?
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。
相続税も申告の期限があり、期限を過ぎると無申告加算税が課されます。
相続税も納めなければいけませんので、気持ちが落ち着いてきたら相続税に関しても取り掛かっていきましょう。
条件が合えば無申告加算税がかからない
無申告加算税とは、期限内に税申告・納税をしなかった時に課されるペナルティです。
税申告や納税には期限があり、守るよう努めなければいけないものです。
しかし災害や体調不良など、やむを得ない事情がある場合には免除されたというケースがあるのも事実です。
「悪質な脱税ではない」「申告・納税の意思があったのに事情があって申告できなかった」という場合には、まずは税務署に正直に相談してみましょう。
「いきなり税務署に相談するのは抵抗がある」という方は、まずは税理士にご相談ください。
税務署で認められる事情なのか、現状からどう振る舞うべきなのか、といったアドバイスをさせていただけるかと存じます。
どのような理由があれ、期限内に申告・納税をするのが望ましいです。
無申告加算税が必ず免除されるという理由があるわけではありませんので、早めに税申告できるようにしておきましょう。
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