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NPO法人にも税務調査は入る?NPO法人設立で節税対策ができる理由も紹介
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税務調査は株式会社や個人事業主などに対しても行われるのはもちろん、学校法人などの公益法人にも税務調査が行われることはあります。
本記事では、NPO法人にも税務調査は入るのかについて紹介します。
他にも「NPO法人設立で節税対策ができる理由」や「NPO法人を設立するメリット・デメリット」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考に、NPO法人の税務調査について理解を深めてみてください。
目次
NPO法人にも税務調査は入る
NPO法人などの公益法人であっても、税務調査が実施されることがあります。
実際、国税庁のWebサイトにも、公益法人に対する税務調査の実態が公表されているのも事実です。
日頃から適切に会計処理を行い、正確な税務申告をしていれば、特別な準備は必要なく、税務調査の対応をおこなうことができます。
しかし、少しでも疑問を感じたり、不安に思ったりすることがあれば、税理士に相談することをおすすめします。
NPO法人とは?
NPO法人とは、1998年12月に施行された「特定非営利活動促進法」によって、ボランティア活動などの市民による社会貢献活動を支援し、これらの活動の健全な発展を図るために設立された法人です。
特定非営利活動促進法によって、特定非営利活動を行う団体は法人格を取得できるようになり、団体が法人としての信用を得ながら取引や契約を行うことができ、社会における信頼性が向上するというメリットがあります。
NPO法人の活動内容
NPO法人が展開できる活動は、特定の公益性の高い分野に限られており、約20種類に及びます。
広く一般の人々の利益につながる分野に特化して定められており、主な活動内容は以下のとおりです。
- 地域やコミュニティの振興
- 観光業の振興
- 芸術、文化、スポーツの発展と支援
- 環境の保全
- 災害時の支援活動
- 人権の保護や平和推進
- 就業支援や雇用機会の増加
上記のように、NPO法人は特定非営利活動を中心に行うことが求められていますが、主要な事業に支障が出ない範囲であれば、運営資金や費用をまかなうために別の事業を行うことも認められています。
このようにNPO法人は、社会全体の利益に寄与する活動を通じて、幅広い分野で積極的に社会貢献を果たしています。
NPO法人の種類
NPO法人には、主に以下の4つのタイプがあります。
- 任意団体としてのNPO
- NPO法人
- 認定NPO法人
- 特例認定NPO法人
まず、任意団体とは法人格を持たない団体で、社団や財団の形態をとり、団体としての意思決定に基づいて活動しています。
次に、NPO法人には「認定」や「特例認定」が名称に含まれる場合があり、国の審査を受け、税制上の優遇措置を得ていることが特徴です。
一方、名称に「認定」が付いていないNPO法人は、国の認定を受けていない法人を指します。
任意団体を除くNPO法人は法人格を持ち、非営利の目的で収益事業を行うことが許されています。
また、認定NPO法人と特例認定NPO法人の大きな違いは、申請できる条件にあります。
認定NPO法人は設立から1年以上経過していればすべてのNPO法人が申請できますが、特例認定NPO法人は設立1年以上で、さらに設立から5年以内のNPO法人に限られます。
NPO法人の主な資金源
NPO法人が活動を維持するための資金源は、主に4つのカテゴリーに分類されます。
- 会員からの会費や寄付金などNPOの活動や事業に対する期待からの資金
- 助成金や補助金、給付金といった返済の必要がない資金
- 委託された事業からの収益
- 借入れや投資、預金といった資産の運用による収入
上記の資金を活用して、NPO法人は非営利の活動を行います。
事業で生じた利益があれば、それは次の事業の運営資金として再投資することが可能です。また、寄付金制度や減税措置といった法的な整備も進んでいます。
このように、NPO法人が安定的に活動を続けるためには、複数の資金源を活用し、適切な運営を行うことが求められます。
NPO法人設立で節税対策ができる理由
NPO法人設立で節税対策ができる理由については、以下の3つが挙げられます。
- 収益事業を行わなければ非課税になる
- 1,000万円以下は納税義務が免除される
- 年間所得が800万円超える場合は節税できる可能性が高い
それぞれの理由について解説していきます。
収益事業を行わなければ非課税になる
NPO法人は、収益事業を行わない限り税金がかからないため、一般の法人と比べて節税ができる特徴があります。
しかし、すべてのNPO法人は、事業年度が終了してから3か月以内に、事業報告書や活動計算書など計6種類の書類を作成し、所轄庁へ2部ずつ提出する必要があります。
さらに、NPO法人が収益事業を行う際には、その事業が課税対象となってしまうので、あらかじめ十分注意が必要です。
1,000万円以下は納税義務が免除される
消費税は、一般的に対価を伴うほとんどの取引に適用される税金ですが、NPO法人に関しては、特定の条件を満たす場合に納税義務が免除されることがあります。
具体的には、前々事業年度や直近の事業年度の開始から6か月間における課税売上高や支払給与額が合計で1,000万円を超えない場合、そのNPO法人は消費税を納める義務がありません。
また、新しく設立されたNPO法人で、資本金が1,000万円未満の場合、設立から最初の2年間は消費税が免除される仕組みがあります。
年間所得が800万円超える場合は節税できる可能性が高い
NPO法人などを設立して法人税の課税対象となった場合でも、個人事業主として支払う所得税・住民税よりも税負担が軽減される場合があります。
具体的に、NPO法人では、法人に対する法人税の基本税率は最大で23.2%で、法人住民税や法人事業税を含めた総合的な税負担率でも、最高で約35%程度となります。
特に、1年間の所得が800万円を超える場合には、NPO法人の設立が節税につながる可能性が高いので、税理士に相談して検討してみることをおすすめします。
NPO法人が収益事業に該当するケース
NPO法人が収益事業に該当するケースについては、以下の3つが挙げられます。
- 政令で定められている34業種に該当している
- 事業場を設けている
- 継続的に事業を行っている
それぞれのケースについて解説していきます。
政令で定められている34業種に該当している
NPO法人が収益事業に該当するケースとして、政令で定められている以下の34業種に該当していることが挙げられます。
- 物品の販売業
- 不動産の販売業
- 金銭の貸付業
- 物品の貸付業
- 不動産の貸付業
- 製造業
- 通信業
- 運送業
- 倉庫業
- 請負業
- 印刷業
- 出版業
- 写真業
- 席の貸付業
- 旅館業
- 飲食業
- 仲介業
- 代理業
- 仲立業
- 卸売業
- 鉱業
- 土石採取業
- 公衆浴場業
- 理容業
- 美容業
- 興行業
- 遊技所業
- 遊覧所業
- 医療・保健業
- 技芸や学力の教授業
- 駐車場業
- 信用保証業
- 無形財産権の提供業
- 労働者派遣業
しかし、上記の事業が課税対象になるかどうかは、さまざまな要素を考慮した上で判断されます。
そのため、事前に税理士に相談することが重要で、新たに収益事業を開始する場合は、税務署に届け出を行う必要があります。
事業場を設けている
NPO法人が収益事業に該当するケースとして、収益を得るための事業所が存在することも条件の一つです。
事業所とは、常設の店舗やオフィスなどを指しますが、臨時に設けられるものや、既存の設備を利用して行う事業活動も該当します。
通常、事業所は事業運営のための物理的な場所を意味しますが、移動式の店舗やオフィスも事業所として認められる可能性があります。
継続的に事業を行っている
NPO法人が収益事業として認められるには、継続的に事業を行っていることが挙げられます。
毎週や毎月など、会計年度内で定期的かつ多数回実施されている場合には、継続的な事業と見なされるケースが多いです。
しかし、準備に長い期間が必要な事業や定期的または不定期に繰り返される事業に関しては、一般的に継続的に実施されていると見なされる可能性があります。
NPO法人が非収益事業に該当するケース
近年、ビジネスの形態は多様化が進んでおり、新たなビジネスモデルが次々と登場し、収益事業と非収益事業の区別が曖昧になるケースも増えています。
実際に、政令に定められている34業種に該当していても、一部の事業は収益事業に該当しない場合もあるので注意が必要です。
例えば、従業員の過半数が障害者や高齢者であり、その事業が生活保護に貢献していると判断された場合、収益事業の対象から除外されることがあります。
また、収益事業か非収益事業かの判断は、税務署の解釈に左右されることがあるので、最終的な判断をする前に税務署や専門の税理士に相談することが重要です。
このように、事業がどの範囲で収益事業に該当するか、事前に確認を取ることをおすすめします。
NPO法人を設立するメリット
NPO法人を設立するメリットについては、以下の5つが挙げられます。
- 社会的信用度が高まる
- 従業員を雇える
- 団体名で契約が可能になる
- 設立費用を抑えられる
- 組織性を高められる
それぞれのメリットについて解説していきます。
社会的信用度が高まる
NPO法人を設立することによって、個人よりも社会的な信頼性が向上し、取引や契約がより円滑に進むようになります。
また、NPO法人は国からの認証を受けて設立されているので、活動内容にも信頼を得やすく、公共性の高い事業への参加がしやすくなるというメリットもあります。
従業員を雇える
NPO法人は、活動を円滑に進めるために職員を雇うことが可能です。
例えば、事務作業を担当する本部スタッフや各種教室で指導を行う講師などさまざまな役割の職員を雇用し、適切な給与や報酬を与えることができます。
また、雇用された職員は、厚生年金や健康保険、雇用保険といった社会保険にも加入することができます。
そのため、NPO法人はボランティアにのみ依存しない組織的な活動が可能になり、さらに、社会における雇用創出の役割を果たすことにつながります。
団体名で契約が可能になる
NPO法人を設立することによって、団体名を使用することができるので、さまざまな契約が可能になります。
例えば、団体名義でオフィスを借りたり、物品を購入したりすることができるようになります。
また、団体名で銀行口座を開設することも可能になるので、個人の資産と団体の資産を明確に分離できるのが特徴です。
さらに、契約に伴うリスクも団体の資産範囲内で処理されるので、個人が過度な負担を背負うことはありません。
設立費用を抑えられる
株式会社を設立する際には、定款の認証や登記などの手続きを行うので、一般的に約20万円ほどの費用がかかってしまいます。
一方で、NPO法人の設立に関してはこれらの費用は不要で、必要なのは役員の住民票の取得や法人実印の作成など比較的少額の諸費用のみで設立ができます。
このように、通常の法人に比べ、設立時のコストが大幅に抑えられる点がNPO法人の大きなメリットと言えます。
組織性を高められる
NPO法人を設立した後でも、代表者が交代した場合、活動内容や法人名義の資産は引き続き維持されるので、組織性を高められるメリットが挙げられます。
また、職員を雇用することにより、ボランティアに頼る必要が減り、組織としての機能がより一層強化される点も大きなメリットといえます。
こうした体制の安定化により、優秀な人材を確保しやすくなることが期待できます。
NPO法人を設立するデメリット
NPO法人を設立するデメリットについては、以下の4つが挙げられます。
- 設立に時間がかかる
- 活動内容に制約がある
- 税務申告義務がある
- 事業報告が必要になる
それぞれのデメリットについて解説していきます。
設立に時間がかかる
NPO法人を設立するデメリットとして、設立に時間がかかってしまうことが挙げられます。
一般的な法人は約1か月で設立できますが、NPO法人の場合は設立に4〜6か月ほどかかってしまう傾向があります。
NPO法人として早く活動を開始したい場合、少なくとも半年から1年前には準備を始め、スケジュールに余裕を持って進めることが重要です。
活動内容に制約がある
NPO法人は、活動内容に制約があるので、あらかじめ注意が必要です。
具体的に。事業内容は定款の制約を受け、事業内容を変更しようとすると定款の変更が必要になります。
また、活動内容を変更する場合は、総会による決議のもと再び所轄庁の認証を受けなければならないので、すぐに変更できない点には注意が必要です。
税務申告義務がある
法人化することで税務署に納税者として認識されることになるので、NPO法人を設立することで税務申告義務が発生します。
収益事業を行わない団体については、法人税の対象外となるので、税務署への申告や届け出を行う必要はありません。
しかし、税務署が収益事業と見なす非営利活動は法人税の対象となります。
また、法人住民税はすべての法人に適用されますが、収益事業を行わない団体については、この税金が免除される場合があります。
事業報告が必要になる
NPO法人は、各事業年度が始まってから3か月以内に、管轄する官庁へ事業報告書などを提出することが必要です。
事業報告書だけでなく、活動計算書や貸借対照表など複数の重要書類を準備することが求められます。
また、提出した書類は関係者が必要に応じて閲覧できるように、法人の事務所に保管しておくようにしましょう。
正しく会計を行うことが大切!
今回は、NPO法人にも税務調査は入るのかについて紹介しました。
非営利活動を目的とするNPO法人であっても、法人を設立した時点で法人住民税が課されます。
また、収益事業を行っている場合や、その事業による所得によっては、法人税や消費税の負担も必要となる場合があります。
NPO法人を適切に運営するためには、どのような税金が発生するかをしっかりと理解し、適正な会計処理を行うことが重要です。
万が一、税務や会計業務が複雑で対応が難しいと感じた場合は、税理士に相談することをおすすめします。
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