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税務調査の録音は違法?判例と録音の注意点をわかりやすく解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税務調査を受ける際、録音がOKなのか違法なのかと悩む方は多くいます。税務署からの質問に対して後でトラブルにならないよう、全てを記録に残したいと考えるのは自然なことだからです。
しかし、隠し録りをすると違法になるリスクがあるのか、事前に許可を取るべきかどうかなど、わからない部分も多くあります。そのため、録音の際はトラブルの原因にならないようにしなければいけません。
そこで今回は、「税務調査の録音におけるトラブルの判例」を紹介します。録音する際に知っておきたい「メリット・デメリット」や「注意点」、「違法性」も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
税務調査での録音は違法なのか
結論から言えば、税務調査の録音は基本的に違法ではありません。録音は、当事者の権利を侵害しない限り許容されているためです。
以下にわけて詳しく見ていきましょう。
- 基本的に問題なし
- 税務調査官に録音を伝える義務はない
- 隠れて録音はしない方が良い
基本的に問題なし
税務調査での録音は、法律上問題となるケースはほとんどありません。個人の記録を残す目的であれば、録音自体は合法なためです。
例えば、税務署の説明を記録していると後から確認ができ、誤解を防げます。双方のコミュニケーションにとって非常に重要です。
ただし、相手にもプライバシーがあります。録音の意図や使用目的を明確にし、相手方の権利を尊重しましょう。
税務調査官に録音を伝える義務はない
税務調査において、録音者である自分が同席している場合に限り、調査官に録音を伝える義務はありません。一方で、自分が同席していない状態で録音をすると、盗聴となり違法行為と判断されます。
非常に難しい部分にはなりますが、録音をする際は録音機器を持って立ち会い、離れる際は録音機器も一緒に持って行きましょう。録音を伝える義務はありませんが、録音しているという表示はするべきです。
隠れて録音はしない方が良い
税務調査で隠して録音はしないようにしましょう。相手の信頼を損ねるリスクが高く、法的な問題に発展する可能性があります。許可を得ていない場合、盗聴となり違法行為と判断されるケースもあるため、オススメしません。
特に、隠れて録音していたとわかった場合、税務署との関係が悪化するのはもちろん、税務調査がスムーズに進まなくなります。
税務調査官にも守秘義務があるため、録音を全て許可されるわけではありません。透明性と信頼性を保つためにも、録音は正直に伝えるようにしましょう。
税務調査の録音で争った判例
税務調査の録音が問題となった判例も存在します。過去には以下のような判例もあるため、注意しましょう。
担当統括官及び前調査担当職員は、平成22年7月6日に、L税理士の事務所において本件調査を実施しようとしたが、その際、L税理士が会話を録音するためにレコーダーを作動させたため、担当統括官は、L税理士に対してレコーダーでの会話の録音を中止するよう求めた。しかし、L税理士がこれに応じなかったことから、担当統括官は、このままの状況では本件調査が進展しないため、やむを得ず独自の調査に移行して調査の進展を図ることになる旨、また、レコーダーによる会話の録音によって、正常な調査ができない状況を続けた場合には、帳簿書類の不提示に該当し、帳簿書類の備付け等がされていないと判断され、所得税法第150条第1項第1号の規定により平成19年分以後の青色申告の承認を取り消すこととなる旨を告げた。
同様の行動による承認取消は、多数の事例があります。録音そのものは違法とはされませんが、担当者の再三の求めに応じなかった結果、法的トラブルに繋がった形です。
録音する際は税務調査官と交渉し、許可を得てからするようにしましょう。
税務調査の録音で違法にならない方法
税務調査を合法的に録音する場合は、以下の手順で進めましょう。
- 録音の目的を明確にする
- 録音機器の準備をする
- 録音開始前に税務調査官に伝える
Step1.録音の目的を明確にする
まず、録音の目的を明確にしましょう。正当な目的でない場合、録音がトラブルの原因となり得るためです。
例えば、記録を残して後から確認するためや、誤解を防ぐためであれば、録音は正当な行為とみなされる可能性があります。
誰でも正当な理由なく録音されるのは嫌なものです。なぜ録音するのかをハッキリと伝えられるように、録音する目的は明確にしておきましょう。
Step2.録音機器の準備をする
次に、録音機器を準備します。近年は録音できる機器が増えているので、使いやすさはもちろん、後から記録を聞き返しやすいかどうかも重要です。
スマートフォンや専用のレコーダーを使うのが一般的な方法となります。あまりにも小さいと盗聴を疑われるため、シンプルで録音しやすいものを選ぶのがオススメです。
Step3.録音開始前に税務調査官に伝える
録音開始前は、税務調査官に録音することを伝えましょう。事前に録音を伝えて双方の信頼関係を保ち、トラブルを未然に防ぎます。ダメと言われた際は、強行しないようにしましょう。
「後で確認のために録音させていただきます」と伝えるだけでも大きく違います。税務調査官も人間です。お互いがスムーズにやり取りできるよう、録音も礼儀を持って伝えてください。
税務調査の録音をする3つのメリット
税務調査は録音しなくても問題なく受けられます。ですが、録音する人が一定数いるのには、以下のメリットが関係しています。
- 正確な記録を残せる
- 交渉力向上に繋がる
- 証拠として使える
正確な記録を残せる
録音をすると正確な記録を残せます。人間の記憶は不確実であり、信用できません。特に、重要なやり取りの場合、後から確認できるかどうかは非常に重要です。そのような場合に、録音は大きく役立ちます。
税務署との細かいやり取りを録音しておけば、言い間違いや誤解を防げます。特に記憶力に自信がない方は、録音を駆使すれば記憶違いによるミスを防げるでしょう。
交渉力向上に繋がる
録音は交渉力の向上にも繋がります。録音した内容を確認する中で、自分の発言や相手の言葉のニュアンスを把握でき、適切な対応ができるようになるためです。
コミュニケーションが苦手な方ほど、会話ややり取りの振り返りが良い勉強になります。交渉力を磨くために、参考として録音を聞き返すのは大きなメリットとなるでしょう。
証拠として使える
録音は、証拠としても使用できます。後々トラブルが発生した場合に、客観的な証拠として役立つためです。特に良くある「言った言わない」を明確に証明できます。
不当な指摘やトラブルを防ぐ面でも、税調査時の録音は大きな効果を発揮するでしょう。
税務調査の録音をする3つのデメリット
税務調査の録音にはメリットがある一方で、デメリットもあります。特に以下の3つは大きいものです。
- 税務署との関係が悪化する可能性がある
- 録音時間が長くなると手間がかかる
- 機材の準備が必要
税務署との関係が悪化する可能性がある
録音をすると、税務署との関係が悪化する可能性があります。録音を不快に感じる調査官がいるためです。
取材でもない限り、録音されるのは誰だって嫌なもの。仕事に関する場合は、特にです。内緒で録音をした場合、調査官との信頼関係が崩れる恐れがあります。
良好な関係性を築くためにも、録音の際は細心の注意を払う必要があります。
録音時間が長くなると手間がかかる
録音時間が長くなると、手間が増えます。録音のデータ整理や、重要な部分を探す作業に時間がかかります。10分のデータと60分のデータでは、探す手間が倍以上も必要です。
長時間のやり取りを全て録音すると、後から確認するのが大変になります。予想してその都度録音するのは難しいため、録音後の振り返りは難しくなる可能性がある点は認識しておきましょう。
機材の準備が必要
録音には機材の準備が不可欠です。スマートフォンやレコーダーなどの録音機器がないと、そもそも録音ができません。
録音機器が故障していた場合、重要な場面での記録を残せない可能性があります。準備不足がトラブルの原因となるケースもあるため、事前に録音できるか試しておくと良いでしょう。
税務調査の録音をする際の2つの注意点
税務調査の録音をする際は、気を付けたいポイントがあります。違法行為にしないためにも、以下の2点には注意しましょう。
- 盗聴と誤解されないようにする
- 録音内容の活用方法を考える
盗聴と誤解されないようにする
録音する際、盗聴と誤解されないようにしましょう。明確な違法行為になるため、相手に伝えずに録音を行うと、トラブルに発展する可能性があります。
録音する際は、事前に録音する旨を伝えて、了承を得るようにしてください。録音による余計な誤解を防ぎ、気持ち良くやり取りができるようになります。
録音内容の活用方法を考える
録音した内容の活用方法も考慮しましょう。録音データは正しく管理し、必要な場合にのみ使用するようにしてください。
録音はあくまでも保険です。トラブルが発生した際にだけ活用し、普段から無闇に録音データを公開しないようにしましょう。
税務調査での録音は違法のリスクも考慮してしよう
税務調査での録音は、記録を残せるのはもちろん、交渉に役立つなど多くのメリットがあります。一方で、税務署との関係悪化や手間が増えるデメリットも無視できません。過去には裁判になったケースもあるので、注意しましょう。
録音をする際は、自身が必ず同席し、税務調査官に確認して許可が出たらするようにしてください。
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