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相続税の税務調査が入る割合は約15%|対象になる人の特徴とは
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
相続税の税務調査が入る割合は、約15%です。
全ての人に税務調査が入るわけではありませんが、実地調査だけでなく簡易的な接触という調査もありますので油断はできません。
どんな人が相続税の税務調査の対象になりやすいのでしょうか。
決定的な要素があるわけではありませんが、税務調査の対象に選ばれやすい人の傾向がありますのでお伝えしていきます。
目次
相続税で税務調査が入る割合
相続税の税務調査の件数はその年によって異なりますが、電話などの簡易的な接触件数を合わせると、おおよそ15%ほどの割合です。
令和3事務年度と令和4事務年度の税務調査の件数と割合は、以下のようになります。
令和3事務年度 | 令和4事務年度 | |
相続税の申告書
の提出に係る被相続⼈数 |
134,275人 | 150,858人 |
簡易な接触件数 | 14,730件
(約10%) |
15,004件 (約10%) |
実地調査件数 | 6,317件 (約4%) |
8,196件 (約5%) |
全ての家庭に税務調査が入るわけではなく、税務調査によって追徴課税が見込めそうだと思われる家庭に税務調査が入ると考えられます。
税務調査で課せられる追徴課税の金額
簡易的な接触をした家庭、実地調査を行った家庭で、それぞれ以下の額の追徴課税がされています。
税務調査が入ると、1件当たり800万円以上の追徴課税という調査結果が出ています。
相続税は金額が高額となりますので、追徴課税の負担が大きくなると考えていいでしょう。
令和3事務年度 | 令和4事務年度 | |
追徴課税総額
【簡易な接触件数】 |
69億円 | 87 億円 |
1件の追徴課税
【簡易な接触件数】 |
47万円 | 58万円 |
追徴課税総額
【実地調査件数】 |
560億円 | 669億円 |
1件の追徴課税 【実地調査件数】 |
886万円 | 816万円 |
相続税の税務調査とは
相続税の税務調査とは、いつ頃、どのように行われるのでしょうか。
基本的な事柄について、確認しておきましょう。
- 任意調査と強制調査
- 相続税の税務調査が入る時期
任意調査と強制調査
ドラマで見るような税務調査だと、突然税務署の調査官が押しかけてきて困惑してしまうかもしれません。
実際の税務調査は任意調査と強制調査があり、悪質な脱税の疑いがなければ任意捜査となるのが一般的です。
任意捜査とは事前に電話連絡があり、日時を決めて行います。
被相続人が最後に住まいとしていた家で行われる場合が多いでしょう。
脱税が疑われる場合は、抜き打ちの強制捜査が行われます。
ただし多くは任意捜査となり事前連絡がありますので、安心してください。
相続税の税務調査が入る時期
相続税の時効は5年とされており、被相続人が亡くなってから5年以降は相続税の税務調査は入りません。
多くの場合は、相続税の申告をした1年~2年後の8月~11月頃となります。
「なぜ8月~11月なのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、これは税務署の人事異動が毎年7月であるという事実が関係しています。
人事異動後に調査を開始すれば、来年の人事異動まで時間を気にせずに調査できるためであると考えられます。
そのため目安として、「相続税の申告をして2年経った」「11月を過ぎた」という状況であれば、相続税の税務調査が入る確率はかなり低いと考えていいでしょう。
相続税税務調査の対象のなりやすい人
遺産を相続した人すべてが税務調査の対象になるわけではありません。
では、どのような人が相続税の税務調査の対象に選ばれやすいのでしょうか。
必ずこの限りというわけではありませんが、税務調査の対象になりやすい人は以下のような傾向があります。
- 申告書に不備がある
- 相続額が2億円以上と高額
- 相続財産は預貯金が多い
- 多額の借入金がある
- 名義預金がある
- 暦年贈与が多い
- 海外資産が多い
- 家族の資産が多い
- 被相続人の社会的地位が高い
- 死亡直前に不審な引き出しがある
- 税理士に依頼せずに申告した
- 相続税が無申告である
申告書に不備がある
相続税の申告書に不備、間違い、ミスが多いと、税務署としては調査をせざるを得ません。
税務調査は「正しく納税してもらう」という目的がありますので、添付書類の不足なども調査の対象です。
ただミスが多いだけなのか、悪意のある隠ぺいなのか、という点も調査してくるでしょう。
あらぬ疑いをかけられないためにも、正しく申請するようにしましょう。
相続額が2億円以上と高額
相続規模が大きい、特に2億円以上と高額な相続額となる場合には税務調査の確率が上がります。
財産が多いから不正を疑われているというわけではなく、申告漏れが発生しやすくなるためです。
相続規模が大きくなると、宝飾品や美術品といった評価ミスが起きやすい相続品が多くなります。
不動産や有価証券の評価についても確認されるかもしれません。
税務署は独自のリストを持っているといわれており、富裕層を把握しています。
資産規模が大きいと追徴課税も高額になりますので、相続額が高額になると税務調査の対象になりやすいといえます。
相続財産は預貯金が多い
相続財産は、預貯金や不動産、特許権や著作権も含まれます。
多様な相続の形がありますが、税務調査が多くなりやすいのは預貯金が多いケースです。
理由としては、不動産や宝飾品といった評価に変動があるものよりも、預貯金の方が申告漏れを明確に指摘できるからです。
預貯金の額だけでなく、出入金もチェックされており、出入りが多いとお金の流れを確認されるでしょう。
相続人が見落としがちなのが、貸付金です。
貸付金は将来的に返済されるお金であり、プラスの財産とみなされ相続税がかかるので覚えておきましょう。
多額の借入金がある
借入金はマイナスの財産であるはずですが、借入金があるのであれば見合っただけの財産があるはずです。
担保となるはずの不動産や事業設備を相続人が見落としていないか、という点をチェックします。
相続人が知らない不動産などの存在が明らかになると、申告漏れとなり追徴課税の対象になります。
名義預金がある
名義預金とは、名義人が異なる預金を指します。
例えば、「祖父母が孫名義の口座を開設していた」「夫が妻名義の口座にお金を貯めていた」というものです。
名義が相続人本人のものであったとしても、口座や印鑑を管理していたのが生前の被相続人であれば、名義人は自由に出入金ができませんので、被相続人の財産であると考えます。
名義預金であると判断されれば相続税がかかりますので、申告漏れとなります。
悪質な隠ぺいだと重加算税も課されますので、名義預金を把握している場合は相続税の申告を忘れないようにしましょう。
暦年贈与が多い
暦年贈与とは、早い時期から生前贈与を行い資産を減らし、相続税の負担を減らすものです。
暦年課税の基礎控除は年110万円となっており、この金額までは贈与税がかかりません。
暦年贈与の税務調査は、受け取って数年経ってから行われるというケースもあります。
専業主婦や学生など、自身での収入が少ない相続人の預貯金が多いと、「生前贈与を受けていたのではないか」と調査される場合があります。
海外資産が多い
海外の口座に保有している預貯金や不動産などの資産を、海外資産といいます。
基本的に海外資産は源泉徴収の対象となりませんが、国際相続をする場合は手続きが必要です。
海外の金融商品に投資する人が増加している、という背景があり、税務署は海外資産の把握に努めています。
税金逃れの方法として海外資産を隠す人がいますので、より重点的にチェックされます。
家族の資産が多い
被相続人の遺産だけが相続税の税務調査の対象になると考える方が多いでしょうが、家族全員の資産もチェックされています。
家族全員の資産が不自然に多いと、「生前贈与されていたのではないか」と考えられるからです。
収入に対して資産が多い場合はチェックされるかもしれませんが、贈与された時点できちんと贈与税を納めていれば問題はありません。
また被相続人の生活ぶりや趣味からタンス預金を疑われる可能性があり、タンス預金にも相続税がかかるので注意しましょう。
被相続人の社会的地位が高い
被相続人が社長や医師、弁護士というように社会的地位が高い場合は高収入であり財産が多いと推測できるため、税務調査の対象になりやすいです。
収入が多いと、意図していない申告漏れが見つかる場合がありますので、指摘されたら追徴課税をしていきます。
死亡直前に不審な引き出しがある
被相続人の死亡する半年ほど前まで遡り、不審な引き出しがないかを確認します。
1,000万円単位の引き出しがあったのに、何に使われたのかわからないような場合はそのお金の流れを調査されるでしょう。
相続税の申告書にきちんと記載されていれば、問題ありません。
化体財産という、他の種類に成り代わった可能性もあります。
例えば、子供のマイホーム購入の費用に充てられていたという場合は、相続税がかかる可能性があります。
税理士に依頼せずに申告した
相続税の申告は税理士に依頼せずに自身で行っても問題はありません。
しかし相続税の申告書には、申告書を作成した税理士の名前を記入する欄があり、有資格者が申告書を作成したかどうかが一目瞭然です。
資格を持たない方が申告をすると、複雑な申告で誤りがおきやすいため税務調査の対象になりやすいのです。
税理士の署名があると信頼となり、正しく申告したと判断され税務調査の確率は下がります。
相続税が無申告である
そもそも相続税の申告がされていない、無申告の場合は税務調査の対象となります。
相続税には控除があり申告が不要なケースがありますので、「申告が不要だ」と勘違いして無申告でいると調査が入ります。
相続税の申告は基礎控除額が、「3,000万円+( 600万円 × 法定相続人の数 )」となっています。
そのため相続した財産の総額がこの数字を下回れば、申告が不要です。
相続人が把握していない不動産や金融商品などの財産があった場合、基礎控除を上回り無申告となってしまう危険があります。
相続税で税務調査の対象にならないために
相続税で税務調査が入りやすい人は傾向があります。
税務署としても成果を上げたいため、税務調査をするのであれば追徴課税の可能性が高そうな調査対象を選びます。
相続税で税務調査の対象にならないために、心がけておくと良い点があります。
- 正しく申告する
- 被相続人の財産を把握しておく
- 生前贈与を正しく理解する
- 相続税申告に強い税理士を選ぶ
正しく申告する
基本中の基本ではありますが、被相続人の財産を正しく把握し、正しく申告するというのが大切です。
不動産や土地、預貯金だけでなく、宝飾品や自動車といった動産も財産に含まれます。
「こんな財産があるなんて知らなかった」という場合でも、追徴課税はかかります。
悪質な申告隠しの場合は、さらに重加算税が課され負担が大きくなってしまいます。
まずは被相続人の財産をしっかりと洗い出し、正しく申告するよう心がけましょう。
金庫やメール、手紙などにより、把握していなかった財産を見つける糸口になるケースがあります。
生前贈与を正しく理解する
年間110万円を超える生前贈与は贈与税の申告が必要ですが、6年間を過ぎると贈与税の支払い義務がなくなります。
死期を察した被相続人が贈与税を配慮して生前贈与を行うケースがありますが、相続開始前7年以内贈与は、駆け込み贈与とも呼ばれています。
令和6年より相続開始前7年以内贈与は、相続財産に加算される対象となりますので注意しましょう。
参照:国税庁|令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
申告が不要であると相続人が勘違いをしていていると、申告漏れとなってしまいます。
生前贈与を受け取るのであれば、制度を正しく理解し、証拠を残しておくようにしましょう。
相続税申告に強い税理士を選ぶ
「正しく申告をしたい」「あらぬ疑いをかけられたくない」と考えているのであれば、相続税の申告書の作成は、税理士に依頼するのがおすすめです。
さらに税理士なら誰でも良いというわけではなく、相続税申告に強く経験値が豊富な税理士を選ぶべきです。
もし税務調査の対象になった場合には、税理士の立ち合いも可能です。
誰もが相続税の税務調査の対象になり得る
被相続人の遺産を相続し、相続税を申告したら、誰もが税務調査の対象になる可能性はあります。
実地調査だけでなく、電話などの簡易的な調査という方法もありますので、対象になったら誠意をもって対応していかなければいけません。
「申告書の作成が不安だ」「税務調査の対象になりたくない」という方は、税理士にご相談ください。
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- 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
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