2024.11.13
  • 無申告

土地売却後に無申告だとどうなる?申告が不要なケースや申告を行う流れについても解説

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

土地を売却した場合、必ずしも確定申告を行う必要があるわけではありません。

しかし確定申告が必要な場合にそれを怠ると、加算税などの罰則が科される可能性があるため注意が必要です。

本記事では、土地売却後に無申告だとどうなるのかについて紹介します。

他にも「土地売却で確定申告が不要なケース」や「土地売却後の確定申告を行う流れ」についても解説していきます。

ぜひこの記事を参考にして、土地売却後の確定申告について理解を深めてみてください。

 

土地売却後に無申告だとどうなる?

土地売却後に無申告だと、以下のようなリスクが挙げられます。

  • 税務調査が入るリスクがある
  • 延滞税の対象になる
  • 無申告加算税の対象になる

それぞれのリスクについて解説していきます。

税務調査が入るリスクがある

土地売却簿に確定申告が必要であるにもかかわらず、期限内に申告を行わないと、税務署による調査が行われるリスクがあります。

税務調査とは、申告内容が正確かどうかを確認するために税務署が実施する手続きです。

また、税務署から書類で問い合わせが送られてくるケースも珍しくありません。

この問い合わせ書類は一般的に「お尋ね」と呼ばれ、税務署が確定申告が必要かどうかを確認するためのものです。

確定申告が不要な場合でも「お尋ね」が届くケースがありますが、確定申告が不要である理由を記載して返信すれば問題ありません。

しかし、「お尋ね」を無視したり、不正確な内容を記載して回答したりすると、実地調査が行われる可能性が高くなってしまうので注意が必要です。

延滞税の対象になる

土地売却後に無申告の際、支払い期限を守らなかった際のペナルティとして、延滞税の対象になってしまうリスクがあります。

延滞税とは、納税期限を過ぎた場合に課される、利息のような性質を持つ税金です。

納税が期限に間に合わない場合に必ず発生し、税率は年ごとに異なり、税率は延滞期間が長引くほど負担が重くなる仕組みです。

無申告加算税の対象になる

土地売却後に無申告だと、無申告加算税の対象になってしまうリスクも挙げられます。

無申告加算税とは、確定申告の期限を守らなかった場合に課されるペナルティの一種で、税金として徴収されるものです。

例えば、不動産を売却して利益が出た場合に申告を怠ると、通常の譲渡所得税に加えて、この無申告加算税が追加されます。

具体的には、未納税額に対して以下のような税率で計算されます。

  • 50万円までの部分:税率15%
  • 50万円を超える部分:税率20%

しかし、申告期限を過ぎた後でも1か月以内に自主的に申告を行った場合など、特定の条件を満たすと、この税金が減額または免除される可能性があります。

そのため、期限超過に気づいた場合は、できるだけ早く申告と納税を済ませることが重要です。

土地売却で確定申告が不要なケース

土地売却で確定申告が不要なケースとして、譲渡所得が発生しなかった場合には、確定申告を行う必要はありません。

具体的には、譲渡所得がゼロ以下である場合を指し、譲渡所得がマイナスの場合は「譲渡損失」と呼ばれ、確定申告をしなくても法律上の義務はありません。

しかし、譲渡損失が発生した場合には、損失を他の所得と相殺したり、将来の所得と相殺するために繰越控除を利用することが可能です。

このような特例を活用するかどうかは任意ですが、適用するためには確定申告を行う必要があります。

土地売却後の確定申告を行う流れ

土地売却後の確定申告を行う流れについては、以下のとおりです。

  • 必要な書類を準備する
  • 確定申告の書類を作成する
  • 税務署に書類を提出する
  • 納税または還付を受ける

それぞれの項目について解説していきます。

必要な書類を準備する

確定申告を行う際には、多岐にわたる書類が必要となります。

具体的に、土地売却後の確定申告で一般的に求められる書類については、以下が挙げられます。

項目 内容
税務署や国税庁のWebサイトから取得できる様式 ・確定申告書(第一表・第二表)

・分離課税を申告する際に必要な「確定申告書第三表」

・「譲渡所得の内訳書」などの関連書類

本人確認のための書類 ・マイナンバーカードや運転免許証のコピー
不動産売買に関する書類 ・売却時の売買契約書のコピー

・購入時の売買契約書のコピー

・取得費を証明する領収書のコピー

・譲渡に関連する費用を証明する領収書のコピー

勤務先から発行される書類 ・源泉徴収票(給与所得者の場合)

また、特例や控除の適用を受ける場合には、これらに加えて追加の書類が必要となる場合があります。

そのため、税務署や専門家に事前に確認しておくことをおすすめします。

特に、自分で申告を行う場合は、必要書類を早めに揃えることで手続きをスムーズに進めることができます。

確定申告の書類を作成する

必要な書類を準備したら、申告用の書類を作成しましょう。

確定申告書を作成する際には、税務署から提供される資料などを参考にし、内容に誤りがないよう慎重に進めることが重要です。

もし申告書の記入方法に不明点がある場合は、担当の税務署を訪問して相談することができます。

しかし、相談は事前予約が必要な場合が多いので、訪問前に電話などで確認しておくとスムーズです。

税務署に書類を提出する

土地を売却した際に確定申告が必要な場合、売却した翌年の2月16日から3月15日まで税務署に書類を提出するようにしましょう。

しかし、還付申告の場合は例外として、2月15日より前でも手続きを行うことが可能です。

申告方法としては、税務署の窓口での提出に加え、郵送や国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用したオンライン申請も選択できます。

忙しい方や自宅から手続きを済ませたい方には、特にオンライン申請が便利です。

納税または還付を受ける

確定申告を終えて、納めるべき税額が決定した後は、税金を支払う必要があります。

支払いは、金融機関や税務署で手続きを行うことができます。

所得税については、申告期間と同じく2月16日から3月15日が納付期限となります。

一方、住民税は6月以降に届く通知に基づいて支払いを行います。

さらに、振替納税を利用することで、指定した銀行口座からの自動引き落としによる納付も可能です。

加えて、クレジットカードやインターネットバンキングを活用した支払いも、必要な手続きを済ませれば対応することは可能です。

土地売却における譲渡所得・税金の計算方法

土地売却における譲渡所得・税金の計算方法については、以下の4つが挙げられます。

  • 譲渡価格
  • 取得費
  • 譲渡費用
  • 税金

それぞれの計算方法について解説していきます。

譲渡価格

譲渡価額は、基本的には売却価格を意味していますが、固定資産税などの精算が行われる場合、その精算金も含めて計算する必要があります。

特に土地の売買では、固定資産税や都市計画税の精算が行われます。

固定資産税の精算金とは、物件の引渡し後に発生する固定資産税等を実質的に買主が負担するので、売主に対して買主が支払う金額を指します。

この精算金がある場合、譲渡価額は次のように計算します。

  • 譲渡価額 = 売却代金 + 固定資産税等の精算金

税務署は、固定資産税等の納税義務者を1月1日時点の所有者と定めており、引渡し後の税負担を買主に移転する行為を「単なる値上げ」とみなしています。

そのため、買主が売主に支払う固定資産税等の精算金も、譲渡価額に含めるべきと判断されます。

この税務上の考え方に基づき、固定資産税等の精算金も譲渡価額の一部として扱われることになります。

取得費

取得費とは、基本的に土地を購入した際に支払った金額を指します。

しかし、以下に挙げるような費用については、取得費として追加計上することが可能です。

  • 土地購入時の仲介手数料
  • 立ち退き料や移転料など購入に関連して支払った費用
  • 売買契約書に貼った印紙代
  • 登録免許税や司法書士に支払った登録手数料
  • 不動産取得税
  • 購入に伴う搬入や据付にかかる費用
  • 測量にかかった費用
  • 古家付き土地を購入し建物を取り壊して利用する場合の解体費用
  • 整地や埋め立てや擁壁設置、下水道の工事費用など
  • 相続時に不動産登記にかかった費用(売却した資産に関連するもの)

上記の費用を取得費に加算することで、譲渡所得を減らし、場合によっては譲渡損失が発生する可能性が高まります。

そのため、過去の領収書や契約書類があれば、確認することで、節税に大きく役立つ可能性があります。

一方で、購入時の記録が残っていない場合は、概算取得費を使用し、譲渡価額(売却金額)の5%に相当します。

具体的な計算式は以下の通りです。

  • 概算取得費 = 譲渡価額 × 5%

取得費を適切に把握することで、節税につながる可能性がありますので、資料をしっかり確認し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。

 

譲渡費用

譲渡費用とは、不動産を売却する際に発生する費用を指し、具体的には仲介手数料や印紙税、測量費などが含まれます。

具体的に、譲渡費用に該当するものとしないものについては、以下が挙げられます。

項目 内容
譲渡費用に該当するもの ・不動産売却時に支払う仲介手数料

・売買契約書に貼付する印紙の代金

・売却のために広告を行った場合の広告費用

・売却準備として実施した測量の費用

・不動産鑑定を行った際の鑑定料

・借家人を退去させるために支払った立ち退き料

・買主が負担すべき登記費用を売主が代わりに支払った場合の金額

・土地の売却に伴い、上物を取り壊した際の建物取得費および解体費用

・すでに締結した契約を解除し、他の買主に売却した際の違約金

・売却に際して建物を補修した際の費用

・買主との交渉の際にかかった交通費や通信費あど

譲渡費用に該当しないもの ・抵当権を抹消するための費用

・遺産分割のための支出

・新たな住居の購入費や修繕費、移転費用

・売却する資産の維持管理費用

・引越し費用

これらの譲渡費用を正確に計上することは、譲渡益を減らし節税するために重要となります。

特に、可能な限り譲渡費用を漏れなく申告することで、譲渡益を抑え、税負担を軽減することができます。

 

税金

資産の売却によって利益が発生した場合、利益に対して課税されます。

課税額は、譲渡所得に税率を掛け合わせることで求められ、計算式については、以下のとおりです。

  • 課税額 = 譲渡所得 × 税率

税率は、売却する資産の保有期間によって異なり、売却する年の1月1日時点での保有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」の税率が適用され、5年未満の場合は「短期譲渡所得」の税率が適用されます。

具体的に、短期譲渡所得と長期譲渡所得に適用される税率は、以下のとおりです。

所得の種類 保有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年を超える 15% 5%

また、復興特別所得税も別途課され、所得税額に対して2.1%を乗じた額となります。

このように、課税額は保有期間や税率に基づいて異なるため、事前にしっかりと計算しておくことが重要です。

土地売却で利用できる特例

土地売却で利用できる特例については、以下の2つが挙げられます。

  • 譲渡所得から3,000万円の控除
  • 低未利用土地等の100万円特別控除

それぞれの特例について解説していきます。

 

譲渡所得から3,000万円の控除

自宅を取り壊した場合、一定の条件を満たせば、その後一定期間内に売却した際に譲渡所得から最大3,000万円の控除を受けられる特例があります。

また、相続で引き継いだ故人の住居を取り壊して売却する場合にも、条件次第では3,000万円の特別控除を適用することが可能です。

さらに、建物を取り壊して更地の状態で売却した場合でも、要件を満たせば控除が適用されます。

譲渡所得の計算方法は次のようになります。

  • 譲渡所得 = 売却金額 – 購入時の取得費 – 売却時の費用 – 3,000万円

この特例を適用する際には、専門的な知識も必要になるので、事前に税理士に相談することをおすすめします。

 

低未利用土地等の100万円特別控除

特定の条件を満たす不動産を売却し、売却価格が500万円以下の場合、「低未利用土地等に関する100万円の特別控除」を受けることが可能です。

この特別控除を適用した場合、譲渡所得の計算方法は以下のようになります。

  • 譲渡所得 = 売却価格 – 取得費用 – 売却にかかる費用 – 100万円(特別控除額)

この制度を利用するためには、次のような条件を満たす必要があります。

  • 売却価格の総額が500万円以下であること。
  • 売却対象の物件が都市計画区域内に位置していること。
  • その他、定められた条件を満たしていること。

詳細な条件や適用要件については、国税庁の公式Webサイトを確認するようにしましょう。

 

土地売却後は確認申告をしよう!

今回は、土地売却後に無申告だとどうなるのかについて紹介しました。

土地売却では、譲渡益が生じるケースや特例を利用するケースで確定申告が必要となります。

無申告だと、税務調査が入るリスクや延滞税や無申告加算税の対象になってしまう可能性があります。

しかし、譲渡損失が生じるケースでは、確定申告は不要です。

今回の記事で得た情報を活用し、申告漏れなく、適切な節税ができるよう、準備を進めるようにしましょう。

 

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