メニュー
- 税務調査
税務調査で法人カードの利用が問題になる?領収書やレシートの役割
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
多くの企業では法人カードを作成しています。法人カードがあれば、個人が立て替え払いをする必要もないため、経費精算の手間が減るといったメリットがあります。さらに、法人カードを利用した場合はカードを利用した日ではなく、後日、利用した額の請求がなされるため、資金繰りの面でもメリットが生じます。
メリットが多いため、法人カードを所有する事業者は多いですが、経費精算の必要がないために、カード利用時に発行される領収書を保管していないケースがあるようです。法人カードの領収書は証憑書類にはならないと言われていますが、法人カードを利用した際の領収書やレシートがないと、税務調査で指摘を受けるケースもあります。また、インボイス制度も法人カードの領収書に影響を与えています。
今回は、税務調査時になぜ法人カードの領収書やレシートが重要になるのか、またインボイス制度と法人カードがどのように関係するのかについてご説明します。
目次
法人カードの領収書は支払いの証憑にはならない?
法人カードなど、クレジットカードを利用した際には、複数枚のクレジット払いと記載された紙が発行されるはずです。その中に領収書やレシートが含まれます。しかし、経費を処理する際に必要になる書類は、領収書ではありません。なぜなら、法人カードによる決済は信用取引に該当するからです。
クレジットカードは信用取引に該当
法人カードを利用した場合、利用した日に代金の支払いをする必要はありません。法人カードをはじめ、クレジットカードを使用した際には、クレジットカード会社が立て替え払いを行います。そして、後日、利用代金が指定の銀行口座から引き落とされるのです。
そのため、法人カードを使用した支払いでは、領収書は金銭を受領したものを証明する書類とはなりません。したがって、法人カードの領収書やレシートは、支払いの証憑書類とはならないのです。
法人カードの支払いの証憑はクレジット売上票
法人カードで支払いをした際に、支払いの証憑となるのは領収書やレシートと一緒に渡されるクレジット売上票です。クレジット売上票には加盟店やカードの利用日、カード番号、支払区分、金額などが記載されています。
しかし、クレジットの売上票には金額が記載されているものの品物等、購入した商品やサービスの内容は記載されていません。したがって購入商品等の内容が分かる領収書もクレジット売上票と一緒に保管しておかなければならないのです。
法人カードの領収書やレシートが税務調査に与える影響
納税の義務のある法人の場合、税務調査の対象になる場合があります。税務調査とは、正しく申告を行い、納税をしているのかについて調べる税務署による調査です。
税務調査の内容
税務調査では、調査官がオフィスを訪れ、会社のお金の流れを確認します。調査官から事業内容や売上の状況、経営状態などについていくつか質問がなされます。その後、準備をしておくように伝えられた各種帳簿の確認作業が始まります。その際、売上の額が正しいか、計上漏れが発生していないか、経費の額は正しいか、不正に経費を計上していないかのチェックもなされるのです。
税務調査の目的は、正しく申告せず、不正に納税額を低く見せかけている納税者に対し、正しい納税を求めることです。不正を行う納税者の多くは、所得額を低く装います。なぜなら、所得額が低くなれば納める税額も低くなるからです。
所得額は、売上から経費を差し引いて算出します。したがって、所得額を低く装うためには売上を少なく計上する方法と経費を多く計上する方法の2パターンが多く用いられているのです。そのため、税務調査では売上と経費に注目して調査が行われます。
法人カードの領収書やレシートがない場合
前述のように法人カードで支払いを行ったものに関しては、領収書ではなく、クレジット売上票が支払いの証憑となります。しかし、クレジット売上票には金額が記載されているものの、品物やサービスの内容までは記載されていません。そのため、本当に事業に必要な支出であったのかどうかという点をクレジット売上票で判別することは難しくなります。
たとえば、法人カードを使って社長が自分用のゴルフクラブを購入したとします。法人カードの売上票だけを提出した場合、売上票には金額はあるものの、品物については記載がないため、何を購入した代金なのかが分かりません。そのため、領収書やレシートがなく、法人カードの売上票だけが保管されていた場合、税務調査では対象となる支出を経費として認めない可能性があるのです。
経費が否認された場合のリスク
法人カードのクレジット売上票だけを保管し、領収書やレシートが保管していなかった場合、税務調査で法人カードによる支出を否認されると、経費として計上できない額が増えます。経費の額が減れば、当然、法人税などの課税対象となる所得額は増えるのです。所得額が増えれば、納めるべき税額も増加します。
また、税務調査により法人カードを利用した支払いを否認され、その指摘を受け入れた場合、申告内容を修正して提出する修正申告をしなければなりません。修正申告を行う際には、納税額が不足したことに対するペナルティとして過少申告加算税分を上乗せした税金を納めなければならなくなります。過少申告加算税の税率は10%ですが、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分に関しては15%の税率が課せられます。
つまり、法人カードを利用し、領収書やレシートも一緒に保管しておかないと、本来よりも多くの税金を納めなければならない可能性があるのです。
法人カードの領収書とインボイス制度の関係
2023年10月からインボイス制度がスタートしました。インボイス制度の開始に伴い、法人カードを利用する際には、領収書の取り扱いにも変化が生じています。
インボイス制度と消費税の仕入れ額控除
消費税の課税事業者は、消費税を納税する際に、消費税の額を計算しなければなりません。その際、売上にかかる消費税の額から仕入れにかかった消費税の額を差し引いて納税額を計算できる制度を消費税の仕入れ額控除と言います。
インボイス制度のスタートに伴い、消費税の仕入れ額控除を行うためには、インボイスが必須となりました。たとえば、仕入れを行う業者がインボイスを発行していなかった場合、その仕入れ時に支払った消費税の額を売上から差し引くことができません。したがって、インボイスが発行されない取引の場合、インボイス制度の開始前には負担する必要がなかった消費税を仕入れ側が負担しなければならなくなるのです。
インボイス制度と法人カードの領収書
インボイスには記載事項が決められており、具体的には次のような項目が記載されていない領収書はインボイスとして認められません。
①インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 取引年月日
③ 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤ 消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
法人カードのクレジット売上票では、インボイスに記載すべき情報がすべて記載されていないケースがほとんどであり、カードの利用明細や請求書にもすべての事項が書かれているわけではありません。
また、クレジットの利用明細は、インボイスの代わりにはなりません。なぜなら、利用明細は商品やサービスを購入した事業者が作成し、交付した書類ではないからです。
したがって、消費税の仕入れ額控除を行うためには、法人カードで支払いを行った場合でも、実際に商品などを購入した事業者から発行された領収書やレシートが必要になるのです。
税務調査で法人カードの支出を指摘されないために
税務調査をスムーズに終えるため、法人カードを利用している場合は次の点に注意するようにしましょう。
法人カードの領収書やレシートの保管を徹底する
法人カードを利用した場合、経費精算が不要になるからといってクレジット売上票や領収書、レシートなどを破棄してしまうと、税務調査の際にカードの使途が不明であるとして不正が疑われる恐れがあります。
役員だけでなく、従業員にも法人カードを発行しているような場合は、法人カードを利用した際に、利用した店舗から発行される書類はすべて保管し、提出することを徹底しておきましょう。
二重の計上に気を付ける
法人カードを利用するとクレジット売上票と領収書、利用明細など、複数の書類が発行されます。そのため、それぞれの書類を別々に保管しておくと、既に経費として計上したものを再度計上してしまう恐れがあるのです。万が一、同じ支出を重複して計上していると、税務調査の際に調査官から指摘を受けることになるでしょう。
二重の計上を避けるためにも、クレジット売上票と領収書、利用明細などは一緒に管理しておくことをおすすめします。
ECサイトで利用した法人カードの領収書は電子保存
法人カードを使い、オンラインショッピングをする場合もあるでしょう。オンラインショッピングでは、領収書はサイトからダウンロードしたり、メールで送付されたりする場合があります。電子帳簿保存法により、電子取引によって発生した領収書は、電子保存をしなければならないルールとなっています。オンラインショッピングをし、領収書がデータで発行される場合には、電子データとして保存するようにしましょう。
まとめ
法人カードを利用した際には、複数の書類が発行されます。そのうち、クレジット売上票は支払いを証明する書類となりますが、クレジット売上票には商品名等の記載がないため、税務調査の際などには領収書やレシートの提示を求められるケースがあります。
また、法人カードのクレジット売上票や利用明細書などは、インボイスとして扱うことはできません。消費税の仕入れ額控除を行う場合には、法人カードを利用して商品等を購入した事業者が発行するインボイス対応の領収書が必要になる点にも注意しましょう。
免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。 当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
- 現在、税務調査が入っているので困っている
- 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
- 税務調査に強い税理士に変更したい
- 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
税務調査の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
- 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
- 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
- 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断