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宗教法人の税務調査の頻度は?調査の件数や対象にならないためのポイント
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
宗教法人はどのくらいの頻度で税務調査が行われるのでしょうか。
そもそも宗教活動は非課税とされていますので、「税務調査の対象になるのかも疑問だ」という方もいるかもしれません。
なぜ宗教法人が税務調査の対象になるのか、
実際に宗教法人に対して何件程度の実地調査がされているのか、についてお伝えします。
税務調査の対象になるとペナルティが課される可能性がありますので、不正を疑われないように税申告するためのポイントについても触れていきます。
目次
宗教法人も税務調査の対象なのか?
宗教活動に対しては法人税がかからないとされていますが、宗教法人が全くの非課税かと問われるとそうではありません。
宗教法人が、なぜ税務調査の対象となるのかという基本的な点を理解しておきましょう。
- 宗教法人が税務調査の対象になる理由
- 宗教活動はなぜ非課税なのか
宗教法人が税務調査の対象になる理由
宗教法人の活動は、宗教活動と収益活動があります。
宗教活動に関する収益は基本的に非課税となっていますが、収益活動は課税対象となります。
つまり宗教法人が行う収益活動に関わる部分は税申告・納税が必要となります。
税務調査の対象となるのは収益活動の課税部分で、お寺や神社といった宗教法人であっても税務対象の対象になる可能性があります。
宗教活動はなぜ非課税なのか
宗教活動は、営利目的で行われるものではありませんので非課税となっています。
所得税は、儲け=利益に対して課税されるものだからです。
例えば、お賽銭やお布施は信仰心に基づいた寄付の一種であると考えられます。
これらはお寺や神社といった宗教法人の儲けのためのものではないと考えられ、所得税が課せられません。
宗教法人の実地調査件数
宗教法人が税務調査の対象になる中で、実際に何件程度の実地調査が行われているのでしょうか。
宗教法人だから非課税というわけでは全くなく、年間で約300件程度の実地調査が行われており、追徴課税もされています。
国税庁のデータに基づく宗教法人の法人税の調査件数は、以下のようになっています。
令和3年 | 令和4年 | |
宗教法人件数 | 13,725件 | 13,783件 |
実地調査件数 | 295件 | 341件 |
非違件数 | 169件 | 188件 |
申告漏れ 所得金額 |
30億 7,900万円 |
42億 9,900万円 |
追徴課税 | 5億 6,300万円 |
8億 100万円 |
宗教法人の税務調査のポイント
宗教法人の税務調査は、一般企業とは異なります。
どのような点が調査のポイントとなるのかを知り、正しく税申告ができるようにしておきましょう。
- 源泉徴収税
- 宗教活動か収益活動か
- 家計費と経費のボーダーライン
源泉徴収税
お賽銭や寄付金、奉納金やお布施といった宗教活動に関する収入は非課税ですが、職員に払う給料には源泉徴収税がかかります。
税理士への報酬や弟子の学費を負担した場合も、同様に源泉徴収して納付しなければいけません。
住職や宮司、職員に支払う給料は金銭で支給されるものですが、注意が必要なのが金銭以外で現物支給されるものです。
例えば、住宅等を無償または低賃金で貸与している場合、個人で負担すべき飲食代や衣服代などが源泉徴収の対象となります。
参照:国税庁|宗教法人の税務
令和4年は7万2,000件の源泉所得税の調査実績があり、338億円の追徴課税が行われています。
どこまでが源泉徴収の対象なのかを正確に理解しておかなければいけません。
宗教活動か収益活動か
宗教活動ではない収益活動に対して税金がかかりますので、どこからが収益活動となるのかを把握しておかなければいけません。
宗教法人の収益活動は、以下の34種類の事業が該当するとされていますので確認しておきましょう。
これらの付随業務と収益活動の範囲内となります。
① 物品販売業 | ⑫出版業 | ㉓浴場業 |
②不動産販売業 | ⑬写真業 | ㉔理容業 |
③金銭貸付業 | ⑭席貸業 | ㉕美容業 |
④物品貸付業 | ⑮旅館業 | ㉖興行業 |
⑤不動産貸付業 | ⑯料理店業/
飲食店業 |
㉗遊技所業 |
⑥製造業 | ⑰周旋業 | ㉘遊覧所業 |
⑦通信業/
放送業 |
⑱代理業 | ㉙医療保健業 |
⑧運送業/
運送取扱業 |
⑲仲立業 | ㉚技芸教授業 |
⑨倉庫業 | ⑳問屋業 | ㉛駐車場業 |
⑩請負業 | ㉑鉱業 | ㉜信用保証業 |
⑪印刷業 | ㉒土石採取業 | ㉝無体財産権 の提供業 |
㉞労働者派遣業 |
参照:国税庁|宗教法人の税務
家計費と経費のボーダーライン
宗教法人を運営していると家計費とのボーダーラインが曖昧になってしまうケースがあります。
宗教活動の収入は非課税であり、宗教活動のための支出に対して管理されていれば問題ありません。
宗教法人の収入は、帳簿等への記録を残しておくようにしましょう。
記録を怠って職員の懐にコッソリ入ってしまうと、職員への給与となり、申告漏れを指摘されてしまう可能性があります。
収益活動と宗教活動、また給与や家計費というように、明確に分けて管理をしておく必要があります。
収益活動の具体例
収益活動に含まれる事業に関しては、上記お伝えした34種類です。
ここではさらに詳しいケースをご紹介しながら、具体例を挙げていきます。
以下のような内容が、宗教法人の収益活動とされています。
- 物品の販売
- 墳墓地以外の不動産の貸付や駐車場の経営
- 茶道・生花等の教授
物品の販売
お寺や神社での物品として、一般の人がイメージするのはお守りやお札等であり、これらは宗教活動に含まれます。
そのため物品販売の全てが非課税になるのかと思われるかもしれませんが、その限りではありませんので品物を細かくみていく必要があります。
一般の販売業者でも取引きされているようなものは、宗教活動の範囲のものと認められないためです。
例えば、絵葉書やろうそく、写真帳、暦、供花等は収益活動となります。
物品販売として売られているもの全てが非課税ではありませんので、注意しましょう。
墳墓地以外の不動産の貸付や駐車場の経営
宗教法人が墳墓地の貸付をするのは、宗教活動とされています。
墳墓地以外の敷地内の不動産を貸し付ける、
駐車場を提供する事業は収益活動となります。
また宗教法人の境内内や本堂といったスペースの貸出は、席貸料として収益活動の一部です。
会議や研修のために使用される場合も同様ですので、正しく申告しなければいけません。
茶道・生花等の教授
宗教法人が特定の技芸を教授する事業は、収益事業となります。
例えば、茶道や生け花、書道や音楽、料理などが含まれます。
コロナ禍を経てオンラインで講座を行うケースが増えましたが、オンラインであっても収益活動となりますので覚えておかなければいけません。
また中には資格や免許、段のみを付与するものもありますが、これも宗教法人の収益活動に含まれます。
税務調査の頻度とは
宗教法人であっても税務調査の対象となるのは、一般企業と変わりません。
では税務調査はどのくらいの頻度で来るものなのでしょうか。
- 一般の中小企業なら3年が目安
- 宗教法人の税務調査の頻度
一般の中小企業なら3年が目安
一般の中小企業であれば、税務調査はおおよそ
3年が目安だといわれています。
これは1回の税務調査で3年分の調査を行うのが、一般的であるためです。
税務調査は正しく税申告・納税がされているかを確認するものなので、申告漏れの金額が大きくなりそうな法人が対象になる傾向があります。
事業規模の小さな法人だと、7年、10年と間隔をあけて税務調査が行われる場合もあります。
宗教法人の税務調査の頻度
宗教法人と一般企業で、税務調査の頻度に大きな違いはありません。
宗教法人だから税務調査がないわけではありませんし、頻度に違いがあるわけではありません。
つまり注意すべき頻度としては、3年がひとつの目安になるといえます。
ただし申告漏れの金額が大きかった場合や調査年数が少なかった場合は、この限りではありません。
税務調査に明確な頻度があるわけではありませんので、いつ実地調査が入っても動じないように正しく税申告するよう心がけましょう。
金閣寺の約2億円の申告漏れニュース
宗教法人の脱税のニュースは時折報道されており、過去には金閣寺も取り上げられました。
2009年までの3年間で約2億円の申告漏れが指摘されており、その金額の大きさと金閣寺の知名度で話題となりました。
悪質な仮装や隠ぺいはなかったとされていますが、追徴税額は約1億円となりました。
申告漏れとして指摘された収入に関して、税務署と金閣寺側の認識の違いがあったようです。
このように脱税の認識がなかったとしても、
税務署に指摘されてしまうケースがあります。
正しく申告しないと、追徴課税でペナルティも課されますので大きな負担となってしまいます。
参照:日本経済新聞|相国寺派管長、揮毫料2億円申告漏れ 大阪国税が指摘
宗教法人に税理士が必要か
宗教法人が正しく税申告・納税をするために、税理士に依頼をするという選択肢があります。
以下のような宗教法人では、税理士がついていた方が良いといえます。
- 収益活動の範囲がわからない
- 不正を疑われたくない
- 税務調査の立ち合いを依頼したい
収益活動の範囲がわからない
宗教法人にとって、宗教活動と収益活動の仕分けが重要であるという点は理解していただけたでしょう。
問題は正しくその仕分けができるのかという点です。
金閣寺の事例を見ていただいてもわかる通り、宗教法人側で不正をしている認識がなくとも申告漏れを指摘されてしまう場合があります。
悪意がなく、不意な申告漏れであっても指摘されてしまえばペナルティが課されますし、宗教法人としてのイメージにも影響があるかもしれません。
「なんとなく」で収益活動の線引きを行わず、税理士に相談しながら仕分けができると安心です。
不正を疑われたくない
確定申告は必ずしも税理士が行う必要はありませんが、税理士が作成した確定申告書は一定の信頼がある書類となります。
確定申告書類には税理士の署名押印がされますので、税理士が作成したものであると一目瞭然です。
不正を疑われたくないという気持ちがある場合は、税理士への依頼を検討してみてください。
税務調査の立ち合いを依頼したい
宗教法人であったとしても税務調査が行われる可能性はあります。
税務調査は顧問税理士の立ち合いが認められていますので、調査官への対応は税理士が行います。
実地調査までの書類の準備や、想定される質問に関する受け答えの準備など、税理士と事前に確認を行えます。
自身で対応をするとウッカリ不利な受け答えをしてしまう可能性がありますが、税理士がついていれば調査官の質問の意図を汲み取り、適切に答弁ができます。
税務調査に関するよくある質問
税務調査に関するよくある質問をまとめました。
- 税務調査はいつ頃行われますか?
- 税務調査は1回来たら安心ですか?
- 税務調査の対象になりやすい法人の特徴はありますか?
税務調査はいつ頃行われますか?
税務調査は毎年行われ、7月~12月の時期に件数が増加します。
税務署の人事評価に影響がある時期で、調査官はより実績を残したいと考えていますので、
納税者としては厳しい調査になるかもしれません。
税務調査は1回来たら安心ですか?
税務調査は1回来たら安心というものではなく、数年後に同じ法人に調査が行われる場合があります。
「1回来たからもう来ない」という考えは誤りであり、常に正しく税申告をしておかなければいけません。
税務調査の対象になりやすい法人の特徴はありますか?
税務調査の目的のひとつに、追徴課税をとるというものがあります。
そのため事業規模が大きく、利益が大きい法人の方が税務調査の対象になりやすいと考えられます。
宗教法人も税務調査の対象になる
宗教法人の宗教活動は営利目的で行われるものではありませんので、収益は非課税です。
しかし収益活動にあたる部分は税申告の必要がありますので、税務調査の対象になる可能性があります。
宗教活動と収益活動のボーダーラインは線引きが難しく、悪気なく申告漏れを指摘されてしまうという事例もありました。
いくら正しく申告しているつもりでも、税務署に指摘される可能性があるのです。
正しく税申告をし、不正を疑われないようにするためには、税理士をつけるのが得策です。
税理士は税金のプロですので、宗教法人の経費に関するご相談もお任せください。
税理士に税申告を依頼すると、本来注力すべき活動に尽力できるようになります。
税金に関するお悩みは、是非税理士にご相談ください。
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