2025.01.15
  • 税務調査

税務調査には種類があるって本当?強制調査と任意調査の違いなどをご紹介

読了目安時間:約 6分

税務調査とは、国税局や税務署が実施する納税状況に関する調査です。納税の義務がある法人や個人は、誰でも税務調査の対象になる可能性があります。しかし、税務調査には強制調査と任意調査も含め、いくつかの種類があることをご存じでしょうか。

税務調査と聞くと、正しく納税をしている場合でも、何か誤りを指摘されるのではと不安になるケースも少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、税務調査時にも焦らずに対応できるよう、税務調査の種類や調査ごとの違いなどについてご説明します。

 

税務調査の種類

税務調査は、大きく区分すると「強制調査」と「任意調査」の2種類に分けられます。それぞれの違いは次の通りです。

 

強制調査

強制調査とは、国税局査察部によって実施される税務調査です。国税局査察部は、いわゆる「マルサ」として知られる組織であり、強制調査は、裁判所の令状をもとに強制的な調査が行われます。強制調査が実施される際には、納税者に対し、事前の通知が行われるわけではありません。ある日、調査官が訪れ、準備する間もなく関係資料の徴収が一斉に行われる調査が強制調査です。また、事務所や事業所だけでなく、取引先や取引先銀行、経営者の自宅などでも調査が行われるケースもあります。

強制調査の対象となるのは、多額の申告漏れや海外資産の申告漏れなど、脱税が疑われるケース、仮装・隠蔽などによる虚偽申告によって故意に税金の支払いを逃れようとしているケースなどです。

 

強制調査は調査終了後、脱税の証拠を収集し、刑事事件として立件することを見据えて行われる税務調査です。調査期間は短くても1ヶ月程度といわれており、調査すべき事項が多い場合にはさらに長い期間の調査が行われ、調査期間が1年以上に及ぶケースもあります。

証拠が揃うと、検察官に対して告発がなされ、刑事事件として検察官による捜査が実施され、裁判に訴えられることとなります。

 

裁判によって有罪が決定すれば、重加算税と呼ばれる最も重い税率の加算税が課されるだけでなく、刑事罰も科されることになります。脱税の刑事罰は、10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科です。また、罰金の額は脱税額を限度として増額される場合があるほか、脱税をしたということが発覚すれば、取引先からの信頼も失墜し、社会的な信用も大きく損なうことになるでしょう。

強制調査は、税務調査の1つの種類ではありますが、脱税と呼ばれる犯罪行為を疑われる場合に実施される調査であり、これからご説明する任意調査に比べると、調査の影響には非常に大きな違いがあります。

 

任意調査

任意調査とは、税務署の調査官によって実施される税務調査です。税務署の法人課税部門が法人に対して実施し、法人税や消費税などに関する調査、資産課税部門が個人に対して実施する贈与税や相続税に関する調査、個人課税部門が個人事業主に対して実施する所得税や消費税に関する調査などが任意調査では行われます。

任意調査は、納税者の協力のもと、納税者の同意を得たうえで実施される税務調査であるため、事前に通知がなされるケースがほとんどです。事前通知の際には、納税者や代理人である税理士が立ち会える日程に調整することができます。

また、事前通知から調査実施日まで時間を置くことできるため、その間に調査に必要な書類の準備を行うことも可能です。オフィスや事業所などを突然訪れても、担当者が不在で詳しい話を聞けないケースや、書類の保管場所が分からずにスムーズに税務調査を実施できないケースもあります。そのため、円滑に調査を進められるよう、任意調査では事前通知を行い、日程などを調整したうえで調査を進めるケースが多くなっているのです。

 

任意調査という名前が付きますが、任意調査も強制調査と同様に、納税者の意向で調査を拒否することはできません。税務調査の調査官には、納税者に対して帳簿や納税状況などに対する質問や調査を行う権利が与えられており、納税者はその権利に従う義務があるのです。万が一、調査官の求めに応じて帳簿を提出しなかった場合や質問に対して偽りの回答をした場合には、罰則が科せられます。したがって、任意調査であっても調査自体を断ることはできません。ただし、強制調査とは異なり、任意調査の場合は調査日時などを調整することができ、納税者の事情も考慮したうえで調査が実施されることになります。

任意調査においても、必要な帳簿や書類などのチェックが行われ、正しく税金が納められているか、申告内容に誤りがないかが調査されます。調査の結果、申告内容に誤りがあり、納税額が不足していた場合には、無申告加算税や過少申告加算税、不納付加算税、延滞税などの加算税の納付が求められることになります。

 

税務調査の1つ、任意調査の種類

任意調査は、納税者の同意を得たうえで実施される税務調査ですが、任意調査は、その内容によってさらにいくつかの種類に細かく区分することができます。

 

予告調査と無予告調査

まず、任意調査であっても、事前通知によって調査を実施する日時が通知されたうえで、予定されていた日時に調査が行われるケースと、事前通知が行われず突然調査が行われるケースの2種類があります。事前通知が行われるケースを予告調査、事前通知なしで行われるケースを無予告調査といいます。

無予告調査は、事前通知を行うことで信憑書類などの隠蔽や帳簿の仮装などが行われる可能性があり、正しく税務調査を実施できない恐れがある場合に実施されるものです。飲食店など、現金商売を主にしており、調査日時を指定することで、事前に売上などの操作が行われやすいケースなどが無予告調査の対象になるケースとして知られています。

 

準備(内部)調査と実地調査

準備(内部)調査とは、税務調査の対象となる納税者を選別するために行う調査のことです。税務調査は、納税の義務がある法人や個人であれば、誰でも調査の対象になり得えます。しかし、税務調査は公正な納税を推進する目的で実施されるものであり、不正に納税を怠っている納税者を正すために実施される調査です。したがって、正しく納税を行っている納税者を対象に税務調査を実施しても、効率よく不正を正すことはできません。そのため、事前に準備調査を行い、税務調査を実施すべきかどうかを調査するのです。

準備調査では、納税者が提出している申告書の内容や税務署が収集した情報などを照会します。また、必要に応じて調査対象となる事業者の事業状況を調査する外観調査や内観調査などが行われます。無予告調査の対象となる飲食店などでは、調査官が客を装って、営業の実態を調査する内観調査が行われるケースも少なくありません。準備調査は、実地調査を実施すべきかどうかを判断する調査でもありますが、準備調査によって実地調査時に重点的に調べるべき項目を明確にする目的もあります。

また、実地調査とは、実際に調査官がオフィスや事業所を訪問して、帳簿などの確認を行う調査のことです。

 

実地調査の種類

実地調査は、調査法などによっていくつかの種類に分けられます。

 

現況調査(無予告調査)

現況調査とは、前述のように事前通知がなされず、抜き打ちで実施される税務調査のことです。ただし、強制調査のように有無を言わせず、調査官が帳簿を徴収することはありません。現況調査も任意調査の1つの種類であり、税理士の立ち合える日時に調査を依頼することも可能です。

しかしながら、現況調査が実地される際には、内観調査や外観調査などが実施されているケースも少なくないため、調査官は立地条件や客席の数、客単価などを事前に把握している可能性があります。帳簿書類などに虚偽を記載している場合などは、現況調査時に不備を指摘される可能性が高くなるでしょう。

 

一般調査

事前通知が行われ、事前通知で伝えられた日時に行われる一般的な税務調査を一般調査といいます。一般調査では、帳簿や信憑書類などの確認、業務内容や業績、申告内容、帳簿に関する質問などが行われます。

 

総合調査

特官と呼ばれる特別国税調査官によって実施される税務調査です。経営陣が親族などで構成される同族法人の法人税や経営陣の所得税、贈与税、相続税などを総合的に検証する税務調査を総合調査といいます。

前述のように、税務調査は法人課税部門、個人課税部門といったように、異なる管轄で実施されており、税の種類ごとに縦割りの調査が行われます。しかし、同族法人の場合は、法人と個人にまつわる税金を横断的に調べる必要があるため、一般調査ではなく、総合調査が行われるケースが多くなっているのです。

 

特別調査

一般調査だけでは調査を十分に行うことができないと判断された場合に実施される調査です。特別調査は、事前通知なしで実施されることが多くなっています。

特別調査の対象となるのは、準備調査によって多額の不正が疑われる場合などです。また、事業規模が大きく大規模な調査が必要となるグループを持つ企業などに対して税務調査が行われる際にも、特別調査が実施されることが多くなります。特別調査では、事前通知により証拠の隠滅などが実施されることがないように、事前通知をせずに税務調査を実施するケースが多くなっているのです。

特別調査は、税務署の調査官のほかに特別国税調査官も調査に加わり、一般調査よりも綿密な調査が実施されることが多くなります。そのため、一般調査よりも調査期間が長引くケースが多く、長い場合には調査終了までに1ヶ月程度の時間がかかるケースもあります。

 

その他の税務調査の種類

調査官がオフィスや事業所を訪れ、帳簿などの確認を行う実地調査にもいくつかの種類があることをご説明しましたが、そのほかにもいくつかの税務調査の種類があります。

 

簡易的な接触

簡易的な接触とは、実地調査のように調査官が現地を訪れるのではなく、電話や郵便などによって申告内容を調査する簡易的な税務調査のことです。軽微なミスなど、特定の部分のみを確認したい場合などは、実地調査を行わずに電話や郵便で調査を済ませるケースなどが該当します。

また、納税者に対し必要な資料を持参し、税務署への来署を求める場合もあります。その場合、対面式で直接質問をしながら申告内容の確認がなされ、自発的に申告内容の修正を求められるケースがほとんどです。

コロナ禍では、人と接触する機会を避ける必要があったため、実地調査ではなく、簡易的な接触が増加しました。しかし、コロナが落ち着いた現在でも、簡易的な接触は効率的な方法として実施されており、その数は増加しています。簡易的な接触であっても、税務署からの通知を無視し、適切に対応しない場合は、実地調査に切り替えられ、修正申告を求められる可能性があります。税務署から問い合わせがあった場合には、適切な対応を行うようにしましょう。

 

反面調査

反面調査とは、税務調査の対象者ではなく、税務調査の対象となる納税者と何らかの関わりを持つ者に対して実施される調査です。具体的には取引先企業や取引先の銀行、経営者の自宅などを対象にして行われる調査を反面調査といいます。

実地調査によって十分な結果が得られなかった場合や、実地調査時に納税者が適切な対応を行わなかった場合、関連する事業者などを調査し、不正の内容を裏付けるために実施されます。反面調査は、電話などで取引内容についての照会を行うケースもありますが、調査官が現地を訪れて関連書類の提示を求め、調査が実施されるケースもあります。また、反面調査は事前通知なく実施されるケースがほとんどであるため、反面調査が入れば、取引先からの信頼は失墜する可能性があるでしょう。

反面調査を避けるためには、普段から正しく申告を行うとともに、税務調査の際には調査官の求めに応じ、帳簿書類などを隠さずに提出し、質問には的確に対応することが大切です。

 

まとめ

税務調査の種類についてご説明してきましたが、税務調査は、税務調査を税務署の調査官によって実施される任意調査と国税局査察部によって調査が実施される強制調査の2種類があります。また、任意調査もいくつかの種類に分けることができます。最も多く実施されている税務調査は一般調査ですが、不正が疑われる場合などには特別調査、同族法人の不正が疑われる場合には総合調査など、より厳しい調査が実施されるケースもあります。

いずれの場合も正しく申告を行っていれば、調査によって不備を指摘される心配はありません。しかし、申告してきた内容に何らかの不安を抱いている場合などには、早めに税理士に相談し、追徴課税のリスクをできるだけ抑えるようにしましょう。

 


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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