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通勤手当の非課税枠が税務調査で指摘されるケースとは?注意点を解説

読了目安時間:約 6分
通勤手当が税務調査で問題になることはあるのでしょうか。どのようなケースが指摘されやすいのか、通勤手当の課税・非課税の線引きや、法改正後の注意点なども確認しておくことが大切です。
この記事では、通勤手当が税務調査で指摘されやすいケースや会計処理の注意点などについてわかりやすく解説しています。電車通勤だけでなく、マイカー通勤や旅費交通費との違いなどについても紹介していますので、税務調査対策や通勤手当の基本的なルールを理解する際の参考としてお役立てください。
通勤手当の定義と課税・非課税の考え方
まずは、通勤手当の定義と課税・非課税の考え方について確認していきましょう。
通勤手当とは
通勤手当とは、従業員が自宅から勤務先まで通勤するのにかかった費用を会社が手当として支給するもので、会社の福利厚生の1つとされます。通勤手当の従業員への支払い義務はなく、支給方法や条件などについては会社の規定によって決めることができます。一般的には、毎月の給与と一緒に支給されることが多いでしょう。
通勤手当と交通費の違い
交通費は従業員が通勤以外に仕事で移動した際にかかった費用のことをさし「旅費交通費」とも呼ばれます。通勤手当も旅費交通費に含まれますが、従業員の自宅から勤務先へ通勤するための費用である点が他の旅費交通費とは異なります。
通勤手当以外の旅費交通費の例としては、本支店への出張や得意先回りのほか、展示会などのイベント出展や納品、仕入などで移動した際の交通費などが挙げられます。
旅費交通費は従業員が一時的に立て替え、後で明細を提出して精算する形式が一般的です。
通勤手当と交通費の課税・非課税の考え方
原則として、交通費(旅費交通費)については経費扱いとなるため、所得税の課税対象とはなりません。
通勤手当についても非課税と認識している方が多いかもしれませんが、通勤手当の非課税には限度額があり、限度額を超えた分については課税対象となります。通勤手当の限度額は「公共交通機関の使用」「マイカー通勤」など、交通手段によって異なります。
【通勤方法別】通勤手当の非課税限度額
通勤手当の非課税限度額について、公共交通機関の使用やマイカー通勤など、通勤方法別に解説します(※2025年2月現在)。
電車、バスなどの公共交通機関を利用
電車やバスなど、公共交通機関を利用して通勤する場合、1か月あたりの非課税限度額は150,000円です。
国税庁のホームページでは、以下のように記載されています。
- 交通機関または有料道路を利用している人に支給する通勤手当
1か月あたりの合理的な運賃等の額(最高限度150,000円)
引用:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
https://www.nta.go.jp/users/gensen/tsukin/index2.htm
「合理的な運賃等の額」とは、勤務先までの通勤手段としてもっとも効率がよく、経済的といえる手段を選択した場合の運賃等の額と言い換えることができます。
公共交通機関から効率的かつ経済的な通勤手段を選んで利用した場合、1か月あたりの通勤手当が150,000円を超えることは多くないため「通勤手当は非課税」と思っている方が多いかもしれません。
もし飛行機や新幹線利用などで1か月の通勤手当が150,000円を超えた場合は、超えた分の通勤手当が課税対象となります。
切符や回数券を使用した場合も定期券を利用した場合も、1か月あたりの非課税限度額は同じです。
マイカー、バイクなどを利用
マイカーやバイクなど、公共の交通機関以外の手段(交通用具)を使用して通勤する場合は、勤務先までの距離に応じて以下のように非課税限度額がさだめられています。
非課税枠となる通勤距離(片道)
55km以上~:31,600円
45km以上~55km未満:28,000円
35km以上~45km未満:24,400円
25km以上~35km未満:18,700円
15km以上~25km未満:12,900円
10km以上~15km未満:7,100円
2km以上~10km未満:4,200円
2km未満:全額課税
なお、マイカーやバイクなどで通勤時に有料道路を利用する場合、片道の移動にかかる距離に応じた限度額と有料道路使用料を合計し、最高限度額150,000円までが1か月あたりの非課税限度額となります。
公共交通機関と交通用具を併用利用
公共交通機関と交通用具を併用している場合、片道の移動にかかる距離に応じた限度額と交通機関利用時の交通費を合計し、最高限度額150,000円までが1か月あたりの非課税限度額となります。
通勤手当や交通費が税務調査で指摘されるケースとは
通勤手当や旅費交通費については、上記の非課税限度額や1か月あたりの通勤手当の出し方などを理解した上で、正しく管理していれば、税務調査で指摘されることはありません。
ただし、勝手な解釈や思い込みなどから、以下のように通勤手当や旅費交通費について間違った会計処理を行っている場合、税務調査で指摘される可能性があるため注意が必要です。
給与の一部を通勤手当として支給している
1か月あたりの通勤手当に非課税限度額があることを利用して、給与の一部を通勤手当として支給した場合、税務調査で発覚すれば課税対象となります。
通勤手当は経済的で合理的な運賃の額である必要があるため、適当な額を通勤手当に計上したり、本来公共の交通機関などを利用した場合にかかる交通費を超えて支給したりしている場合、非課税と認められない可能性が高いでしょう。
課税対象にもかかわらず非課税で処理している
課税対象であるにもかかわらず、非課税で処理している通勤手当や交通費がある場合も注意が必要です。
例えば、マイカー通勤の従業員が勤務先から2km未満の場所から通勤している場合、交通費は全額課税対象となります。この従業員へ毎月2万円を交通費として支給していた場合、源泉所得税の課税対象とされてしまいます。
通勤手当や交通費として認められない費用を非課税にしている
出張などで公共交通機関を利用した場合、乗車券や特急券については交通費として認められますが、新幹線のグリーン車料金や飛行機のファーストクラス利用などは合理的な運賃に該当しないとみなされ、交通費として認められない可能性があります。
グリーン車料金やファーストクラスの料金も経費計上している場合、税務調査で発覚すれば経費と認めてもらえず、個人の場合は所得税の課税対象となります。
プライベートの交通費を経費として計上している
プライベートの旅行や外出、宿泊などを交通費として計上していないかどうかは、税務調査でチェックされやすいポイントの1つです。
プライベートの交通費を経費に計上していたことが税務調査で発覚した場合も経費とは認められず、追徴課税の対象となる可能性が高いでしょう。
同業他社と比較して交通費の計上額が大き過ぎる
同業他社や同規模の会社と比較して、交通費計上の額が大き過ぎる場合も、税務調査で指摘を受けやすいでしょう。
例えば、同業のA社では旅費交通費の宿泊費が1泊1万円前後であるのに対し、B社では10万円も計上していた場合には、合理的な額とは認められない可能性が高いでしょう。
税務調査では、こうした会計処理が行われていないかについて確認される可能性が高く、発覚すれば全従業員の交通費について何年も前まで遡って課税されるだけでなく、延滞税や加算税などのペナルティ対象にもなってしまうため注意が必要です。
交通費の管理をずさんにしている
通勤手当を丼勘定で支給している、通勤手当の範囲内での移動にかかる運賃を別途精算している、消費税込みの運賃に消費税を二重計上しているなど、交通費の会計管理をずさんにしている場合、税務調査の手が厳しくなったり、ほかにもいい加減な申告をしているのではないかと疑われたりする原因となる可能性があります。
通勤手当や交通費について取るべき対策
通勤手当や旅費交通費について、税務調査で指摘されないようにするために押さえておくべき対策について解説します。
交通費の非課税限度額に関する税法を把握する
通勤手当や旅費交通費の非課税限度額や課税対象となるケースなど、最新の税法について把握した上で、適正な金額や勘定科目で会計処理を行うことが大切です。
交通費に限らず、どの科目においても改正の有無など最新の情報をチェックし、知識をアップデートして申告、納税するようにしましょう。
適正な会計処理ができているかを確認する
例えば、タクシーやリムジンなどを従業員、役員の交通費ではなく、取引先の送迎を目的として利用した場合、勘定科目は旅費交通費ではなく接待交際費となります。また、社内のイベントや社員旅行などで発生した交通費は福利厚生費として計上します。
不正やミスのリスクを抑えるためにも、他の経費とするべき交通費を旅費交通費としていないか、日頃から確認しておくようにしましょう。
明細や領収書はしっかりと管理をする
旅費交通費や通勤手当はレシートが出ないケースも多いため、税務調査でなぜこれだけの額の交通費が必要だったかを確認できる資料が少ない場合、疑いを晴らすことができない可能性が高まってしまいます。
通勤手当は片道の交通費詳細をプリントしておき、領収書が出るものは保管するようにします。従業員が立て替えて後日精算する場合は、精算書に交通費の詳細を記入したものをレシートと共に提出してもらい、証拠書類として保管するようにしましょう。
従業員に精算書を提出してもらう際は「行き先」「支払先」「目的」などが明確になるよう記載を促すことも大切です。所定のフォーマットなどを利用して、詳細が記録できるものを利用することをおすすめします。
旅費規程をさだめておく
旅費交通費を計上する際、豪華なホテルやグリーン車、リムジンの利用などが安易に経費とされないよう、旅費規程をさだめておくことも大切です。
「宿泊する際は1日あたり1万円までなら経費として計上できる」「会社役員が出張する際のグリーン車利用は経費にできる」など、旅費規程でさだめた内容に基づいて経費計上していれば、税務調査でも問題視されにくくなります。
旅費規程は社内で共有し、旅費交通費の精算書作成の際にも規定に基づいて記載するようにします。定期券の区間内での得意先回りについては控除するなど、透明性の高い規定にすることで、税務調査でも経理がしっかりしている印象を持たれやすくなるでしょう。
通勤手当や交通費の処理について専門家からアドバイスを受ける
通勤手当や旅費交通費の計上方法、旅費規程の見直しなど、正しい内容で管理できているか不安な場合は、税理士などの専門家からアドバイスを受けるのも1つの方法です。
法改正後の税法にアップデートできているか、思い込みや間違った解釈で記帳していないかなど、素人では気づきにくいポイントも多いものです。税務調査がやって来てから後悔する前に、信頼できる専門家へ相談してみることをおすすめします。
交通費や通勤手当に関する税務調査が不安場合は税理士法人松本へご相談を
「通勤手当や交通費の計上に不安がある」「税務調査で追徴課税になるのでは」といった不安がある場合は、一度税理士法人松本へご相談ください。
税理士法人松本には、国税OBや元税務署長の税理士が10名以上在籍しており、税務調査対策に全力で対応しています。旅費規程の見直しや、適正な節税対策に関するアドバイスなどもお任せください。
税務署から調査がある旨の連絡が入ってからの相談や、追徴課税に強い不安があるといった内容も、気にせずお気軽にご相談ください。
ご連絡は全国どこでも、ご相談予約はフリーダイヤルまたは専用フォーム、LINEなどからお問い合わせいただけます。
まとめ
通勤手当は旅費交通費に含まれ原則として非課税となりますが、非課税限度額を超えている場合には、超えた部分は課税対象となるため注意が必要です。
通勤手当が非課税だからといって合理的とはいえない額を計上したり、プライベートの交通費を経費にしたりした場合、税務調査で発覚すれば追徴課税の対象となる可能性があります。
不正や意図的な脱税を疑われないためにも、領収書や目的などの詳細は明確にしておき、専門家のアドバイスなども参考にして、透明性の高い会計処理を行うようにしましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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