2025.03.16
  • 税務調査

無申告だと青色申告できなくなるって本当?取り消し理由を解説

読了目安時間:約 6分

無申告にしていると、青色申告ができなくなる可能性があるのでしょうか。確定申告する際に青色申告が使えると、さまざまな特典を受けることができます。青色申告が取り消しとなってしまう理由を知っておくことで、取り消しのリスクを回避できる場合があります。

本記事では、青色申告が取り消しになるケースや取り消しになった場合のリスク、無申告が青色申告に与える影響などについて解説しています。

 

そもそも青色申告って?

まずは、青色申告の概要について改めて確認しましょう。

 

確定申告の種類の1つ

青色申告とは、2種類ある確定申告の方法の1つで、一定の要件に該当する納税者が、事前に届出を行うことで選択できる方法です。青色申告が選べない場合は、白色申告で確定申告することとなります。

 

青色申告と白色申告との違いは?

青色申告と白色申告の主な違いは以下の通りです。

 

青色申告:個人事業主やフリーランスの場合、申告しようとする年の3月15日までに、開業届と青色申告承認申請書を税務署へ提出する必要があります。確定申告書類と複式簿記で記帳した決算書類の提出が必要ですが、最大で65万円の特別控除や最長3年まで損失の繰越、損益通算などが可能で、生計を同じにしている家族の給与を「青色事業専従者給与」として経費にできるなど、さまざまな特典を受けることができます。

 

白色申告:事前届出せずに選択することが可能で、雑所得など青色申告が選べない場合や、青色申告の事前届出を行っていない場合などに選べる申告方法です。単式簿記による記帳が可能で、申告時には収支内訳書の添付が必要となります。

損益通算は可能ですが、損失の繰越や特別控除などは受けることができません。家族への給与は「事業専従者控除」として経費にすることができますが、青色申告と比較すると控除できる額は小さくなります。

 

「青色申告は手間と時間がかかるが、白色申告は書類がシンプルで手間がかからない」と言われがちですが、実際には収支内訳書などの提出が必要となるため、そこまで大きい労力の差はありません。そのため、少し手続きが複雑でも、青色申告を利用した方がメリットは大きいといえるでしょう。

 

青色申告を使える条件

以下の要件に該当する場合は、青色申告を使うことができます。

 

・事前の届出を行っている

上記でも解説の通り、青色申告には事前の届出が必要です。例えば、2025年に青色申告したい場合は、2024年の3月15日までに届出を済ませておく必要があります。

 

・事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかがある

青色申告が使えるのは、事業所得または不動産所得、山林所得のいずれかとなります。給与所得や雑所得、配当所得のみでは青色申告することはできませんが、事業所得と給与所得がある場合には、青色申告が可能です。

サラリーマンが副業で青色申告をしたい場合、事業所得と認められるかどうかがポイントとなります。自身のケースで青色申告可能か判断がつかない場合は、1度税理士などの専門家へ相談してみてもよいでしょう。

 

青色申告の特別控除の種類

青色申告は、一定の要件を満たすことで10万円、55万円、65万円のいずれかの特別控除を受けることができます。それぞれの要件は以下のようになります。

 

65万円:事業所得または一定以上の規模の山林所得または不動産所得があり、取引を複式簿記かつ現金主義によらない記帳を行い、貸借対照表と損益計算書を添付し、期限までにe-taxで確定申告した場合

 

55万円:65万円控除の条件のうち、e-taxによらない方法で確定申告した場合

 

10万円:65万円と55万円の要件に該当しない場合

 

例えば、不動産所得や山林所得が一定の規模を満たしていないとみなされる場合、特別控除は10万円となります。すべての条件を満たしていても、e-taxで確定申告するか、総勘定元帳などを電子帳簿保存法が定める方法で保存していない場合は55万円の特別控除となります。

 

青色申告が取り消されるケースはある?

さまざまなメリットの多い青色申告ですが、期限までに承認申請の届出を出していても、後日取り消されるケースはあるのでしょうか。その場合の理由についても見ていきましょう。

 

青色申告が取り消されるケースはある

結論から言うと、せっかく届出を行って青色申告しても、取り消されてしまうケースはあります。青色申告の取り消し理由は、個人の場合と法人の場合とでは異なります。

 

個人が青色申告を取り消されるケース

個人事業主やフリーランスが青色申告を取り消されるケースは次の通りです。

 

・帳簿や決算、入出金に関する書類などが正しく保管や記録されていない

青色申告で特別控除を受けるためには、複式簿記で帳簿を作成する必要があります。また、確定申告に関わる書類は、種類に応じて5~7年保管することが法律で義務付けられています。

青色申告の要件を守って帳簿を作成、保管していることが確認できない場合、青色申告を取り消される可能性があるのです。

 

・帳簿の改ざんや偽装など、悪質性が認められる

帳簿と領収書や請求書の額に相違がある、計上されている金額が間違っていた場合に、故意に改ざんや偽装を行ったなど悪質性があるとみなされた場合にも、青色申告を取り消される可能性が高いでしょう。

 

・税務調査などで書類の提出を求められたにも関わらず拒否をした

税務調査で帳簿や書類などを提出するように求められた際に、これを拒否すると故意の隠ぺいや、調査の妨害などを疑われる可能性があり、青色申告の取り消し対象となってしまいます。

 

参照:国税庁「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-3/01.htm

 

法人が青色申告を取り消されるケース

法人が法人税の青色申告を取り消されるケースは個人よりも厳しく、上記で挙げた3つのケースに加えて、以下の場合にも取り消しの対象となることが法人税法で定められています。

 

・無申告にしていた

法人が2期連続で確定申告をしなかった場合、2期目以降は青色申告が取り消し対象となってしまいます。

 

・申告期限を過ぎてから申告した

無申告だけでなく、2期連続で申告期限を過ぎてから申告した場合も、青色申告取り消しの対象となります。

 

参照:国税庁「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm

 

自主的に青色申告を取り消すこともできる

なお、上記のような理由だけでなく、自主的に青色申告を取りやめることも可能です。「青色申告するつもりだったが、記帳方法などの準備が間に合わない」「白色申告でも構わない」と判断した場合には、青色申告承認申請書を提出していても、白色申告を選択することが可能です。

今後青色申告をする予定がない場合は、税務署へ「青色申告の取りやめ届出書」を提出することで、青色申告を自主的に取り消すことが可能です。取りやめの届出を行った場合、その後1年間は青色申告を選ぶことができなくなる点は留意しておきましょう。

 

参照:国税庁「A1-10 所得税の青色申告の取りやめ手続」

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/23200008.htm

 

青色申告が取り消されたらどうなる?

自主的に取りやめる場合を除き、青色申告が取り消し対象となるのは、税務調査で取り消し対象とみなされたケースであるのが一般的です。過去の申告について青色申告が取り消しとなった場合にどうなるのかについて解説します。

 

特別控除が認められなくなる

青色申告の取り消し対象となった年度について、10万円から65万円までの特別控除が認められなくなってしまいます。

 

損失の繰越ができなくなる

青色申告では可能な最長3年(法人は10年)の損失繰越も、青色申告が取り消しとなった場合は認められなくなります。

 

青色専従者給与が使えなくなる

生計を同じにする親族の給与を経費計上できる「青色専従者給与」の制度も、青色申告でのみ認められているため、取り消しとなれば使えなくなります。

 

特別償却や損金算入などが使えなくなる

一定以上の固定資産を取得した場合に受けられる特別償却や税額控除、30万円未満の固定資産を一括で経費処理できる制度なども青色申告でのみ認められているため、取り消しとなれば使えなくなります。

 

上記で挙げた青色申告の優遇措置が認められなくなることで、控除額や損金算入できなくなった分税額が増えることとなります。税務調査では3年から5年、最大で7年前まで調査対象とされる可能性があります。

何年分も遡って青色申告が認められなくなった場合、税額が増えるだけでなく、延滞税や過少申告加算税など、追徴課税の対象にもなるため注意が必要です。

 

青色申告の取り消しへの対処法

青色申告の取り消しへの対処法や、取り消しを回避するための対策などについて解説します。

 

再び青色申告を利用するには

青色申告が取り消しになった場合、その後1年間は青色申告することができなくなります。1年経過後は、再び青色申告承認申請書を税務署へ提出することで、青色申告を選べるようになります。

 

無申告にしない

法人の場合は、無申告や期限後申告は青色申告取り消しの対象となります。個人の場合は無申告にしていても青色申告取り消しの対象にはなりませんが、無申告状態であることで税務調査にあう可能性が高くなります。

税務調査で無申告を指摘された場合も、追徴課税やペナルティの対象となるため、毎年期限を守って申告することが大切です。

 

書類や帳簿は複式簿記で記帳し、法定年数分は保管しておく

複式簿記で記帳し、総勘定元帳や仕訳帳などを作成することは、青色申告する際の要件の1つとなっています。税務調査で書類の提出を求められたときに出せないと、隠ぺいや改ざんなどを疑われる可能性もあります。

書類の保管期間として定められている通り、7年分は整理して見やすい形で保管しておくようにしましょう。

 

計上漏れや計算間違いをしない

記帳漏れや勘定科目の間違い、単純な計算ミスなども、頻発していると「わざと間違えているのではないか」と疑われる原因となったり、ずさんな会計管理をしているとみなされ、調査の手が厳しくなったりする可能性があります。

悪質性が高いとみなされると、青色申告の取り消しだけでなく、重加算税や刑事罰の対象となる場合もあります。

「この記帳方法で合っているか」「申告内容に問題がないか」といった点に不安が残る場合は、税理士へ相談してみることをおすすめします。

 

税務調査対応に強い税理士へサポートを依頼する

青色申告の取り消しや追徴課税、ペナルティなどは、税務調査で指摘された場合に対象となります。

税務調査で調査官の質問に対して適正な対応ができれば、青色申告の取り消しや追徴課税を受けずに済む可能性もあります。

1人で悩みを抱えている場合は、税務調査への対応実績が豊富な税理士のサポートも検討してみましょう。

 

無申告や青色申告についてお悩みの場合は税理士法人松本へご相談を

「青色申告の取り消しに合わないか不安」「実は無申告にしている期間がある」など、無申告や税務調査、青色申告に関する不安や悩みをお持ちの場合は、1度税理士法人松本へご相談ください。

税理士法人松本には、国税OBや元税務署長の税理士が10名以上在籍しており、税務調査対策に全力で対応しています。追徴課税ゼロの実績も多数あり、お客様からも多くの喜びの声をいただいています。

税務署から調査がある旨の連絡が入ってからの相談や、期限後の申告といった内容も、お気軽にご相談いただけます。

ご連絡は全国どこでも、ご相談予約はフリーダイヤルまたは専用フォーム、LINEなどからお気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

青色申告ではさまざまな優遇措置が受けられますが、青色申告の要件を守っていない場合には、過去の青色申告を取り消される可能性があります。法人の場合は無申告や期限後の申告も青色申告取り消しの対象となるため、期限を守って適正な内容で申告と納税を行うことが大切となります。税務調査で疑われることのないように、書類は揃えて保管しておくといった対策のほか、不安な場合は税理士のサポートも検討することで、青色申告のメリットを継続して受けられるようにしましょう。

 

免責事項

当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上

  • 現在、税務調査が入っているので困っている
  • 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
  • 税務調査に強い税理士に変更したい
  • 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
といったお悩みを抱えている方は、まずは初回電話無料相談をご利用ください。
税務調査の専門家が対応させていただきます。

税理士法人松本の強み

  • 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
  • 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
  • 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
  • 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断

あわせて読みたい記事

税務調査ブログをもっと見る

税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!

税務調査お悩み解決しませんか?
いますぐ電話1本で相談できます!

専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。
初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。

税理士法人松本代表税理士 松本 崇宏

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断