2025.03.22
  • 税務調査

税務調査の前に総勘定元帳はすべて印刷が必要?電子帳簿保存法とは

読了目安時間:約 6分

税務調査を受ける際、総勘定元帳などの帳簿はすべて印刷しなければならないのでしょうか。帳簿や申告書類の提出を求められた場合に、印刷していないとペナルティがあるのか、印刷した書類が膨大で保管場所に困る、という方も多いのではないでしょうか。

本記事では、税務調査の際に帳簿や決算書類はどこまで印刷する必要があるのかについて解説しています。2024年1月より義務化された電子帳簿保存法の概要についても紹介していますので、書類やデータの保存方法を知りたい際の参考としてお役立てください。

 

総勘定元帳はどこまで印刷すればいいの?

まずは、税務調査の前に総勘定元帳をどこまで印刷する必要があるかについて見ていきましょう。

 

総勘定元帳をすべて印刷する必要はない

確定申告が終わった際に「後で印刷しよう」と思ってそのままになっている帳簿があっても、すぐにすべてを印刷して保管する必要はありません。

昔ながらの税理士事務所などへ顧問を依頼している場合、総勘定元帳は毎期すべてを印刷して製本し、分厚い束になって送られてくることもあります。

決算や申告に関する書類は5~7年の保管義務があるため、分厚い総勘定元帳が何冊もあると、保管場所に困るケースもあるでしょう。

「税務調査が来た時に総勘定元帳をすべて印刷していないとよい印象を持たれない」「インデックスで色分けして見やすくしていないといけない」というイメージを持たれるかもしれませんが、事前に印刷していなくても、それだけで指摘の対象になることはないと考えてよいでしょう。

 

PDFなどのデータがあれば問題ない

すべての書類は紙ベースで保管するのが原則となっていますが、電子データに変換されたものを、再び紙に印刷し直すのは非効率となってしまいます。

総勘定元帳は印刷した紙がなくても、PDFなどのデータを残してあり、パソコンなどデータが閲覧できる環境があれば問題ないケースが多いのです。

近年では働き方改革の一環としてペーパーレス化が推進され、紙の書類を保管するスペースを削減しているところも少なくないでしょう。

印刷しなくてよいか不安な場合は、税務調査の連絡があった際に総勘定元帳の印刷が必要かを確認し、必要な期の元帳だけを印刷してもよいでしょう。

プリンターや紙質、保管状況によっては、早期に印刷した場合経年劣化が起こる可能性もあります。

次に解説する電子帳簿保存法の概要を把握することで、印刷が不要な書類はファイリングや管理の手間を省力することが可能です。

 

電子帳簿保存法とは

総勘定元帳の印刷が必ずしも必要でない理由の1つに、電子帳簿保存法が挙げられます。ここでは、知っているようで知らない電子帳簿保存法の概要について解説します。

 

電子データの保存についてさだめた法律

電子帳簿保存法とは、一定の要件を満たしている書類について、紙でなく電子形式で保存するようさだめた法律のことです。

電子帳簿保存法は1998年の施行以降改定を重ね、2025年3月現在では、2024年1月1日の施行が最新となっています。

最新の電子帳簿保存法では、3つの区分について以下のようにさだめられています。

 

・電子帳簿等保存

総勘定元帳などの国税関係帳簿について、自身の会社や事業において一貫して電子データで保存する場合に、一定要件を満たすことで電子データによる保存が可能となりました。

国税関係帳簿書類に該当する例としては、総勘定元帳や貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類が挙げられます。

 

・スキャナ保存制度

紙で発行したり、受け取ったりした書類について、一定の要件を満たすことでスキャナによる保存が認められる制度です。

スキャナ保存できる書類は、自社発行と取引先発行のいずれも該当します。

 

・電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度

クラウドによる共有やEメールへの添付などで受け取った電子データの書類については紙に印刷せず、電子データとして保存することをさだめた制度です。

自社で発行する書類と取引先から受け取った書類のいずれも該当します。

 

電子取引データは2024年1月1日以降義務化に

「電子帳簿等保存」の制度と「スキャナ保存」の制度に関しては任意の対応となっていますが「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」の制度については、2024年1月1日以降は所得税と法人税を申告する事業者に対して義務化されている点に注意が必要です。

 

参照:国税庁「電子帳簿保存法の概要」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/02.htm

 

税務調査前に押さえておきたい総勘定元帳等印刷や書類保存のポイント

2024年1月1日より一部義務化された電子帳簿保存法と、税務調査前に押さえておきたい総勘定元帳やその他書類の印刷に関するポイントについて解説します。

 

総勘定元帳のスキャナ保存はできない

貸借対照表や損益計算書、総勘定元帳といった決算関係書類については、紙に印刷しての保管は任意となっており、電子データと紙のいずれで保管しても問題はありません。

ただし、紙に印刷した決算関係書類のスキャン保存は対象となっていないため、原本や電子データを破棄しないように注意する必要があります。

 

スキャナ保存には一定の要件が必要

請求書や領収書等の書類については、任意でスキャン保存することが可能となっています。ただし、書類を作成または受領してから7営業日以内に保存することや、解像度200dpi相当以上で読み取ること、タイムスタンプの付与といった要件のクリアが必要です。

また、スキャナ保存を始める前に発行した重要書類をスキャナ保存するには、税務署へ事前の届出が必要となります。取引先から紙で受け取った請求書や領収書をスキャナ保存する際には注意しましょう。

 

参照:国税庁「スキャナ保存関係」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/03.htm

 

「優良な帳簿」の保存で過少申告加算税の軽減措置が受けられる

電子帳簿の保存には「優良な帳簿」と「最低限の要求を満たす電子帳簿」のいずれかで保存する必要があります。

優良な電子帳簿を利用すると、過少申告加算税の軽減措置(2022年1月1日以後が申告期限のもの)が受けられたり、個人事業主の場合は青色申告の特別控除額が増えたりするメリットがあります。

優良な電子帳簿による保存をするためには、必要な要件を満たした上で税務署へ事前に届出を行う必要がありますが、e-taxを利用した電子申告を行うことで優良な帳簿とみなされるため、優良な帳簿のメリットを受けたい場合はe-taxの活用がおすすめです。

 

「最低限の要求を満たす電子帳簿」の要件

最低限の要求を満たす電子帳簿による保存の場合は事前の届出は必要なく、以下の要件を満たすことで保存が可能となります。

 

・使用するシステムに関する仕様書等のマニュアルを常備していること

・ディスプレイ画面やパソコンなど、データがいつでも速やかに閲覧できる環境が整っていること

・税務調査の際調査官の求めに応じてダウンロードができること

 

逆に言えば、上記の3点を満たしていない場合、最低限の要求を満たした電子帳簿と認められない可能性がある点に注意が必要です。

 

参照:国税庁「はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_02.pdf

 

電子取引のデータの保存方法に関する注意点

電子取引のデータについては、2024年1月1日以降完全義務化となっており、電子データで請求書や領収書、契約書などをやり取りした場合には、そのデータを保存しておかなければなりません。

自社から取引先へ送ったデータだけでなく、取引先からメール添付やクラウドなどで送られたデータも該当します。これには、データでやり取りした書類に改ざんを加えて紙で保存し、データを削除して追及を免れることを避ける目的があります。

電子取引のデータ保存には、以下の要件を満たす必要があります。

 

・改ざん防止のための措置を取る

・「日付・金額・取引先」で検索できるようにしておく

・ディスプレイやパソコン、プリンターなどを備え付け、いつでも速やかにデータの閲覧やダウンロードが可能な状態にしておく

 

上記についても、要件を満たしていない場合に電子取引データを正しく保存できていないとみなされる可能性があるため注意しましょう。

 

参照:国税庁「電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_01.pdf

 

税務調査で知っておくべき事前の書類保存対策

ここでは、事前に知っておきたい税務調査での書類保存に関する対策について解説します。

 

パソコンは速やかに調査可能なものを1台準備する

税務調査でデータ保存された書類の調査を受ける際、業務で使用するパソコンしかないと、税務調査の間にやるべき業務が滞ってしまいます。また、調査と直接関係のないファイルやフォルダの閲覧を求められたり、あらぬ疑いをかけられたりする原因になるのも避けたいところです。

税務調査の際には、データ確認用のパソコンを準備しておくようにしましょう。閲覧時には速やかに検索や出力、ダウンロードなどができるよう、ネット環境や動作確認もあらかじめしておくことをおすすめします。会計ソフトのライセンス制限があると、せっかく準備したパソコンでソフトの閲覧ができない場合があるため、事前にチェックしておきましょう。

 

記帳代行を依頼している場合はCSVデータの準備も必要

記帳代行などを依頼していて、総勘定元帳をPDFデータのみ受信している場合、検索性の要件を満たしていないとみなされてしまいます。

PDF形式の元帳とは別に「日付・金額・取引先」で検索できるCSV形式のデータも事前に準備しておくようにしましょう。

 

FAXは電子取引にあたらない

電子データでの保存が義務化された電子取引には、以下が該当します。

・Eメール添付、またはクラウドサービスによってやり取りされた請求書や領収書、契約書等

・オンライン上のサイトやスマホアプリ経由で送信、またはダウンロードした請求書や領収書、契約書等

インターネットバンキングなどの電子データ交換(EDI)システムを使用した入出金や利用明細等

 

FAXで受信したデータは電子取引にあたらないため、紙による保存か、スキャナ保存の要件に従ってスキャナ保存することとなります。

 

最新の改定内容をチェックしておく

電子帳簿保存法は時代に応じて細かな改定がなされているため、今後も要件などについて改定が行われる可能性があります。

常に最新の改定内容をチェックするようにしておき、不安な場合はデータ保存やDXについての知識に明るい税理士などへ相談するなどして、サポートを依頼することをおすすめします。

 

税務調査や元帳、書類の保存方法でお悩みの場合は税理士法人松本へご相談を

「総勘定元帳の保管を結局どうしてよいのかわからない」「税務調査でどこを指摘されるのか不安」など、税務調査や決算関係書類の保存方法、過去の申告内容に関する不安がある方は、1度税理士法人松本へご相談ください。

税理士法人松本には、国税OBや元税務署長の税理士が10名以上在籍しており、税務調査対策に全力で対応しています。会社設立や個人事業主、中小規模の企業の税務調査や会計管理サポートなどにも丁寧に対応しており、お客様から多くの喜びの声をいただいています。

税務署から調査がある旨の連絡が入ってからの相談や、期限後の申告といった内容もご相談可能です。

ご連絡は全国どこでも、ご相談予約はフリーダイヤルまたは専用フォーム、LINEなどからお気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

総勘定元帳はすべてを紙に印刷して保存しておく必要はなく、税務調査の連絡があった際に確認してから必要な分を印刷すれば問題ありません。会計ソフトのマニュアルを備え付けておき、速やかに閲覧や検索可能なパソコン、ディスプレイやプリンターなどを設置して、ダウンロードの要請に応えられるようにしておけば、事前の印刷も不要となります。

ただし、決算関係書類の扱いやスキャナ保存など、電子帳簿保存法に関わる内容は細かく改定されるため、最新の内容を常にチェックすることが大切です。税理士などの専門家へ相談するなどして、税務調査対応と共にペーパーレス化、業務デジタル(DX)化の推進も併せて検討していきましょう。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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