2025.03.3
  • 税務調査

体験者の事例から考える税務調査が入りやすい個人事業主の特徴とは

読了目安時間:約 6分

税務調査は、法人だけを対象に行われるものではありません。個人事業主であっても税務調査の対象になるケースはあります。個人事業主として事業を営む人が税務調査の対象に選ばれた場合、個人事業主はたくさんいるのに、どうして自分が選ばれたのか疑問に思うケースもあるでしょう。実は、実際に税務調査の体験を持つ個人事業主を見てみると、税務調査の対象となる人には、共通する傾向が見られるのです。

では、税務調査の対象となりやすい個人事業主にはどんな特徴があるのでしょうか。

今回は、税務調査を体験した人の傾向から考えられる税務調査が入りやすい個人事業主の特徴についてご説明します。

 

個人を対象とした税務調査はどのくらい行われているの?

国税庁が令和6年11月に発表した「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、令和5事務年度に個人事業主を対象として実地された実地調査と簡易な接触の合計件数は、60万5,000件となっています。このうち、実際に現場を訪問しての調査である実地調査が実施された数は4万8,000件です。前年である令和4事務年度の実地調査の件数は4万6,000件であったため、
毎年、5万人ほどの個人事業主は税務調査を体験している
ということになります。

また、個人を対象とした所得税の税務調査によって発覚した申告漏れ所得金額は令和5事務年度には9,964億円、令和4事務年度は9,041億円となったと発表されています。追徴課税額は令和5事務年度が1,398億円、令和4事務年度が1,368億円です。

個人を対象とした税務調査は所得税だけではなく、譲渡所得や消費税を対象としたものも行われています。譲渡所得についての税務調査の実施件数は令和5事務年度は1万6,715件、令和4事務年度は1万8,572件となっており、土地や株式等の譲渡所得がある場合でも年間2万人に近い人が税務調査を体験していることになります。また、消費税の税務調査の件数は、実地調査と簡易な接触を合わせ、令和5事務年度は12万495件となっています。

参照:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」

 

税務調査が入りやすい個人事業主の特徴とは

前述のように、簡易的な接触を含めると60万人を超える個人事業主が税務調査を体験しています。また、そのうち実際に調査官による実地調査を受けたケースは約5万件です。

では、税務調査を体験した人を見ると、個人事業主の場合どのような人が税務調査の対象になりやすいのでしょうか。税務調査が入りやすい個人事業主の特徴を8つご紹介します。

 

確定申告をしていない

まず、確定申告をしていない個人事業主は、税務調査に選ばれやすくなります。国税庁では、確定申告をしていない無申告の人は、申告納税制度の下で自発的に正しく納税をしている納税者に対し、強い不公平感を生み出すことになるため、的確かつ厳格に対応すると公表しています。そのため、確定申告をしていない無申告の個人事業主に対しては、積極的な情報収集が行われているのです。

令和5事務年度の所得税無申告者に対する税務調査(実地調査)の実施件数は5,274件です。1件あたりの申告漏れ所得金額は、2,590万円となっており、所得税の実地調査全体の1.9倍ほどの額になっています。また、1件あたりの追徴税額も417万円となっており、所得税の実地調査全体の追徴課税額の約1.5倍です。

確定申告をしていない無申告の場合、確定申告をしている人に比べると、申告漏れの額も追徴課税の額も多いことが分かります。税務署としても無申告の個人事業主に対して税務調査を実施すれば、調査の成果を上げやすく、正しく納税している人の不公平感も緩和できるため、今後も無申告者に対する税務調査は積極的に実施されるでしょう。

今、確定申告が必要であるにもかかわらず確定申告をしていない人は、税務調査の対象に選ばれる可能性が高い状態だといえます。

 

申告内容の売上金額に不審な点がある

企業は、取引のあった個人事業主や法人などに報酬を支払った場合や源泉徴収をした場合、その合計額を税務署に提出しなければなりません。この書類を支払調書といい、企業は前年の1月1日から12月31日までに支払った額を記載した支払調書を翌年の1月31日までに税務署に提出する義務を負っています。

たとえば、外交員に対して報酬を支払っている企業は、同一の人に対して、年間50万円以上の支払いを行っている場合、支払調書の提出が必要です。また、ホステスやキャバクラ、ホストクラブなどで働くキャストに報酬を支払っている企業も、同一の人に対して年間50万円以上の報酬を支払っている場合も同様です。

また、外交員やホステス、キャバクラ、ホストクラブなどのキャストといった職業を含めた特定の仕事に就く人以外については、1年間に5万円以上の報酬を支払った場合に、支払調書を提出しなければなりません。

支払調書には、支払いを受ける人の名前や住所と支払金額を記載します。そのため、個人事業主が提出した確定申告書に記載された売上の額と企業側から提出された支払調書に記載された額が大きく異なる場合、不正に売上を低く装っているのではとの疑いを招くことになるでしょう。したがって、税務署側が売上金額に不審な点があると感じた場合、税務調査によって真偽が確かめられることとなります。

 

経費として計上している額が多い

経費を水増しすれば、その分、売上から差し引ける額が多くなるため、所得額を圧縮でき、所得税の額も低く抑えることができます。そのため、事業規模に比べて経費として計上している額が多い場合や多額の交際費などが計上されている場合などは、税務調査の対象になるケースが高くなっています。

また、一人で事業をしているにも関わらず経費の額が多い場合、消耗品費や雑費として計上している額が非常に多い場合なども、経費の額が不自然であるとみなされるケースが多いでしょう。

ただし、本当に事業を営むうえで必要となった支出であれば、経費として計上して問題ありません。税務調査が行われた場合でも、領収書などを示し、経費である根拠についてしっかり説明できるようにしておきましょう。

 

売上が1,000万円ギリギリの額が続いている

個人事業主でも年間の売上が1,000万円を超える場合、翌々年から消費税の課税事業者となります。今は、インボイス制度が開始され、年間売上高が1,000万円以下であってもインボイス発行事業者として登録し、消費税の課税事業者となっている個人事業主も増えています。しかし、インボイスを発行する必要性がない個人事業主の場合、課税売上高が年間1,000万円未満であれば、消費税を納税する必要はありません。そのため、売上額を低く装ったり、経費を多めに計上したりするなどして、売上を1,000万円未満に調整する個人事業主もいるのです。

したがって、数年にわたって売上が1,000万円に届かないギリギリのラインで申告している場合などは、税務調査の対象になりやすいでしょう。たとえ、正しく申告をしていても900万円前後の売上で推移している場合、税務調査を体験してしまう可能性はあります。しかしながら、正しく申告をしているのであれば、税務調査が行われても、不正を疑われることはなくそのまま終了するため、過剰に不安になる必要はありません。

 

海外投資をしている

海外投資を行っている個人も税務調査の対象となりやすい状況です。海外投資を行っている人や海外資産を保有している人に対しても税務調査は実施されており、令和5事務年度の1件あたりの追徴税額は649万円です。所得税の実地調査全体の追徴課税額は275万円であったことに比べると、約2.4倍もの追徴課税額が発生していることが分かります。

国税庁でも、海外投資をしている人や海外資産を保有している人に対し、国外送金等の調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを活用し、積極的に調査を行うとしています。海外取引をしている場合や海外資産を売却して譲渡益を得ている場合などは特に注意が必要です。

 

暗号資産取引やインターネットの取引が多い

暗号資産取引をしている人に対して、令和5事務年度には535件の税務調査が行われ、1件あたり2,356万円もの申告漏れが指摘されています。1件あたりの追徴課税額は662万円と非常に高額になっており、暗号資産取引をしている場合、税務調査の対象に選ばれる可能性が高くなるでしょう。

また、アフィリエイトをはじめとしたインターネット広告で利益を得ている個人や動画配信で利益を得ている個人、インターネットサイトで商品を販売している個人に対しても国税庁が積極的に税務調査を実施していると公表しています。1件あたりの申告漏れ額は1,432万円となっており、総額で見た場合の申告漏れの額は176億円、追徴課税の額は39億円です。今後もインターネットを介した取引は増えていくと考えられ、今後も引き続きインターネット取引を行っている個人に対する税務調査は実施されていくでしょう。

 

申告漏れが多い業種を営む個人事業主

国税庁では、毎年、申告漏れが多い個人事業主の業種を公表しています。令和5事務年度の場合、1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な個人事業主の業種の上位10業種は次のようになっています。

1位:経営コンサルタント

2位:ホステス、ホスト

3位:コンテンツ配信

4位:くず金卸売業

5位:ブリーダー

6位:焼き鳥

7位:太陽光発電

8位:内科医

9位:スナック

10位:西洋料理

毎年、順位は多少入れ替わるものの、1位となっている経営コンサルタントについては令和3事務年度から3年連続で、1件あたりの申告漏れ所得金額が多い業種の1位となっています。また、くず金卸売業やブリーダーもここ数年、ランキングの上位に並ぶことが多い業種です。

申告漏れ所得金額が多い業種の場合、税務調査の対象として選ばれる可能性が高くなります。なぜなら、税務署でも人員の関係上、全ての個人事業主を対象に税務調査を実施できるわけではないからです。そのため効率よく不正を正すことができる申告漏れ所得金額が多い業種を中心に税務調査を行う傾向にあります。

それゆえ、たとえ正しく確定申告をしている場合でも、経営コンサルタントやホスト、ホステスなどの仕事に就いている場合、税務調査の対象になる可能性は高くなるでしょう。

 

売上が急に伸びている個人事業主

開業から3年以上が経過し、売上が急成長している個人事業主にも税務調査が入る可能性が高くなっています。前述のように、消費税は年間の課税売上高が前々年の売上高を基準とするため、インボイス発行事業者として登録していない場合、事業開始から3年目以降に課税されることとなります。

また、売上が増えると経理処理のミスも増えて、売上や経費の期ズレなども生じやすくなるでしょう。そのため、正しく申告を行っているのかの意味合いも含め、開業3年目以降の事業主を対象に税務調査を実施するケースが多くなると考えられます。

 

個人事業主でも税務調査に入られないための対策とは

個人事業主でも税務調査に選ばれる人と選ばれない人があります。その違いは、正しく確定申告を行っているかどうかの可能性の差にあるとも考えられます。今回ご紹介してきたように、税務調査の対象になりやすい個人事業主は、確定申告をしていなかったり、不正が多い業種を営んでいたりと、正しく納税していない可能性が高い人です。逆にいえば、確定申告を毎年期限内に正しく行っており、疑わしい箇所がないような場合は、税務調査の対象になりにくいといえます。

ただし、国税庁が税務調査を強化しているインターネット取引や海外取引、不正が多い業種を営んでいる場合などは、不正をしている個人が多いために、正しく申告をしていても税務調査の対象になってしまう可能性があります。しかしながら、正しく確定申告をしているのであれば、税務調査が入ったとしても追徴課税がなされることはありません。

したがって、
税務調査の対象とならないためには、まず、正しく確定申告を行い、納税を行っていることが非常に重要
になります。

 

まとめ

税務調査は、納税の義務がある法人と個人に対して実施される調査です。個人事業主でも税務調査の対象になるケースは多く、国税庁が公表しているデータによると毎年約6万人の個人が税務調査を体験しているといえます。

税務調査の対象になりやすい個人事業主には一定の傾向があります。それは、確定申告をしていなかったり、不正の多い業種を営んでいたりといったケースです。また、売上がいつも900万円台といったケースも税務調査の対象になりやすいでしょう。

正しく確定申告をしていれば、税務調査の対象にもなりにくく、たとえ税務調査の対象になったとしても、トラブルが発生する可能性はありません。できるだけ税務調査の対象になりたくないと考えているのであれば、まずは、毎年の確定申告を期日までに、ミスなく、正しく行うことが大切です。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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