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税務調査が10年以上来ない個人事業主もいるって本当?特徴はある?

読了目安時間:約 6分
税務調査は、納税の義務がある個人や法人に対して実施される税務署による調査です。そのため、一定以上の所得を得ている人であれば、誰でも税務調査の対象になる可能性があります。しかしながら、税務調査は、ランダムに調査対象者を選んでいるわけではありません。なぜなら、税務署の調査官の数にも限りがあり、納税の義務があるすべての個人や法人に対して一斉に税務調査を行うことはできないからです。そのため、個人に対する税務調査を実施する際には、不正をしているのではという疑いが強い個人事業主をピックアップする傾向にあります。したがって、個人事業主の中には税務調査の対象に選ばれやすい人もいれば、10年以上税務調査が来ない人もいるのです。
今回は、税務調査が10年以上来ない個人事業主の特徴や税務調査の対象となる確率などについてご説明します。
目次
個人が税務調査の対象になる確率はどのくらい?
令和5事務年度に税務署が個人に対して所得税の税務調査を行った実地調査の件数は、約4万8千件、簡易な接触も含めた調査の合計数は約61万件です。また、令和5年に所得税の確定申告をした個人の人数は約2,324万人で、そのうち申告納税額がある人は約669万人となっています。したがって、確定申告をして納税をした人のうち、実地調査を受けた人の割合は0.7%と計算ができます。
参照元:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
「令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)」
税務調査が10年以上来ない個人事業主はいる?
令和5年を対象とした計算でも0.7%という数字を導くことができたように、個人が税務調査の対象になる確率は、だいたい0.5%~1%程度といわれています。したがって、税務調査の対象に選ばれる頻度は、100年~200年に1回になるといえます。
つまり、個人事業主が税務調査の対象になる確率から考えると、税務調査が10年以上来ない個人事業主は珍しくないと考えられるのです。
しかし、税務調査が入った経験を持つ個人事業主や知人が税務調査を受けた話などを聞いた経験がある人は、なぜ10年以上も税務調査が来ないのか不思議に思うかもしれません。実は、税務調査が10年以上来ない個人事業主には共通した特徴があります。
税務調査が10年以上来ない個人事業主の特徴とは
税務調査が10年以上来ない個人事業主は、税務調査の対象になりにくい個人事業主であるということでしょう。では、どのような個人事業主は税務調査の対象になりにくいのでしょうか。
税務調査が10年以上来ない個人事業主の特徴を4つご紹介します。
確定申告の内容に疑わしい部分がない
まず、税務調査が10年以上来ない個人事業主の共通点として、確定申告を正しく行っているという条件が挙げられます。期日までに、ミスなく、正しく確定申告を行っていれば、税務調査の対象となる確率は低くなります。なぜなら、提出された確定申告書の内容を見ても、どこにも疑わしい部分がない場合、わざわざ個人事業主の事務所や自宅に足を運んで税務調査を行っても、問題が見つかる可能性は少ないからです。
事業の売上が低い
事業の売上が低い個人事業主も税務調査の対象には選ばれにくい傾向にあります。例えば事業の売上が100万円程度の個人事業主がいた場合、経費を差し引くと、所得額は100万円以下となり、所得税の額はさらに低くなるでしょう。そのため、事業の売上が低い個人事業主を対象に税務調査をした場合、不正を行っていたとしてもそれほど多額の追徴課税を行うことはできません。効率よく税の不公平を是正するためには、事業売上が低い個人事業主よりも事業売上が大きい個人事業主を調査の対象にした方がよいのです。したがって、税務調査が10年以上来ない個人事業主には、売上高が低いケースが多くなっています。
現金取引が少ない
現金取引とは、現金でやりとりをする取引のことです。例えば、飲食店などでは、お客様から現金で支払いを受けるケースが多いでしょう。また、惣菜店やパン屋、ケーキ屋、肉屋、雑貨屋など、個人を対象とした商売を行っている場合は、現金での取引が多くなります。
現金取引の場合、銀行口座への振込やクレジットカード決済などのように、取引の記録が残りにくく、お金の流れを把握しにくいケースがほとんどです。そのため、現金取引が多い事業を営んでいる場合には、税務調査の対象になる可能性が高くなります。反対に、現金取引が少ない事業を営んでいる場合、売上や経費などのお金の動きを把握しやすくなるため、税務調査が10年以上来ない例も少なくないのです。
申告漏れの少ない業種を営んでいる
国税庁では、毎年、申告漏れ所得金額が高額な業種を公表しています。例えば、令和5事務年度の申告漏れ所得金額が最も高い個人事業主の業種は、経営コンサルタントでした。1件あたりの申告漏れ所得金額は3,871万円、1件あたりの追徴税額は1,040万円にも上っています。経営コンサルタントは、令和4事務年度でも申告漏れ所得金額が最も高い個人事業主の業種でした。また、くず金卸売業、ブリーダー、太陽光発電といった業種も、前年も10位以内にランキングしていた業種です。多少の入れ替わりはあるものの、特定の業種に申告漏れが多いことは毎年の公表データを見ても明白となっています。
無作為に税務調査を行っても、不正をしている人を正す確率は低くなります。そのため、税務署では、大きな申告漏れをしている可能性が高い個人事業主を選ぶ傾向にあるのです。したがって、申告漏れの多い業種を営んでいる個人事業主は、税務調査の対象に選ばれやすくなります。逆に申告漏れの少ない業種を営んでいる個人事業主は、税務調査が10年以上来ないケースも少なくありません。
税理士が確定申告を行っている
実は、税務調査が10年以上来ない個人事業主は、税理士に確定申告を依頼しているケースが多くなっています。税理士は、税金の専門家です。そのため、税理士が代理人となって確定申告を行う場合、ミスが発生する確率は非常に低く、申告内容は信頼性が高いと考えられます。一方、個人事業主が自ら作成している確定申告書の場合、経理や会計についての専門知識がなければ、売上の計上漏れや経費の水増し、売上の計上時期のずれ、棚卸資産の計上漏れなどが起きる可能性が高いのです。
したがって、税理士に確定申告を依頼している個人事業主も、税務調査の対象に選ばれにくいといえるでしょう。
税務調査の対象になりやすい個人事業主とは?
税務調査が10年以上来ない個人事業主とは反対に、税務調査の対象になりやすい個人事業主もいます。税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴は、税務調査が10年以上来ない個人事業主と反対の特徴を持つ人です。
具体的には次のような場合は、税務調査の対象に選ばれやすいといえるでしょう。
確定申告をしていない、または確定申告に不備が多い
そもそも確定申告をしていない人や確定申告をしていてもミスが多い、確定申告の内容に疑わしい点が多い場合などは、税務調査の対象になりやすいといえます。まず、確定申告をしていない無申告の個人に対しては、積極的に調査を行うと国税庁も公言しており、税務調査が入る可能性は高くなります。
また、事業規模に比べて経費の額が高すぎる、売上が毎年900万円程度で推移しているなど、確定申告の内容に不審な点があると判断されれば、税務調査の対象になるでしょう。
事業の売上が急増したり、経費が急増している
事業の売上が急激に伸びた場合も税務調査の対象となる確率が高くなります。前年に比べて急激に売上が増加している場合や経費が急増している場合などは、調査官の目を引きやすくなるでしょう。同じ事業を営んでいた場合、急激に経費が増加するとは考えにくいものです。また、売上が急増した場合も、これまで正しく申告がなされてきたのかをチェックする必要があると考えるでしょう。そのため、売上や経費が大きく変動している場合、税務調査の対象として選ばれやすくなります。
現金取引が多い
現金取引が多い場合、客観的な取引の記録が残りにくいため、税務調査の対象になりやすいといえるでしょう。ただし、現金取引が多い場合でもしっかりと売上や経費の管理をしており、正しく処理をし、申告をしていれば、税務調査の対象になったとしても大きな問題が生じることはありません。
申告漏れが多い業種を営んでいる
申告漏れが多い業種を営んでいる場合、税務調査の対象になりやすいです。申告漏れが多い業種と申告漏れが少ない業種を比べれば、税務調査をした場合に、申告漏れが多い業種の方が不正を見つけやすくなるでしょう。そのため、申告漏れが多い業種を営んでいる場合は税務調査が入る可能性が高くなると考えられます。
税理士が確定申告をしていない
税理士がついていない個人事業主も、税務に関する知識が不十分のために確定申告の内容にミスが生じやすく、不適切な処理を行っているケースが多くなります。そのため、税理士ではなく、事業主が自分で確定申告をしている場合も税務調査の対象になりやすいといえます。
税務調査が10年以上来ない個人事業主でも油断は禁物
税務調査が10年以上来ない個人事業主であっても、絶対に税務調査の対象にならないわけではありません。引き続き、税務調査の対象として選ばれないようにするためには、次のような対策が必要です。また、開業から3年以上が経過すると税務調査の対象になりやすいといわれています。それは、税務調査では基本的に過去3年にまでさかのぼって調査をするケースが多いからです。したがって、開業から10年は経っていないけれど、まだ税務調査を受けていないという個人事業主も税務署から疑いを抱かれることがないよう、次の点に注意しましょう。
期日までに確定申告を行う
個人事業主の確定申告の時期は、原則として2月16日から3月15日、土日が重なる場合は次の平日と決められています。確定申告をしていない無申告の場合、税務調査の対象になる可能性は高くなります。税務署では、さまざまなルートから情報を収集しています。そのため、収入があるにもかかわらず確定申告をしていない個人がいれば、税務調査を実施し、正しい納税を促す可能性が高くなるのです。
税務調査を避けたい場合には、必ず期日までに確定申告を行うようにしましょう。
正しく確定申告を行う
税務調査が10年以上来ない個人事業主の場合は、正しく確定申告を行っているケースが多いでしょう。しかしながら、事業が急激に成長した場合などは、処理内容が多くなるために申告内容にミスが生じてしまう可能性もあります。また、売上が急増した場合は、税務署の目にも止まりやすくなります。
せっかく事業が成長しても、税務調査の対象に選ばれ、追徴課税がなされると、事業の成長に水を差してしまう可能性もあるでしょう。どんな状態であっても、売上の計上漏れなどが生じないよう、正しく確定申告を行うことが大切です。
税理士に相談をする
税理士にまだ確定申告を依頼していない場合などは、税理士への相談も検討してみましょう。税理士に確定申告を依頼した場合、税理士に支払う報酬は発生します。しかしながら、確定申告にかかっていた手間を軽減でき、ミスなく、正しく確定申告を行えるようになります。確定申告にかかっていた手間や時間、また、税務調査の対象になった場合に生じる手間や時間を考えれば、たとえ報酬を払ったとしても税理士に代理申告を依頼した方が大きなメリットを得られる場合もあるでしょう。
税務調査が10年以上来ない個人事業主で税理士に確定申告を任せていない場合などは、事業が成長してきたタイミングで税理士への相談をおすすめします。
まとめ
税務調査が10年以上来ない個人事業主もいます。個人事業主が税務調査の対象となる確率は0.5%ほどだといわれており、税務調査を受ける頻度を計算すると100年から200年に1回程度となります。そのため、税務調査が10年以上来ない個人事業主も少なくはないのです。
税務調査の対象はランダムに選ばれているわけではありません。税務調査の対象となりやすいのは、不正を行っているのではという疑いを持たれた個人事業主です。税務調査の対象となった場合、帳簿等の準備の時間が必要となり、調査当日は質問に答えたりするなど、時間を取られます。また、不正やミスが発覚すれば追徴課税もなされるため、税務調査に入られないためには日頃からしっかり帳簿付けをし、正しく確定申告を行うことが大切です。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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