2025.03.11
  • 税務調査
  • 無申告

税務調査が入る理由とは?対象になる確率は?

読了目安時間:約 6分

確定申告の時期になると、税務調査が気になる方も増えてくるのではないでしょうか。事業を営んでいると税務調査が入る可能性があることは認識しているものの、何のために税務調査が入るのか、理由が分からないという方もいらっしゃいます。では、なぜ税務調査が入るのでしょうか。

今回は、税務調査が入る理由や調査の対象に選ばれる確率、税務調査の流れなどについてご説明します。

 

税務調査が入る理由

税務調査が入る理由を知るためには、税務調査の実施目的を確認しておく必要があるでしょう。

 

税務調査の目的とは

国税庁の任務は「内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現」であり、この任務を遂行するため、納税者サービスの充実に努めるとともに、適正な調査・徴収を行うとしています。また、税務調査は申告内容が正しいかどうかを帳簿書類などで確認し、申告内容に誤りが見つかった場合や申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合に、是正を求めるものと説明しています。

日本では、納税義務者が自ら所得額を算出し、所得に応じて課せられる税金を申告して納税をする申告納税制度が採用されています。そのため、納税者によっては、税金の負担を抑えるために申告額を低く装ったり、そもそも申告をしなかったりといった不正を行うケースがあるのです。税務調査は、申告内容にミスや不正がないかを確認し、ミス・不正があった場合には是正をすることで、正しい税の納付を求めることを目的に実施される調査だと言えます。

 

税務調査が入る理由は公開されていない

税務調査は納税の義務がある個人や法人を対象に実施される調査であり、正しく申告をしているかをチェックする目的であれば、誰でも税務調査の対象となる可能性があります。しかしながら、すべての納税者に税務調査が入るわけではありません。ではなぜ、税務調査が入る納税者と税務調査が入らない納税者がいるのでしょうか。

国税庁や税務署では、税務調査が入る理由、つまり、税務調査の対象となる納税者をどのように選んでいるか、その選定基準を公表しているわけではありません。また、何らかの順番に基づいて税務調査が入るわけでもないため、自分の会社や自分に税務調査が入るかどうかは直前になるまで知ることはできないのです。

 

税務調査が入る理由の推測

税務調査が入る理由は公開されていませんが、税務調査が入った事例を見てみると、税務調査の対象に選ばれる納税者にはある共通点があります。それは、確定申告が正しく行われていなかったという点です。

税務調査は前述のように、納税者の不正を正し、正しい税額の徴収を目的に実施されるものです。そのため、正しく申告をしている納税者をチェックするよりも、申告を正しく行っていない可能性が高い納税者の方が、調査の対象には選ばれやすいと考えられるでしょう。したがって、特定の納税者に税務調査が入る理由は、確定申告の内容に税務署が何らかの疑いを抱いているからと推測できるのです。

 

税務調査が入る代表的な理由について

税務調査が入る理由を税務調査が入った納税者の傾向をもとにご説明します。

 

確定申告をしていない

確定申告をする必要があるにもかかわらず、確定申告をしていないことは、税務調査が入る理由の1つになるでしょう。確定申告をしていなければ、納税の義務を果たしていないことになります。そのため、税務調査を実施し、事業の状況や所得について詳しく調査を行い、正しい納税を求めるのです。

 

確定申告の内容に誤りがある

確定申告書は提出されているものの、内容に誤りが見られる場合、内容が正しくない可能性が疑われる場合も、税務調査が入る理由となります。確定申告の内容に誤りがある場合、たとえ悪意がない場合でも、売上計上額が少なかったり、経費にはできない支出を経費に計上していたりすると、納税額は低くなります。そのため、確定申告の内容に誤りが見つかった場合は、税務調査が入り、正しい申告方法について指摘を受ける可能性があります。

 

確定申告の内容に不正が疑われる

次のような場合は、確定申告を正しく行っていないと疑われる可能性があり、真偽を確かめるために税務調査が入る可能性があります。

・事業規模に比べて売上が低すぎる

・経費として計上されている額が多すぎる

・取引先が提出している申告書類と売上などの金額が合わない

・前年に比べて急激に売上が増加している

・前年に比べて急激に経費が増加している

 

不正の多い業種を営んでいる

確定申告を正しくしていない業種は、税務調査の対象として選ばれやすい傾向にあります。そのため、正しく確定申告をしている場合でも、同業者が不正を行っているケースが多い場合、税務調査が入りやすくなる可能性があるのです。

 

事業規模が大きい

事業規模の大きさも税務調査の対象として選ばれる理由の1つとなります。事業規模が大きい場合、それだけ売上や経費も大きくなるため、煩雑な処理が必要となり、申告内容にもミスが生じやすくなるのです。また、事業規模が大きい場合、1件1件の売上の額や経費の額なども大きくなるため、ミスによって生じる税額の不足分も大きくなる可能性があります。そのため、事業規模が大きい法人や個人事業主は、税務調査の対象に選ばれる可能性が高くなるのです。

 

税務調査の対象となる確率はどのくらい?

税務調査と聞くと、正しく申告をしていても不安な気持ちになるものです。そのため、できれば税務調査に入ってほしくないと考える方がほとんどではないでしょうか。では、税務調査の対象として選ばれる確率はどのくらいあるのでしょうか。法人の場合と個人事業主の場合に分けて税務調査の対象に選ばれる確率をご紹介します。

 

法人の場合

国税庁が公表している「令和5事務年度 法人税等の調査実績の概要」を見ると、令和5事務年度に法人を対象として実施された、法人税・消費税の税務調査の実地調査件数は59,000件です。この報告書には、あらゆる資料情報と提出された申告書等の分析・検討を行った結果、大口・悪質な不正計算等が想定される法人など、調査必要度の高い法人に実地調査を実施したと明記されています。この報告からも、税務調査が入る理由は、申告内容に何かしら疑わしい点があると考えて問題ないことが分かります。

また、国税庁の別の資料「税務行政の現状と課題」では、令和5事務年度の税務調査の実施率は1.7%であったと公表しています。

国税庁:令和5事務年度 法人税等の調査実績の概要

 

個人の場合

国税庁では、個人に対して実施した税務調査の結果も「令和5事務年度所得税及び消費税調査等の状況」という報告書で報告をしています。令和5事務年度に個人に対して実施された税務調査の件数は、所得税に関する調査が約37,000件、消費税に関する調査が約22,000件です。

また、個人を対象とした税務調査の実施率は、令和5事務年度は0.7%だったと公表しています。

国税庁:令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

 

国税庁:税務行政の現状と課題

 

税務調査の種類

税務調査にはいくつかの種類があります。税務調査が入る理由によって、実施される調査の内容も変わります。そのため、調査ごとの特徴を把握しておくと税務調査が入る場合でも対処がしやすくなるでしょう。

 

強制調査

強制調査とは、税務署ではなく、国税局査察部の調査官によって実施される調査です。裁判所の令状を持って強制的に実施される税務調査で、強制調査の対象となった場合、納税者には調査を拒否する権利はありません。

強制調査は多額の脱税が疑われる場合や悪質な行為が疑われる場合に実施される調査です。調査にあたって事前に予告がなされることはなく、捜査官がオフィスや経営者の自宅などを訪れ、証拠となる帳簿や書類、所有物などの押収を行います。強制調査は犯罪として立件することを目指した調査であり、違法性が認められれば、刑事罰が科される恐れもあります。

 

任意調査

強制調査に対し、一般的に実施される税務調査を任意調査と言います。任意調査は、納税者の協力のもとに実施される調査で、強制調査のように調査官が有無を言わさず帳簿などを押収することはありません。

しかしながら、任意調査であっても納税者は税務調査に協力しなければならず、調査を拒否することはできません。ただし、任意調査が実施される前には、原則として事前通知が行われます。事前通知とは、税務調査に入る日時や調査対象の税目、調査対象期間などを知らせる税務署からの連絡のことです。事前通知は電話で行われることが一般的で、調査日時の都合が合わない場合は日程の調整をすることができます。

任意調査のうち、実際に調査官がオフィスや店舗、工場、自宅などを訪問して帳簿などのチェックを行う調査を実地調査と言います。

また、実地調査だけでは不十分だった場合には、特別調査が実施される場合もあります。

 

特別調査

申告内容に多数のミスが見受けられる場合や不正の額が多額になる可能性がある場合、事業規模の大きいグループ企業を対象とした調査の場合に実施される調査です。特別調査では、一般的な税務調査よりも時間をかけた調査が行われます。

 

反面調査

税務調査が入る場合、税務調査の対象となる納税者だけでなく、取引先など、関係先に対しても調査を実施するケースがあります。この調査を反面調査と言います。請求書や契約書などの書類が残っていない場合など、税務調査で十分な情報を得られない場合は、より正確な情報を取得するために、取引先などを対象に反面調査を実施します。

 

税務調査でチェックされやすいポイントとは

税務調査が入る理由は、何らかの不正が疑われているためです。そのため、税務調査では不正が行われやすいポイントを中心に調査が行われます。税務調査でチェックされやすいポイントをご紹介します。

 

売上の計上漏れはないか、計上時期は正しいか

売上の計上漏れは、税務調査で必ずと言っていいほどチェックされるポイントです。売上を低く装えば、所得額は低くなるために、課せられる所得税や法人税は低く抑えられます。そのため、売上の一部を意図的に計上しないといった不正を行っている納税者がいるのです。

税務調査では、売上が漏れなく計上されているか、請求書や納品書、契約書などの書類、銀行の取引データなどをもとに細かくチェックしていきます。また、売上の計上月がずれていないかについてのチェックも行われるでしょう。

 

経費の計上額は正しいか

所得額は売上から経費を差し引いて算出するため、経費を多く計上すれば所得の圧縮ができ、納税額を不正に低く装うことが可能です。そのため、架空の領収書を作って経費計上をしたり、プライベートな支出を経費に計上したりするといった不正が行われることがあります。また、仕入費用を二重に計上しているケースも少なくありません。

したがって、税務調査では、本来は経費として計上できない支出を経費として計上していないか、実際には発生していない経費を計上していないか、領収書などをもとに細かなチェックが行われます。

 

人件費の計上は正しいか

人件費は経費に算入することができます。そのため、中には実際よりも人件費の額を多く計上し、所得を低く見せかけているケースもあります。税務調査では、タイムカードなど、勤怠情報を確認したうえで、人件費が正しく計上されているか、チェックがなされます。また、役員報酬の額が妥当な金額であるかといった点も税務調査時にはチェックされやすいポイントです。

 

源泉所得税を正しく行っているか

法人でも個人事業主でも従業員を雇用している場合は、支払う給与から所得税・復興特別所得税の源泉徴収をしなければなりません。税務調査では、年末調整の内容などを確認し、適正に源泉徴収が行われているかについてもチェックがなされます。

 

まとめ

税務調査が入る理由は、税務署が納税者の申告内容に何らかの疑いを抱いているからです。税務調査に入る前には、税務署では申告内容とその他の情報などをチェックする事前調査を行っているケースが多くなっています。そのため、税務調査に入る対象者をランダムに選んでいるわけではなく、ある程度、申告内容に間違いがあるという目星をつけて調査対象を選んでいるのです。

したがって、事前通知を受けた場合には、何らかの疑いを抱かれている可能性が高という自覚を持って、調査に対する準備を進めるようにしましょう。正しく確定申告を行っていない自覚がある場合には、早めに税理士に相談し、税務調査が入る前に正しい申告書を提出することをおすすめします。

 

-免責事項-

 当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上

  • 現在、税務調査が入っているので困っている
  • 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
  • 税務調査に強い税理士に変更したい
  • 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
といったお悩みを抱えている方は、まずは初回電話無料相談をご利用ください。
税務調査の専門家が対応させていただきます。

税理士法人松本の強み

  • 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
  • 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
  • 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
  • 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断

あわせて読みたい記事

税務調査ブログをもっと見る

税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!

税務調査お悩み解決しませんか?
いますぐ電話1本で相談できます!

専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。
初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。

税理士法人松本代表税理士 松本 崇宏

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断