2025.03.15
  • 税務調査

相続税は、自分で申告すると税務調査の対象になりやすいって本当?

読了目安時間:約 6分

相続税の計算方法は、非常に複雑です。また、相続をする機会は、人生の中でもそれほどあるわけではありません。そのため、相続税について、自分で申告ができるか疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、自分で相続税の申告をすると税務調査の対象になるケースが少なくありません。なぜ、自分で申告をすると相続税の税務調査の対象になるのでしょうか。

今回は、相続税の税務調査の実施状況や相続税を自分で申告することのリスクなどについてご説明します。

 

相続税の税務調査について

相続税の税務調査とは、相続した財産について、正しく相続税を申告し、納税したかを調べる税務署による調査のことです。

 

相続税の税務調査で実施される調査の内容とは

個人を対象とした所得税の税務調査の場合は、事業の売上や経費などについて詳しい調査が行われます。事業を営む場合、帳簿のほか、請求書、領収書、契約書などさまざまな書類があり、申告内容が正しいかどうかを客観的に示すことができます。しかし、相続税の場合、帳簿や書類がないため、どのような点をチェックされるのか疑問に思うかもしれません。

相続税の税務調査でチェックされるのは、財産の移動についてです。

具体的には、預貯金の流れや不動産の保有状況、株式などの有価証券の保有状況などが税務調査の対象となります。自分で申告をした場合、相続税の申告内容と実際の財産の動きにずれがないかをチェックするのです。

 

自分で申告する場合の相続税の申告期限は?

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。例えば、親が1月10日に亡くなり、当日、死亡したという事実を知った場合、相続税の申告は、その年の11月10日までに行わなければなりません。

 

相続税の対象となる財産とは

相続時の対象となる財産は、金銭に見積もることができる経済価値のあるものです。具体的には、現金、預貯金、株などの有価証券、宝石、土地、家屋、貸付金、特許権、著作権、書画、骨とう品などが含まれます。

また、次のような財産も相続税の対象となります。

・死亡退職金、被相続人が保険料を負担していた生命保険料の死亡保険金

・生前贈与を受け、贈与税の納税猶予の特例を受けていた土地、非上場会社の株式、事業用資産

・教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税の適用を受けた場合の管理残額(死亡日において受贈者が23歳未満である場合を除く)

・結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税の適用を受けた場合の管理残額

・被相続人から、生前、相続時精算課税の適用を受けて取得した贈与財産

・相続人がいなかった場合に、民法の定めによって相続財産法人から与えられた財産

・特別寄与者が支払いを受けるべき特別寄与料の額で確定したもの

 

自分で申告する際には相続税の基礎控除額に注意

2015年の制度改正により、相続税の基礎控除額が変更になっています。2014年12月31日までは、相続税の基礎控除額は、5,000万円に法定相続人の数×1,000万円を足した金額でした。しかし、2015年1月1日以降は、基礎控除額は3,000万円+法定相続人の数×600万円に変更されています。

法定相続人が1人だった場合、相続税の基礎控除は6,000万円でした。したがって、相続した財産が6,000万円を上回らなければ、相続税の申告手続きは要らなかったのです。しかし、制度の改正に伴い、2015年1月1日以降は、法定相続人が1人の場合、3,600万円以上の相続を受けた場合に相続税の申告が必要になりました。

制度改正に伴い、基礎控除額が引き下げられたことで、それまでは相続税の申告が必要でなかった人も相続税の申告が必要になるケースが増えたのです。

例えば、2014年に父親が亡くなり、相続税の手続きをした人がいたと仮定します。同じ人が2016年に母親を亡くし、自分で相続税の申告が必要になった場合、2014年と2016年では相続税の申告が必要になる金額が変わっている点に注意しなければなりません。

 

相続税の税務調査の流れ

相続税の税務調査は、次のような流れで行われることが一般的です。

まず、税務署から電話で連絡が入り、相続税を対象とした税務調査を実施する旨の報告が行われます。税務調査の日時は相談して決めることもできますが、調査を拒否することはできません。

税務調査の日時に、調査官が被相続人の自宅などを訪問します。一般的に調査官は2名体制で現れます。調査官が訪れると、相続人に対してヒアリングが行われます。その後、通帳などの書類の提示を求められ、金庫などの調査が実施された後、被相続人や財産の状況、申告内容などについて具体的な質問がなされます。

 

税務調査で相続税の申告漏れが発覚するとどうなる?

税務調査により、相続税の申告漏れが発覚した場合、修正申告が求められます。修正申告とは、申告内容を正しい内容に是正し、不足分の税額を納める手続きのことです。また、申告漏れによって相続税が不足していた場合は、不足分の税金だけでなく、税金が不足していたことに対するペナルティである過少申告加算税、納税が遅れたことに対するペナルティである延滞税も課されます。さらに、悪質な仮装・隠蔽行為があったと認められた場合には、過少申告加算税ではなく、より税率の重い重加算税が課されることになります。

 

相続税を自分で申告することはできる?

相続税を自分で申告することは可能です。しかしながら、相続税の計算は非常に複雑になります。

 

令和5年の相続税の申告数はどのくらい?

令和6年12月に国税庁が公表した「令和5年分相続税の申告実績の概要」では、令和5年に亡くなった人の数は1,576,016人であったとしています。このうち、相続税の申告書の提出をした被相続人の数は155,740人でした。したがって、約9.9%の人が相続税の課税対象となっていると言えます。

参考:令和5年分相続税の申告実績の概要

 

令和5年の相続税の税務調査の実施状況はどのくらい?

令和6年12月に国税庁が公表した「令和5年事務年度における相続税の調査等の状況」では、令和5年に実施した相続税の税務調査の実地調査件数は、8,556件であったことを報告しています。このうち、申告漏れなどが指摘された件数は、84.2%にあたる7,200件です。さらに、仮装・隠蔽などの行為が認められ、悪質だと判断された重加算税の賦課件数は971件となっています。また、本税と加算税を合わせた追徴税額の合計は、735億円にも上っています。

そのほか、文書や電話、来署依頼による面接等の簡易な接触が行われた件数も18,781件あり、そのうち申告漏れが指摘された件数は5,079件となっています。

実地調査と簡易な接触を合計すると、27,000件ほどの相続税の調査が行われ、約13,000件の申告漏れが指摘されているのです。この報告から、かなりの人数が相続税の税務調査の対象となっていることがお分かりになるでしょう。

参考:令和5年事務年度における相続税の調査等の状況

 

相続税の申告を自分でしてる人はどのくらい?

令和6年10月に財務省が公表した「令和5事務年度国税庁実績評価書」を見ると、相続税に関して税理士が関与した割合は、令和5年度の場合、86.3%であったと示されています。このデータには、過去5年分の税理士関与割合が示されており、令和元年度から令和5年度の相続税の税理士関与割合を見ると、いずれも85%程度と高い水準となっています。この事例から分かるように、相続税の申告を自分でしている人の割合は、おおよそ15%程度と非常に少ない割合になっているのです。

参考:令和5事務年度国税庁実績評価書

 

相続税の申告を自分でする人が少ない理由とは

相続税の申告を自分でしている人の割合は、全体の15%程度だけで、残りの85%に該当する人は、相続税の申告を税理士に依頼しています。なぜ、相続税の申告を自分でする人が少ないのでしょうか。その理由は、相続税の申告は非常に複雑である点に関係していると考えられます。万が一、自分で申告を行い、申告内容が誤っていた場合には税務調査の対象になるリスクがあり、税務調査を受けるのであれば、税務の専門家である税理士に任せた方がよいと考える方が多いのでしょう。

 

相続税を自分で申告すると税務調査の対象になりやすい理由

相続税の申告を自分で行った場合、税務調査の対象になる確率が高くなります。それは、相続税の申告を自分で行った場合、次のようなリスクが生じる可能性が高いからです。

 

相続税の課税対象となる財産を全部把握するのは難しい

相続税の申告をする場合、財産の所有者はすでに亡くなった状態です。そのため、相続税の対象となる財産にどのようなものがあるのか、保有者に確認することはできません。例えば、被相続人が孫の名前で積み立てをしていた預金がある場合、名義人は異なっていても、相続税の対象に含める必要があります。また、誰も知らない金庫があり、その中に預金通帳がしまわれていた場合などは、口座の存在に気が付かないこともあるでしょう。

万が一、相続税の申告を行った後に財産が見つかった場合、申告をし直さなければなりません。申告が漏れていた場合は、税務調査の対象となり、申告漏れを指摘されることになるのです。

税務調査の対象となれば、申告漏れ分に加え、過少申告加算税や延滞税などの納税が求められます。そのようなリスクを避けるために、相続税の申告は自分でせず、税理士に依頼するケースが多いのです。

 

自分で相続税の申告をすると計算ミスが起きやすい

相続税を計算する際、まずは課税遺産総額を算出しなければなりません。相続によって取得した財産の価額と相続時積算課税の適用を受けた財産の価額を合計し、そこから債務、葬式の費用、非課税財産を差し引き、遺産額を算出します。そのうえで、遺産額に加算する暦年課税にかかる贈与財産の価額を加算し、正味の遺産額を算出します。この正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた額が、課税遺産総額となります。

相続財産に宅地や建物などの不動産が含まれた場合、宅地については路線評価方式または倍率方式で評価をしなければなりません。路線価方式は、路線(道路)に面する宅地の1㎡あたりの価額(路線価)を基に計算した金額で評価をするものです。路線価方式では、表面路線価、奥行き価格補正率、面積をかけて算出します。また、路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算した金額で評価をする倍率方式を適用しなければなりません。

さらに、亡くなった人が事業や住まいなどに使っていた土地のうち、一定の要件を満たすものや貸付用で一定の要件を満たすものなどは、減額することができるなど、複雑な計算が必要です。また、被相続人との関係によって法定相続分は異なる点も、より計算を複雑にします。

これまで相続税の計算をした経験がない人が、自分で相続税の申告をした場合、ミスが起きやすく、ミスが起きれば、税務調査の対象になり得る可能性が高いのです。

 

税務調査をできるだけ避けたいから自分で申告をしない人が多数

前述のように、自分で相続税の申告をする場合、非常に複雑な計算が必要になり、ミスも発生しやすくなります。また、せっかく時間をかけて申告をしても、申告書を提出した後に申告していない財産が見つかるケースもあります。

税務署では、亡くなった被相続人の過去の銀行口座の取引状況なども調べることができます。そのため、税務署は親族でも知らないお金の動きを把握することができ、申告漏れがあれば、すぐに発覚する可能性が多いのです。

相続税の税務調査の対象になると、調査官が被相続人の自宅などを訪れ、家の中を細かく調査されることになります。また、生前の財産の状況などについても詳しいヒアリングが行われ、相続人は税務調査に全面的に協力しなければなりません。相続税の申告だけでも手間がかかるものですが、さらに税務調査の対象になる可能性が高くなると考えると、費用はかかっても税理士に相続税の申告を依頼したいと考える人が多いのでしょう。

 

まとめ

相続税の申告は自分ですることもできます。しかし、現状では85%もの人が相続税の申告は自分で行わず、税理士に依頼しています。相続税の申告を自分で行う人が多い理由は、相続税の計算は非常に複雑であり、ミスが生じやすいという理由が関係しています。自分で申告することによってミスが生じると、税務調査の対象になりやすく、税務調査を避けたいと税理士に対応を依頼するケースが多いのです。

税理士に申告を依頼する場合、税理士に支払う報酬が発生します。しかしながら、税務調査で申告漏れを指摘され、追徴課税がなされるのであれば、税理士に対応を依頼し、ミスなく申告をすることで税務調査を回避し、正しい申告をすることをおすすめします。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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