メニュー
- 税務調査
- 無申告
国税局の査察調査と税務署の税務調査の違いとは?
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税務調査は、事業を営んでいる納税者なら、誰でも受ける可能性があるといわれています。しかし、実際には国税局が行う「査察調査」や税務署が行う「税務調査」などの種類があり、それぞれ異なる調査の側面があるのも事実です。
そこで、ここでは国税局の査察調査と税務署の税務調査は何が違うのかについて、わかりやすく紹介しています。 すでに調査が入っていて、今後の対応にお困りの方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
似ているようで違う査察調査と税務調査
査察調査も税務調査も税に関する調査です。しかし、両者は似ているようで大きな違いがあります。まず、それぞれの違いを知る前に査察調査と税務調査の概要をご紹介しましょう。
査察調査とは
査察調査は、意図的に売上や所得を隠蔽し、税金を免れようとしたいわゆる脱税の疑いがある企業や個人事業主に対して行う調査です。脱税は犯罪であり、査察調査の目的は正しい税金を納めさせるだけではありません。査察調査では、捜索や差押などを行って証拠の収集を行い、検察へ告発することも目的としています。つまり、査察調査は脱税犯の摘発を目的とし、その他の犯罪の捜査と同じような方法で調査が行われるのです。
ただし、査察調査で脱税が発覚した場合、その他の事件のようにその場で脱税を犯した人を逮捕するわけではありません。脱税の証拠がそろったら検察庁に告発し、検察官による操作が行われた後に、逮捕に至ります。
税務調査とは
税務調査は、納税者が所得税や法人税、消費税を正しく申告をしているか、申告漏れがないかどうかの確認をすることを目的とした調査です。税務調査と査察調査の区別がしっかりついていない場合は、テレビなどで見かけることがある査察調査と同じようなイメージをお持ちになるケースもあるでしょう。
しかし、税務調査は査察調査のように、いきなり複数の捜査員が事務所や店舗などに入り込むことはありません。税務調査では、犯罪捜査のように捜索や差押などが伴うことはなく、検察に告発されるケースもないと考えてよいでしょう。税務調査は刑事事件にまで発展する査察調査とは異なり、申告内容が正しいかどうかのチェックを行い、申告漏れが生じていた場合には、正しい額の納税を求めることを目的とした調査なのです。
ここが違う!査察調査と税務調査
査察調査と税務調査では、以下のような点が異なります。
査察調査は国税局、税務調査は税務署の管轄
税務調査は、事業者を管轄している各税務署に所属する調査官によって行われます。一方、査察調査は国税局の査察部が行う調査です。
そのため、税務調査で調査に訪れる職員は税務署の職員となり、査察調査で訪れる職員は国税局の査察官となります。
査察調査は強制、税務調査は任意で行われる調査
査察調査は、国税局の査察部によって行われる強制的な調査です。裁判所から操作・差押などに関する許可状を得て行われる強制調査であるため、査察調査を拒否することはできません。
一方、税務調査は納税者の任意で行われる調査です。ただし、任意調査とは呼ばれているものの、納税者は税務調査を拒否することはできません。
しかし、任意調査である以上、査察調査のように調査官が事務所などを訪れ、納税者の許可を得ずに、勝手に帳簿を抜き出したり、書類を持ち出すたりすることはできないのです。
査察調査と税務調査は基づく法律も異なる
査察調査と税務調査は、基づく法律もそれぞれ異なります。税務調査は国税通則法に則って手続きが取られることとなり、査察調査は国税犯則取締法を基にして行われます。 2つの法律の名称を比較するだけでも、税務調査と査察調査が違った目的で行われていることがわかるのではないでしょうか。
基本的に、税務調査は適正な申告や納税ができているか、間違っていた場合には指摘や指導をしていくという目的で行われるものです。会社やフリーランスなど、事業を営んでいる法人、個人事業主すべてが調査の対象となります。
一方で、査察調査は悪質かつ多額の脱税行為が疑われる場合に、犯罪の証拠を押さえる目的で行われるという違いがあるのです。
流れで比較!査察調査と税務調査の違い
査察調査と税務調査は、調査の流れにも以下のような違いがあります。
税務調査の流れ
税務調査でもっとも多く行われるのは「任意調査」と呼ばれるものです。任意調査の流れをご紹介します。
税務調査では事前通知がなされる
税務調査では、ほとんどのケースにおいていきなり調査官が現場を訪れることはありません。税務署から「〇月〇日に税務調査で訪問したい」という連絡が事前に入ってから調査が行われます。
事前連絡は調査日の1週間ほど前くらいに電話などで受けるのが一般的で、調査日についても、業務上の理由や健康上の理由などで都合がつかないなど、正当な理由があれば延期や変更なども可能です。
必要な帳簿や書類を準備する
税務署からの事前通知の際、税務調査時に必要となる書類や帳簿が伝えられます。調査をスムーズに進めるためにも、会社の組織図や帳簿、決算書類など、必要な書類を事前に準備しておきます。
実地調査は2日程度
調査当日は、税務署から調査官が派遣されます。「帳簿を見せてもらえますか」「売上の入出金履歴を確認してもいいですか」など、調査の説明や確認も同意を取りながら進められるでしょう。
ただし、任意調査とはいえ、調査の実施については拒否することはできません。納税者には「受忍義務」と呼ばれる義務があり、税務調査の依頼があれば、協力しなければならないと法律で定められているからです。
帳簿やパソコンのデータなども、確認してよいか同意を求められるため、見せたくなければ拒否することが可能です。しかし、ケースによっては調査を妨害しているとみなされ、ペナルティの対象とされる可能性もあるため注意が必要となります。
必要に応じて実地調査後にも確認の連絡が入るケースもありますが、税務調査にかかる期間は2日から数日程度です。
調査結果の説明
調査が完了したら、税務署から結果が報告されます。申告内容に問題がなかった場合には、是認報告が届きます。是認報告が届いた場合は特に必要な対応はありません。
また、申告内容に不備があると指摘された場合には、税務署から指摘された箇所について修正申告を行い、必要に応じて不足分の税金や加算税を支払えば、税務調査は終了です。
査察調査の流れ
査察調査は、上記で説明した税務調査とは異なり、何の前触れもなくある日突然、査察官が乗り込んできます。査察調査は犯罪の証拠を押収したり、脱税の疑いがある事業者の逃亡を阻止したりする目的を持つ、強制的な調査となるからです。
査察部門による情報収集
査察部門では、水面下で脱税に関する情報収集を行います。税務調査の結果、多額の脱税が発覚し、手口が悪質であると判断された場合は、査察部門に情報が引き継がれるケースもあります。
裁判所へ許可状の請求
強制調査の際に差押や捜索などを行うため、裁判所に許可状を請求します。
強制調査
裁判所の許可状を元に、強制調査が行われます。査察調査では、本社や事務所のみならず、工場や支店、店舗、共謀の疑いがある取引先、社長の自宅なども調査の対象となります。証拠隠しや逃亡を防ぐため、同じタイミングで一斉に調査が行われるのです。
テレビや映画、ニュースなどで、スーツを着た大勢の査察官が一斉に乗り込み、大量の書類が入った段ボールや金庫などを押収していくシーンなどを目にすることがあります。こうした映像は、税務調査ではなく査察調査で見られる光景です。
各種帳簿やファイルなどは同意なく押収され、パソコンごと持ち出される場合もあります。調査にかかる期間は短い場合でも数ヵ月を要し、長い場合は1年以上におよぶことも少なくありません。
検察への告発
検察との間で協議が行われ、告発が容認された場合、査察部門が検察に告発をします。
検察による捜査・起訴
告発を受けると、検察官による捜査が行われます。再度、捜索や差押、取り調べが行われ、場合によっては脱税容疑で逮捕・勾留がなされるケースもあります。勾留期間中に起訴・不起訴の判断が行われ、起訴することが決まれば刑事裁判に訴えられることとなります。
地方裁判所での刑事裁判・判決
起訴されると、被告人の立場となり、刑事裁判が行われます。脱税が認められ、有罪の判決が下されると、最長で懲役10年と罰金が科されます。
令和4年度の場合、一審判決では起訴された61件全てに有罪判決が言い渡されており、査察事件単独で最も重いものは懲役1年4ヶ月でした。
調査完了後は、多くの場合脱税に関して刑事告発され、懲役や罰金などの刑事罰に処される可能性があるのも、査察調査が税務調査と大きく異なる点であるといえるでしょう。
税務調査と査察調査での対処法はどう違う?
税務調査と査察調査は、それぞれ異なる点があるものの、基本的な対処法は以下の通りとなります。
調査には協力しても、毅然とした対応を
税務調査も査察調査も、調査を妨害しているとみなされる行為はペナルティの対象となってしまうため、調査中は協力しなければなりません。しかし、調査官や査察官の追及や指摘について、何でも認めなければならないわけではありません。
計上ミスや勘違い、申告漏れなどを意図的に操作したり、悪意を持ってごまかしたりしているのではないか、といった疑いを持たれることもあるでしょう。そうした場合でも、事実でなければ毅然と対応することが大切です。 攻撃的な態度を取るのではなく、事実に基づいた主張をする、という姿勢で対応します。調査で追及されて怯えたり、緊張してしまったりして何でも認めてしまう、または曖昧な返事をする、といった対応は避けましょう。
調査段階では、事前に証拠を掴んでいるケースも多いですが、悪質性が高い可能性があるかどうかを探りながら調査している場合もあります。
脱税しているといえるか微妙なラインや、修正が必要な申告の額について、実際よりも多く見積もられているなら、正当な主張をして交渉が必要となるでしょう。
対応に不安がある場合は税理士へ相談しよう
「調査中にしっかりと対応できる自信がない」「何を認めてよいのかわからない」など、査察調査や税務調査に不安がある場合は、税金の専門家である税理士へ相談することをおすすめします。
査察調査を受けた場合、これまでの状況を見るとかなりの高い確率で検察に告発されることとなります。納税者側の主張を正しく伝えるためにも、査察調査のサポートをしている税理士に一度相談してみるのも手段の1つです。
また、税務調査の場合には、税務署から事前通知が行われます。税務調査の日時を調整することもできるため、税理士に相談をし、税理士が立ち会える日時で調査日を調整するとよいでしょう。
税務調査や査察調査の対応実績がある税理士事務所なら、調査への同席や意見書の提出など、税務署や国税局への対応に心強いサポートを受けることができます。
まとめ
国税局の査察調査と税務署の税務調査は、管轄や法律、調査方法など、異なる点が多くあります。基本的に、どちらの調査も拒否することはできませんが、事実と違う疑いをかけられた場合には、毅然とした対応が必要です。
調査の対応に不安がある場合には、税務署との交渉に強い税理士へ相談しながら進めていくとよいでしょう。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
- 現在、税務調査が入っているので困っている
- 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
- 税務調査に強い税理士に変更したい
- 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
税務調査の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
- 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
- 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
- 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断