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海外取引や海外資産は税務調査の強化対象になっている!調査前に押さえておくべきこととは?
この記事の監修
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏
(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。
多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
海外資産の所有や海外取引の多い会社を経営している場合、税務調査の対象になりやすいと言われていますが、事実なのでしょうか。税務調査では海外取引のどのような点をチェックされるのか、注意点や押さえておきたいポイントなども知りたいところです。
ここでは、海外取引や海外資産が税務調査の強化対象となっているのか、税務調査がやって来た場合の注意点や対処法などについて分かりやすく解説しています。税務調査でどのような指摘を受けるのか、国外財産調書や必要な資料などについて知りたい際の参考としてお役立てください。
税務調査がすでに入っており、対応に困っている方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
目次
コロナ禍の税務調査事情はどうなっている?
まずは、コロナ禍が続いている現況の税務調査事情について解説します。
調査件数は減少したものの、1件あたりの追徴税額や申告漏れは増加
税務署では、税務調査に対応できる人員が限られていることから、1年あたりに実施できる調査件数は限られています。
加えてコロナ禍の影響により、近年は実地調査件数が減少傾向となっています。しかし、それでも令和2事務年度には約25,000件の法人税、消費税に関する税務調査が行われ、5,300億円近い申告漏れ所得や、1,900億円を超える追徴課税のあったことが分かっています。
前年度のデータと比べると、調査件数自体は3~4割程度まで減少したものの、申告漏れや追徴課税額は2倍程度まで増加しています。
参考資料:国税庁「令和2事務年度法人税等の調査事績の概要」
源泉所得税や消費税還付申請法人への調査も強化
また、源泉所得税や消費税の還付申請した法人に対する税務調査も広く行われています。同じく令和2事務年度の統計によると、29,000件の源泉所得税に関する税務調査が実施されています。こちらも法人税、消費税と同じく、前年度の32%程度の実施件数となっていますが、全体の追徴税額は145億円で、1件あたりの追徴税額は約507,000円と、前年度より1.5倍に上昇しています。
源泉所得税に関する調査についても税務署は積極的に行っており、件数は抑えつつも、情報収集によって追徴課税が多く発生しそうな会社を調査対象としていることが分かるでしょう。
海外取引法人への調査は強化されている?
以下の理由から、海外取引のある法人に対する調査は強化されていると考えられます。
海外取引に関する申告漏れを国税庁や税務署は把握している
「令和2事務年度法人税等の調査事績の概要」の中で、国税庁は海外取引のある法人について、法人税と源泉所得税のいずれも申告漏れ額について把握していることを発表しています。
申告漏れがあると思われる額は、法人税で1,530億円とされており、源泉所得税に関しては、令和2年の実績で14億円の追徴課税が実施されています。
「海外取引法人に対する取組」として、個別に発表していることからも、国税当局が海外取引に対して目を光らせていることが分かるでしょう。
海外取引で調査対象になりやすいポイント
海外取引のある会社で調査対象とされやすいポイントとしては、以下が挙げられます。
・外国子会社に対する合算税制の適用ミス
・投資資金に関する海外送金依頼の水増し
・非居住者の給与からの源泉徴収漏れ
・非居住者に不動産を譲渡した場合の源泉徴収漏れ
ペーパーカンパニーや虚偽の書類作成などをした場合、税務調査では必ず指摘されると考えておいた方がよいでしょう。源泉徴収漏れや免税の要件を満たしているかなど、今一度の確認が必要な案件も、税制が複雑な海外取引には多いのです。
海外取引や海外資産に関して税務調査が入った場合の対処法
海外取引や海外に所有している不動産などについて税務調査が入った場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。
法定調書などの書類を揃える
海外取引や所有している海外資産に関する税務調査では、法定調書などの書類をしっかりと揃えておくことが大切です。税務調査が入る前から、税務調査を受ける前提で管理するとよいでしょう。海外取引や海外資産で必要となる法定調書は以下の通りです。
・国外送金等調書
・国外証券移管等調書
・国外財産調書
・財産債務調書
上記のうち、国外送金等調書と国外証券移管等調書については、所定の取引が発生した際に金融機関が税務署へ提出する書類となっています。国外財産調書と財産債務調書については義務者が税務署へ提出しますが、書き方が分からない場合には、税理士などへ相談して作成しましょう。
法定調書以外にも、租税条約に基づく情報交換などにより、かなり詳しいところまで確認したうえで、税務署が税務調査に訪問している場合もあります。
虚偽や架空の書類作成は避け、正しい申告を行う前提であるのは言うまでもありません。
法定調書以外に必要な書類
税務調査では、法定調書以外にも、以下のような書類の提出を依頼されることがあります。
・会社案内、組織図、役員名簿などの会社概要
・議事録や稟議書
・決算書類など各種帳簿データ
・請求書、領収書類
上記に加え、海外取引がある場合は
・海外関連会社の概要
・財務諸表、申告書類
・契約書類
・海外送金依頼書
などの提示も求められる可能性が高いです。国内のみの取引に比べると、準備するべき資料もデータも多くなるため、どのような資料が必要か、作成した方がよい書類はあるかなどについては、海外取引や税務調査の対応実績がある税理士に依頼して進めるのがよいでしょう。
まとめ
海外取引や海外に資産を所有している企業に対して、税務署や国税庁では情報収集や税務調査を強化して実施している傾向です。その理由としては、多くの申告漏れや追徴課税が発生しやすい点が挙げられるでしょう。
特に海外リベートの損失計上や非居住者に対する源泉徴収漏れ、海外子会社の合算における誤りなどが多く指摘されています。
調査対象となった場合、税務調査前に、租税条約や法定調書などから、事前に問題点を把握して調査に訪問されている可能性が高いと言えます。
正しい申告を行うことはもちろんですが、準備する書類や資料も膨大となるため、必要に応じて税理士のサポートを受けながら税務調査対策することをおすすめします。
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