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会社設立
1人での会社設立も社会保険の加入は必須?起業後の加入手続きや必要書類をご紹介
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
会社設立をした場合、社会保険の加入義務が発生します。たとえ従業員を雇わず、経営者1人だけの会社を設立した場合であっても、法人は社会保険に加入しなければなりません。
個人事業主は国民年金保険や国民健康保険に加入しますが、法人が加入する厚生年金保険と健康保険は加入手続きや保険料などが違ってきます。また、個人事業主の際には加入することがなかった雇用保険や労災保険への加入も必要になる場合があります。
会社設立をしたにもかかわらず、社会保険の加入手続きを怠っていた場合、罰金などの罰則が科せられる恐れもあるため、会社設立をしたら忘れずに社会保険の手続きを行うようにしましょう。
今回は、会社設立後に必要な社会保険の加入手続きの方法や必要な書類などについて詳しくご説明します。
会社設立後に加入が必要な社会保険とは
社会保険には、次の5つがあります。
・健康保険
・厚生年金保険
・労働者災害補償保険(労災保険)
・雇用保険
・介護保険
このうち、従業員を雇用せず、経営者が1人だけの会社を設立した場合でも役員報酬を受け取っている限り加入しなければならない保険が、健康保険(介護保険)と厚生年金保険です。また、従業員を雇用した場合には、労災保険と雇用保険にも加入しなければなりません。
狭義の社会保険である健康保険と厚生年金保険
社会保険のうち、健康保険と厚生年金保険は従業員や役員の数にかかわらず、報酬が発生している限り、経営者が1人の会社を設立した場合でも必ず加入しなければならない保険です。また、従業員を雇用した場合、健康保険と厚生年金保険の加入要件を満たす場合には、会社を通じて加入の手続きを取る必要があります。
健康保険は、病気や怪我などに備えた公的な医療保険であり、厚生年金保険は国民年金に上乗せして納付する公的年金制度です。
一般的には、健康保険と厚生年金の2つを合わせて社会保険と呼ぶことが多くなっています。
健康保険と厚生年金保険の加入要件
健康保険と厚生年金保険への加入要件は、次のとおりです。
・フルタイムで勤務している
・1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数がフルタイムの社員の3/4以上である
したがって、正社員に限らず、フルタイムで勤務しているパートやアルバイトの従業員、フルタイムの3/4以上の労働時間・労働日数のパートやアルバイトの従業員も社会保険に加入させなければなりません。
また、従業員数が101人以上の企業の場合、上の加入要件を満たす人に加え、次の条件をすべて満たす従業員も加入対象となります。
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
社会保険の加入要件は緩和される傾向にあり、2024年10月からは従業員数が51人以上の企業も、上の4つの条件に当てはまる従業員を社会保険に加入させなければならなくなります。
健康保険料と厚生年金保険料、介護保険料について
健康保険と厚生年金保険の保険料は、標準的な報酬月額から算出します。国民健康保険は、被保険者が全額保険料を負担しますが、社会保険の場合、会社と被保険者が保険料を折半して支払うことになります。
健康保険の保険料は、標準報酬月額に保険料率をかけることで算出できます。保険料率は健康保険組合によって変わり、また、毎年見直しが行われますが、ほとんどの都道府県で10%前後となっています。
厚生年金の保険料は、標準報酬月額×保険料率で計算できます。保険料率は現在、18.3%で固定されているため、厚生年金保険料は標準報酬月額×18.3%で求められます。
いずれの場合も、半分を被保険者(従業員)、半分を事業主が支払うこととなるため、企業負担分は保険料×1/2で算出できます。
また、介護保険は40歳になると加入が義務付けられる保険で、満65歳の誕生日の前日が属する前の月まで保険料を支払わなければならないものです。介護保険料率も毎年見直しが行われ、協会けんぽの場合、令和6年度の介護保険料率は1.60%となっています。介護保険の保険料は健康保険料と一緒に納付することとなり、介護保険料も事業者と被保険者が折半をして負担します。
健康保険と扶養
国民健康保険では、親族を扶養するという概念はありません。しかし、健康保険の場合、一定の条件を満たした配偶者や子などの親族を扶養に入れることができます。被扶養者になった場合、被扶養者は保険料を納付する必要はありませんが、病気や怪我での治療が必要になった場合や出産をした場合などに保険の給付を受けられます。
被扶養者の範囲は次のとおりです。
1.被保険者の直系尊属、配偶者(事実上の婚姻関係にある人)、子、孫、兄弟姉妹で被保険者に生計を維持されている人
2.被保険者と同じ世帯で、被保険者の収入によって生計を維持されている次の人
①被保険者の三親等以内の親族(1に該当する人を除く)
②被保険者の配偶者で、事実上の婚姻関係にある人の父母や子
③②の配偶者が亡くなった後における父母や子
ただし、後期高齢者医療制度の被保険者を扶養することはできません。
また、被扶養者は、被保険者の収入によって生計を維持されていることが条件となるため、収入の基準を満たす必要もあります。
被保険者と被扶養者が同一世帯の場合は、被扶養者の年間収入が130万円未満であり、年間収入が被保険者の1/2未満でなければなりません。(被扶養者が60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合の年間収入の条件は180万円未満です。)
被扶養者が被保険者と同じ世帯に暮らしていない場合には、年間収入が130万円未満(60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、被扶養者の収入が被保険者からの援助による収入額より少ないことが認定の条件となります。
親族などを扶養する場合には必要となる書類が増えるため、社会保険の加入手続きをする際には、従業員に扶養者がいるかどうかも確認したうえで手続きを行う必要があります。
従業員を雇用した場合に加入が必要な労災保険と雇用保険
経営者が1人の会社を設立した場合でも加入が必要な健康保険と厚生年金保険とは異なり、労災保険と雇用保険は従業員を雇用した場合に加入が必要となる社会保険です。
労災保険の加入要件
労災保険は、原則として、雇用形態や勤務時間等にかかわらず、1人でも従業員を雇用した場合に加入が必要な保険です。労災保険は、労働者が仕事中や通勤途中に起きた事故や病気などに備えた保険で、治療費の補償や休業時の補償、障害が残った場合などに補償を受けられます。また労働災害によって労働者が死亡した場合には、遺族に対して補償金が給付されます。
労災保険の保険料は、全額、事業主の負担となります。また、役員だけの会社の場合、役員は労働者には該当しないため労災保険への加入の必要はありません。
雇用保険の加入要件
雇用保険も労災保険の1つで、従業員を1人でも雇用した場合、雇用保険の適用事業所となります。雇用保険は、従業員が失業や休業した場合に給付金が支給される制度です。また、技能習得手当や就業促進手当、育児休業給付金なども雇用保険から支払われます。
1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用の見込みがある従業員は雇用保険の加入が必要となります。雇用保険の保険料は、労災保険とは異なり、事業主と従業員がそれぞれ負担割合分を納付します。
社会保険に加入しない場合のリスク
加入が義務付けられている健康保険と厚生年金の加入手続きを怠った場合、年金事務所などから加入指導が行われます。度重なる指導にも従わなかった場合には、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。
また、年金事務所などの指導により、強制加入となった場合、未納分の社会保険料は過去2年間にさかのぼって徴収される可能性があります。退職した従業員分の保険料など、従業員から保険料を徴収できない場合は会社が従業員の負担分の保険料を納めなければならいケースも出てくるでしょう。また、保険料の納付が遅れた場合には延滞金も発生します。
そのほか、ハローワークに求人を出すこともできなくなるため、会社設立後は忘れずに社会保険の加入手続きを取るようにしましょう。
健康保険・厚生年金保険の加入手続きの方法と必要な書類
健康保険と厚生年金保険の加入手続きは、本店を管轄する年金事務所で行います。
加入手続きに必要な書類
健康保険と厚生年金保険の加入時に必要な書類は次のとおりです。
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
・健康保険・厚生年金被保険者資格取得届
・健康保険被扶養者(異動)届(被扶養者がいる場合のみ)
・登記事項証明書
・登記簿上の所在地と事業を行っている所在地が異なる場合は賃貸借契約書の写し等、所在地の確認ができる書類
・法人番号指定通知書のコピー
・戸籍謄本または住民票の写し(被扶養者がいる場合。ただし、マイナンバーが記載され、事業主が戸籍謄本や住民票の写しなどで続柄を確認し、備考欄の必要箇所にチェックを入れている場合は不要)
・収入金額を確認できる書類(被扶養者がいる場合のみ)
「健康保険・厚生年金保険新規適用届」は、健康保険と厚生年金保険に初めて加入する事業所が提出する書類です。また、「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」は、被保険者としての資格を得るための書類で、役員と従業員を含めた被保険者全員分の書類の提出が必要になります。
また、「健康保険被扶養者(異動)届」は、扶養家族がいる場合に提出が必要となる書類です。扶養者がいる場合は、戸籍謄本や住民票の写しなどの続柄を確認できる書類や収入金額を確認できる書類が必要となるケースもあります。
手続きの方法と期限
健康保険と厚生年金保険の加入手続きは、年金事務所の窓口に必要書類を持参する方法のほか、郵送する方法、オンラインで申請する方法があります。
書類の提出期限は、会社設立日から5日以内です。また、会社設立後に社会保険の加入要件を満たす従業員を雇用した場合には、雇用した日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」や「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。
書類の入手先
健康保険と厚生年金保険の加入に必要な書類は、年金事務所の窓口で入手できるほか、年金事務所のウェブサイトからもダウンロードが可能です。
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
・健康保険 被扶養者(異動)届
労災保険の加入手続きの方法と必要な書類
労災保険は、従業員を1人でも雇用した場合に加入義務が発生する保険です。労働保険の加入手続きは、本店の所在地を管轄する労働基準監督署で行います。
加入手続きに必要な書類
労災保険の加入手続きには次の書類が必要です。
・労働保険保険関係成立届
・労働保険概算保険料申告書
・登記事項証明書
・登記簿上の所在地と事業を行っている所在地が異なる場合は賃貸借契約書の写し等、所在地の確認ができる書類
・営業許可証や請負契約書等、事業実態を確認できる書類
・雇い入れの日を確認できる書類(労働者名簿、出勤簿、雇入通知書)
・労働条件を確認できる書類(パート・アルバイトの場合のみ、労働条件通知書、雇入通知書など)
手続きの方法と期限
労災保険の手続きは、本店の所在地を管轄する労働基準監督署の窓口で行えるほか、オンラインによる申請や郵送での手続きもできます。
「労働保険保険関係成立届」は、事業所と加入者の保険関係が成立したことを届け出る書類です。また、「労働保険概算保険料申告書」には、保険関係が成立した日からその年度の末日までに、労働者に支払う予定の賃金の総額に保険料率をかけて算出した概算の保険料を記入します。
「労働保険保険関係成立届」の提出期限は、従業員の雇用を開始した日の翌日から10日以内、「労働保険概算保険料申告書」の提出期限は、従業員の雇用を開始した日の翌日から50日以内です。
雇用保険の加入手続きに必要な書類
雇用保険も従業員を雇用した場合に加入が必要な保険です。雇用保険雇用保険の加入手続きは、本店の所在地を管轄するハローワークで行います。
雇用保険の手続きは、労災保険の加入手続きが終わった後でなければできません。なぜなら、雇用保険の加入手続きには、労働基準監督署から発行される「労働保険保険関係成立届」の事業所控えの提出が必要になるからです。雇用保険の手続きを行う前に、必ず労災保険の加入手続きを済ませるようにしましょう。
加入手続きに必要な書類
雇用保険の手続きには次の書類が必要です。
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
・労働保険保険関係成立届の事業所控え(労働基準監督署での受理が済んでいるもの)
・登記事項証明書、事業許可証、工事契約書、不動産契約書、源泉徴収簿、他の社会保険の適用関係書類等のいずれかを確認できる書類
・労働者名簿
・賃金台帳(雇い入れ時から現在まで)
・出勤簿またはタイムカード(雇い入れ時から現在まで)
・雇用契約書(有期契約労働者の場合)
手続きの方法と期限
雇用保険の手続きは、本店の所在地を管轄するハローワークで行います。窓口で書類を提出する方法のほか、郵送する方法、オンラインで申請する方法があります。
「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格届」の提出期限は、雇用した日の属する月の翌月10日までです。ハローワークでの手続きが完了すると「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」が交付されます。
書類の入手先
「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」は、ハローワークの窓口で入手できるほか、ハローワークのウェブサイトからもダウンロードできます。
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届(連記式)総括票
まとめ
社会保険とは、健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険、介護保険の5つの保険ですが、狭義の意味の社会保険は健康保険と厚生年金の2つを指します。
会社を設立し、法人になったときには健康保険と厚生年金の加入義務が発生します。たとえ従業員を雇用していない場合であっても、会社から役員報酬を受け取るのであれば健康保険と厚生年金に加入しなければなりません。また、従業員を1人でも雇用した場合には労災保険と雇用保険の手付きも必要です。
社会保険の加入手続きはそれぞれ手続きの期限が定められており、万が一、手続きを怠った場合には罰則が科せられる可能性もあるため、会社設立時には忘れず社会保険の手続きも済ませるようにしましょう。
とはいえ、会社設立前後は何かと準備が多く忙しい時期です。会社設立の負担を抑え、効率よく各種の手続きを済ませたい場合には社会保険労務士も所属する税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
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