2025.02.20

会社設立

プロ野球選手が法人化するメリットとは?注意すべきポイントも解説

読了目安時間:約 6分

プロ野球選手は、野球少年の憧れの職業です。また、日本のプロスポーツの中でもプロ野球は年俸が高いスポーツとして知られています。しかし、プロ野球選手になると法人化をし、会社を設立するケースが少なくありません。では、なぜ法人化をするプロ野球選手が多いのでしょうか。

今回は、プロ野球選手が法人化するメリットや法人化の前に知っておきたい注意点などについてご説明します。

プロ野球選手が法人化することについて

プロ野球選手が法人化する背景には、プロ野球選手は個人事業主であることが関係しています。

プロ野球選手は個人事業主

プロ野球の球団は、株式会社としてプロ野球チームを運営しています。しかし、球団で働くスタッフは球団と雇用契約を結び、従業員として仕事をしていますが、プロ野球選手は個人事業主として球団と契約を結ぶケースが一般的です。つまり、プロ野球選手は、球団の社員ではなく、個人事業主として球団と契約を締結します。そのため、球団から支払われる報酬は給与所得ではなく、事業所得として扱うことになります。また、給与所得のように支払われる報酬から源泉徴収がなされることもないため、プロ野球選手は自身で確定申告を行い、所得税などの納税をしなければなりません。

プロ野球選手が法人化するということは

プロ野球選手が法人化する場合は、自身をマネジメントする会社を設立するケースが一般的です。プロ野球選手に限りませんが、プロスポーツ選手が活躍すると、テレビやCMなどへの出演依頼が入り、出演料の支払いが発生します。また、スポンサー契約をしている企業から得られるスポンサー契約料を得るケースもあるでしょう。

マネジメント会社を設立すると、選手が法人と業務委託契約を締結し、これらの副業については法人が窓口となって話を進めます。また、選手が個人として報酬を受け取るのではなく、法人が報酬を受け取る形を取るのです。

プロ野球選手が法人化をする最大の理由は節税

プロ野球選手が法人化し、マネジメント会社を立ち上げる理由の1つは節税をするためです。プロ野球選手となり、高額な年俸を得るようになると、課せられる税金の額も高額になります。所得税は累進課税により、所得額が上がるほど税率が高くなる仕組みです。

プロ野球選手としての実績が認められ、年俸4,000万円以上になった場合に課せられる所得税率は45%にも上ります。所得税だけでなく、10%程度の住民税の納税も必要となるため、年収の半分以上となる55%分の税金を納めなければなりません。

さらに、プロ野球選手としてテレビ出演やCM出演の機会が増え、スポンサー契約も増えれば、球団からの報酬以外にも報酬を得られるようになります。このとき、法人化していなければ、球団から支払われる本業の報酬と副業の報酬の合計が個人事業主の事業所得として扱われるため、課税所得額はますます高額になるのです。

しかし、法人化した場合、副業の報酬は会社が受け取ることになります。会社の所得に課せられる税金は所得税ではなく、法人税です。資本金1億円の会社の法人税の税率は、800万円未満の部分については15%、800万円を超える部分については23.20%となっています。そのため、法人化をすると課せられる税金の税率の違いから節税効果を期待できるのです。

プロ野球選手が法人化するメリット

プロ野球選手が法人化をするメリットは大きく5つあります。

節税対策ができる

プロ野球選手が法人化をするメリットの1つが節税対策です。前述のように個人が納めるべき所得税は、所得額が大きくなるほど税率が高くなります。プロ野球選手の場合、活躍すればするほど年収が高くなるため、最大税率である45%の税率が課せられるケースも少なくありません。法人化をした場合、法人に課せられる法人税の税率は最大でも23.2%です。テレビ出演やスポンサー契約などが増え、副業の収入が増えた場合、節税効果を期待できます。

経費に計上できる幅が広がる

法人化すると個人事業主よりも幅広い経費が認められます。例えば、プロ野球選手の場合、試合のために遠征するケースが多くあります。その場合にかかる交通費や宿泊費は、個人事業主の場合でも経費として計上できますが、プロ野球選手の場合は遠征が多いため、その都度、交通費や宿泊費を経費として計算するとなると処理に手間がかかります。しかし、法人化した場合、出張旅費規程を設け、出張したときに支給する旅費として、社会通念上妥当な額を設定すれば、経費処理を簡素化することが可能です。さらに、個人事業主には認められない日当を支給することもできるため節税効果も得られます。

所得の分配ができる

法人化し、親や妻など、親族を役員に就任させ、マネジメントや経理の業務を任せた場合、会社から親族に対して役員報酬の支払いが可能です。個人事業主の場合、プロ野球選手が得る所得が大きくなるため、課せられる税額も高くなります。しかし、法人化すると、親族にも給与を支払えることで所得の分配が可能になるのです。

また、一定条件を満たせば、役員報酬は損金として扱うことができるため、会社の所得も圧縮することができます。

退職金の制度を利用できる

プロ野球選手は、一般的なサラリーマンなどに比べると、現役として働ける期間は短くなります。そのため、現役を終えてからどのような人生を歩むのか、セカンドキャリアや引退後のお金についても考えなければなりません。

個人事業主の場合、退職金制度はありません。しかし、法人化すると退職金制度の利用が可能です。退職金の支給を受けるときには退職金に対して税金が課せられますが、退職所得に課せられる税金の額は、給与所得に課せられる額よりも軽減される仕組みとなっています。

勤続年数が20年を超えた場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の式で計算をすることになります。また、勤続年数が20年以下の場合には40万円×勤続年数分、退職所得控除ができます。さらに、課税退職所得金額は、退職所得控除額を控除後の金額の1/2となるため、給与所得を受け取る場合に比べ、大幅に所得税の額が軽減されるのです。

例えば、プロ野球選手になってすぐに法人化をし、21年間勤続して、退職金1億円を受け取る場合を例に考えてみましょう。この場合、退職所得控除は、870万円となります。課税対象となるのは、1億円から870万円を引いた9,130万円をさらに半分にした4,565万円になるのです。給与として1億円を受け取った場合、控除できる額は195万円のみです。したがって、所得税の課税対象額は9,805万円となります。この課税対象額の差を見れば、退職金として受け取る場合、給与所得に比べ大きな節税効果を得られることがお分かりになるでしょう。

引退後のキャリアにも活用できる

プロ野球選手を引退した後も、法人をそのまま運営することができます。例えば、プロ野球選手としての知名度を活かしてタレント活動をしたい場合や講演会などを行いたい場合、野球教室などを運営したい場合などもあるでしょう。その場合、プロ野球選手時代に設立した会社をそのまま活かし、活動を進めることが可能です。

セカンドキャリアに活かせる点も法人化のメリットだといえるでしょう。

プロ野球選手が法人化する際の流れ

プロ野球選手がマネジメント会社を設立し、法人化する場合に必要な手続きについて、順にご説明します。

会社設立に必要な情報を決める

法人化に伴い必要になる会社名や事業目的、本店所在地、資本金の額、役員構成などを決めておきます。プロ野球選手が法人化する場合には、選手本人が代表取締役となり、親族が取締役などに就任するケースが多くなっています。

また、会社設立時の事業目的はマネジメント業務、イベント企画・運営、広告宣伝などにしておくとよいでしょう。将来、セカンドキャリアとして引退後に営みたい事業があれば、法人化の際に事業目的に加えておくと、後々、登記変更をする必要がありません。

定款の作成と認証

定款とは、会社の基本的なルールをまとめた書類で、法人化の際に法務局への提出が必要になるものです。株式会社を設立する場合は、定款作成後に公証役場で認証を受ける必要があります。合同会社など、株式会社以外の形態を選択する場合には定款の認証は不要です。

資本金の払い込み

定款に定めた資本金の額を払い込みます。この時点ではまだ法人化の手続きが完了していないため、発起人の個人口座に資本金の額を払い込み、法人化の手続きが完了した後、法人名義の口座を開設し、資本金を移動させます。

会社設立登記の申請

必要な書類を準備し、法務局で会社の設立登記の申請をします。インターネットから申請することも可能です。このとき、登録免許税の支払いが必要になります。書類に問題がなければ2週間程度で会社設立手続きが完了します。

税務署、年金事務所などでの手続き

会社設立の手続きが完了したら、税務署や地方自治体の窓口などに法人設立届出書などの提出をします。また、年金事務所において、厚生年金や健康保険の加入手続きも必要です。従業員を雇用する場合は、労災保険や雇用保険の手続きもしなければなりません。

プロ野球選手が法人化する際の注意点

プロ野球選手が法人化をするケースは少なくありません。しかし、法人化をする際には事前に把握しておかないと、法人化を後悔するケースも生じます。プロ野球選手が法人化をする際には、次の点に注意するようにしましょう。

日本のプロ野球では、球団と法人は契約できない

法人化し、選手をマネジメントする会社が球団と契約を締結すれば、球団から支払われる報酬はマネジメント会社が受け取ることになります。その場合、法人税の税率は所得税よりも低いため、大幅に節税が可能です。しかしながら、日本のプロ野球を統括する一般社団法人日本野球機構(NPB)の規約では、球団と選手個人との契約を原則としており、球団と法人の業務委託契約は認めていません。また、野球選手契約はプロ野球選手個人となされ、報酬も個人に対して支払われるとされています。したがって、プロ野球選手は法人化をした場合でも、球団とは個人として契約を結ばなければならないのです。当然、球団から支払われる本業の報酬は個人事業主として受け取ることになるため、法人化しても本業の報酬に関する節税はできないという点を理解しておかなければなりません。

設立した会社が税務調査の対象になる可能性がある

プロ野球選手が法人化し、会社を設立した場合、設立した会社が税務調査の対象になるケースがあります。適切なマネジメント業務を行っていないにもかかわらず、親族に対して高額な役員報酬が支払われている場合などは、節税だけを目的に設立された実体のない法人であるはないかと疑われる可能性があるのです。法人化する際には、適切な業務を行うとともに、役員報酬の額も不当に高い額に設定しないようにしましょう。また、確定申告なども正しく行うため、税理士などの専門家にも相談することをおすすめします。

法人化と法人の維持には手間とコストがかかる

法人化するにあたってはさまざまな手続きが必要です。また、定款の認証や設立登記にも費用が発生します。さらに、法人化すると厚生年金と健康保険への加入義務が発生するため、法人が厚生年金保険料と健康保険料の半分を負担しなければなりません。従業員を多く雇用する場合などは、社会保険料の負担も大きくなります。また、法人化すると、たとえ赤字であった場合でも法人住民税の均等割り分は負担が必要です。さらに、法人を解散する際にも費用がかかります。

プロ野球選手が法人化した場合、その法人は、プロ野球選手の副業部分の報酬を収入とします。そのため、副業の報酬額によっては法人化の設立や維持のためにかかるコスト負担の方が大きくなる可能性もあるのです。したがって、法人化をすべきかどうかは慎重に検討した方がよいでしょう。

まとめ

プロ野球選手の法人化とは、テレビやCMなどの出演料、スポンサー契約料などを管理するマネジメント会社を設立することです。法人化すると、プロ野球選手として球団から受け取る報酬と副業の報酬を区分でき、家族に役員報酬を支払うこともできるため、節税につながる可能性があります。しかしながら、プロ野球選手として受け取る本業の報酬を法人の所得にすることはできません。そのため、法人化しても節税につながるのは、副業で得られる収入部分に限られることに注意が必要です。

法人化を検討する場合には、プロ野球選手の法人化などに詳しい税理士などに相談し、法人化することでどの程度のメリットを得られるのかを踏まえ、慎重に判断することをおすすめします。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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