2024.10.7

会社設立

会社設立時に必要な定款とは?記載事項や認証について

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

会社設立時には、必ず「定款(ていかん)」を作成し、登記申請の際に提出をしなければなりません。定款は、会社の基本的な情報やルールなどを記載したもので、会社の憲法とも呼ばれる重要な書類です。

定款に記載しなければならない事項は法律で決められており、記載漏れがあった場合には、法務局に登記申請をしても受理されません。そのため、会社設立時には定款の役割や内容についてしっかりと理解し、スムーズに会社設立手続きを進めることが大切です。

今回は、定款の作成方法や定款作成後の認証手続き、定款を変更する場合の手続きなどについてご説明します。

定款とは

定款とは、会社やその他の法人の事業目的や、組織、活動に関する基本的な情報や規則を示す書類です。会社設立の場合には発起人が定款を作成し、設立登記申請書とともに法務局に提出しなければなりません。

紙の定款と電子定款

定款には紙の定款と電子定款の2種類があります。紙の定款は紙に印刷したものに捺印をして作成します。一方、電子定款の場合は、定款をPDFファイルで作成し、電子署名を行います。

紙の定款を作成する場合には、4万円分の印紙を貼付する必要がありますが、電子定款の場合は、印紙は不要です。しかし、マイナンバーカードを読むICカードリーダライタや、電子署名用のソフトなどの準備が必要になります。

定款に記載すべき事項について

会社法では、定款に記載すべき事項を定めており、記載事項は「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分類されています。

設立する会社の形態により、定款に記載すべき事項には若干の違いがあります。ここでは、日本で会社設立時に選ばれることが多い、株式会社と合同会社の場合の定款についてご説明します。

絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、会社法で必ず記載しなければならないと定められている事項で、具体的には次の項目を指します。

<株式会社の場合>

・事業の目的

・商号(会社名)

・本店の所在地

・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(資本金の額)

・発起人の氏名又は名称及び住所

<合同会社の場合>

・目的

・商号(会社名)

・本店の所在地

・社員の氏名または名称、住所

・社員の全部を有限責任社員とする旨

・社員の出資の目的とその価額または評価基準額

相対的記載事項

相対的記載事項とは、必ず記載しなければならない事項ではないものの、定款に記載しなければ効力を認められない事項のことです。相対的記載事項に該当する主な事項は次のようなものになります。

<株式会社の場合>

変態設立事項(会社法第28条により定款の定めが必要とされている事項)

・金銭以外の財産を出資(現物出資)する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額、割り当てる設立時発行株式の数

・株式会社の成立後に譲り受ける契約の財産と価額、譲渡人の氏名又は名称

・株式会社の成立により発起人が受ける報酬、発起人の氏名または名称

・株式会社の負担する設立に関する費用

変態設立事項以外の事項

・株式の譲渡制限(会社法第107条第2項第1号)

・取締役会、監査役等を置くことができる旨(会社法第326条第2項)

・存続期間又は解散の事由(会社法第471条第1号、第2号)

・公告方法(会社法第939条第1項) 等

<合同会社の場合>

・持分の譲渡の要件(会社法第585条第4項)

・業務を執行する社員(業務執行社員)の指名又は選任方法(会社法第590条第1項)

・社員又は業務執行社員が2人以上いる場合の業務の決定方法(会社法第590条第2項、第591条第1項)

・合同会社を代表する社員(代表社員)の指名又は互選(会社法第599条第3項)

・存続期間又は解散の事由(会社法第641条第1号、第2号) 等

任意的記載事項

定款の記載事項のうち、絶対的記載事項と相対的記載事項以外の事項で、会社法の規定に違反しないものを指します。

<株式会社の場合>

・定時株主総会の招集時期

・株主総会の議長

・取締役や監査役の員数

・事業年度 等

<合同会社の場合>

・業務執行社員の員数

・業務執行社員の報酬

・事業年度 等

定款の絶対的記載事項の書き方と注意点

定款に必ず記載しなければならない絶対的記載事項の書き方と注意点について、ご説明します。

事業の目的

会社がどのような事業を行っていくのか、会社の事業内容を記載します。定款の事業目的に記載されていない事業は行うことはできません。会社設立後、定款に記載された事業以外の事業を営む場合には定款を変更するとともに、法務局で登記変更の手続きが必要になります。会社設立当初は行う予定がなくても、将来的に手掛ける予定のある事業があれば、予め事業の目的に含めておくと良いでしょう。ただし、あまりに脈絡なく、多くの目的が含まれている場合、取引先や金融機関から不審に思われるケースもあるため注意が必要です。

商号(会社名)

会社名に使用できる文字や記号は決まっており、会社名の前後には会社の種類を入れる必要があります。すでに存在している会社と同じ商号を選ぶと、取引先からも間違われやすく、既存の会社とのトラブルに発展するリスクもあるため、分かりやすく、覚えやすいオリジナルの商号を選ぶようにしましょう。

本店の所在地

事業所の住所を記載します。自宅やバーチャルオフィスを本店の所在地として登録することも可能ですが、後々、移転をする場合などは登記変更手続きが必要になります。

資本金の額(社員の出資の目的とその価額または評価基準額)

株式会社の場合は、出資金の総額を記載します。また、合同会社の場合は、社員の出資目的と出資形態、金額を記載します。ただし、現物出資をした場合には、その価格または評価基準額を記載することになります。

発起人・社員の氏名又は名称及び住所

株式会社の場合は発起人、合同会社の場合は、社員の全員の氏名と住所を記載します。

社員の全部を有限責任社員とする旨(合同会社の場合のみ)

合同会社では、万が一会社が倒産した場合でも、出資額の範囲内のみの責任を負う有限社員となります。定款では、社員全員が有限責任社員である旨を記載しなければなりません。

株式会社における定款の相対的記載事項の書き方と注意点

定款に記載することが必須ではないものの、記載しなければ効力を認められない事項が相対的記載事項です。ここでは、株式会社の場合の相対的記載事項についてご説明します。

金銭以外の財産を出資(現物出資)する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額、割り当てる設立時発行株式の数

現物出資をする場合に、出資した人の名前や出資財産の内容、価格、現物出資分として発行した株式の数を記載します。

株式会社の成立後に譲り受ける契約の財産と価額、譲渡人の氏名又は名称

会社設立を条件に、譲り受ける(買い取る)財産について、財産の内容と価額、譲渡する人の名前を記載します。個人事業主が法人成りした場合などは、事業用の車を継続して使用することもあるでしょう。そのような場合などは、設立した会社に車という財産を譲渡することとなります。

株式の譲渡制限

株式を譲渡する場合は、会社の承認が必要であることを記載します。株式の譲渡制限を定めていない場合、自由に株式を譲渡できてしまいます。その場合、株主総会で議決権を持つ株主が知らない間に代わってしまうということも起こり得るのです。株主は、経営に影響を与える可能性もあることから、多くの会社では定款に株式の譲渡制限についての定めを記載しています。

公告方法

公告とは、決算などについて、広く一般に告知することです。株式会社は、会社法で必ず決算公告を行う義務があることが定められており、決算公告の方法を会社設立時に定款で定めることができます。公告方法には、国が発行する機関誌である官報に掲載する官報公告と、新聞に掲載する新聞公告、オンラインで情報を公開する電子公告の3種類があります。

合同会社における定款の相対的記載事項の書き方と注意点

合同会社の定款の相対的記載事項についてご説明します。

持分の譲渡の要件

持分とは、合同会社の社員が保有する議決権などの権利のことで、株式会社における株式に相当するものです。持分を譲渡する際には、原則として社員全員の承認が必要となりますが、その他の要件を定める場合には定款に記載をしておくようにします。

業務を執行する社員(業務執行社員)の指名又は選任方法

業務執行社員とは、業務執行権を与えられた社員のことです。合同会社では、全ての社員が経営権を持ちますが、特定の社員を業務執行社員として選出することもできます。その場合の業務執行社員の指名や選任方法について定款に記載をします。

合同会社を代表する社員(代表社員)の指名又は互選

代表社員とは、株式会社の代表取締役にあたる社員で、代表権を持つ社員のことです。定款で業務執行社員を指名した場合には、業務執行社員が代表社員となりますが、業務執行社員が複数いる場合は、業務執行社員の中から代表社員を選出できます。

定款の任意的記載事項の書き方と注意点

任意的記載事項とは、相対的記載事項と同じように、必ず定款に記載しなければならない事項ではありません。しかし、相対的記載事項は定款に記載しなければ効力が認められないものであるのに対し、任意的記載事項については他の文書に記載することでも効力が認められるといった違いがあります。

株式会社の場合は、定時株主総会の開催に関する規定や取締役・監査役の員数、事業年度などが任意的記載事項に該当します。一方、合同会社では、業務執行社員の人数や報酬、事業年度などが任意的記載事項とされています。

定款に記載することで明確に会社のルールを示すことができるというメリットがありますが、記載事項を変更する際には、定款変更に伴う手続きが必要になる点に注意が必要です。

会社設立時の負担を軽減する定款作成支援ツールが登場

日本公証人連合会では、スタートアップ企業の会社設立を支援するために、法務省と協力し、簡単に定款を作成できる「定款作成支援ツール」の提供を開始しました。定款作成ツールは、発起人1人用のものと発起人が3人以下用のものの2つが用意されており、内容に応じて選択できるようになっています。

また、令和6年1月10日から東京都と福岡県において、定款作成支援ツールを用いて定款の認証を受ける場合には、原則として48時間以内に定款認証手続きを完了させるトライアル運用も始まっています。

定款作成支援ツールは、日本公証人連合会のサイトからダウンロードできます。詳しくは、日本公証人連合会のサイトをご覧ください。

日本公証人連合会:「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します。」

ただし、定款作成支援ツールは小規模でシンプルな形態の株式会社を設立する場合を想定したものです。より詳細な事項を盛り込んだ定款を作る場合には、司法書士や行政書士などに相談することをおすすめします。

株式会社の場合は定款の認証が必要

定款は、会社設立の登記をする際の添付資料として法務局に提出しますが、株式会社の場合は、登記申請の前に公証役場で定款の認証を受ける必要があります。

定款の認証とは

定款の認証とは、定款が正当な手続きで作成されたことを公証人によって証明することです。定款の認証を行う目的は、次の3つです。

・法人格の存立を巡る紛争の予防のため

・不正な企業・会社設立を抑止するため

・マネーロンダリング対策のため

定款の認証をする場所

定款の認証は、会社の本店所在地を管轄する法務局、または地方法務局が管轄する公証役場で行うことになります。本店の所在地以外の公証役場で認証を受けた場合は無効となるため、必ず、本店所在地の公証役場で認証を受けなければなりません。

定款の認証に必要な書類

定款の認証時には、3通の定款が必要です。また、発行後3ヶ月以内の発起人の印鑑登録証明書、会社が発起人の場合は代表者の印鑑登録証明書と会社の登記簿謄本が必要です。

定款の認証にかかる費用

定款の認証にかかる費用は、紙の定款を作成するか電子定款を作成するかによって異なります。

紙の定款の場合も、電子定款の場合も、認証を受ける際には認証手数料が必要です。定款の認証手数料は資本金の額によって異なり、資本金が100万円未満の場合の手数料は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、300万円以上の場合は5万円となります。

また、紙の定款には、収入印紙を貼らなければなりません。収入印紙代は4万円です。

一方、電子定款の場合、収入印紙は不要となります。しかし、電磁記録媒体の保存手数料として1回あたり300円が必要です。

会社設立後に定款を変更する場合に必要な手続き

一度決めた定款は、変更できないわけではありません。会社設立後に定款を変更することも可能です。ただし、その場合は手続きが必要となります。

定款の変更が必要になるケースとは

定款に記載している事項が変更される場合は、定款を変更する必要があります。具体的には、社名を変更する場合や本店を移転する場合、事業目的を変更・追加する場合などです。

その他、資本金の額を変更した場合や株主総会の開催日時等の変更があった場合なども、定款を変更しなければなりません。合同会社の場合は、代表社員が変更になった場合も定款の変更をしなければなりません。

定款変更に必要な手続き(株式会社の場合)

株式会社で定款変更をする際には、株主総会を開き、特別決議を得たうえで議事録を作成する必要があります。特別決議には、議決権の過半数を有する株主の出席と、出席した株主の議決権の2/3以上の賛成が必要です。

登記変更が必要な事項を変更した場合は、法務局での変更手続きを行わなければなりません。このとき、株主総会の議事録を添付する必要があります。また、登記事項の変更の際には1件につき3万円以上の登録免許税が必要です。変更内容によって、登録免許税の額は異なります。

定款変更に必要な手続き(合同会社の場合)

合同会社の定款を変更する際には、原則として社員全員の決議と承認が必要になります。登記変更が必要になる場合は、法務局で変更手続きを行う際に、全社員が同意したことを証明する同意書の提出が必要です。また、変更内容に応じた登録免許税がかかります。

定款変更時の注意点

定款の変更に伴う登記の変更が必要になる場合は、変更が生じたときから2週間以内に変更の登記をしなければなりません。定款変更を行った際には、必ず2週間以内に登記変更手続きを行うことを忘れないようにしましょう。

まとめ

会社設立の登記申請をする際には、法務局に定款を提出しなければなりません。定款とは会社の基本的な情報や規則を示すもので、会社の憲法とも呼ばれる重要な書類です。定款に記載すべき事項には、必ず記載しなければならない絶対的記載事項のほか、定款に記載しなければ効力のない相対的記載事項、任意で記載する任意的記載事項の3種類があります。

定款の内容に不備があった場合、登記申請時に受理してもらうことはできません。初めて会社設立を行う場合などは、定款の作成も初めてになるため、不安なこともあるはずです。定款を簡単に作成できる定款作成支援ツールなどの提供も開始されていますが、時間のない方や手続きに不安がある場合などは、専門家への相談をおすすめします。

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