2024.11.15

会社設立

合同会社設立にかかる費用は?株式会社との比較と安くなる理由

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

合同会社を設立するには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

会社設立のためには、法的な書類や手続きが必要になりますので、必ず一定の費用はかかります。

合同会社設立の法定費用は10万円~となっており、資本金の金額によってさらに高くなる場合もあります。

株式会社の設立費用との違いはあるのか。

これらの費用を抑えるポイントはあるのか。

また会社設立後にはどのような費用がかかってくるのかを、確認しておきましょう。

会社設立にかかる費用

会社を設立する際にかかる費用は、主に以下の3つとなります。

  • 法定費用
  • 1円以上の資本金
  • 会社印鑑や印鑑証明書などの費用

法定費用

法定費用とは、法務局や役所での手続きの際に必要となる費用全般を指します。

会社設立の際にかかる法定費用は、これらの内容があります。

  • 定款用収入印紙代
  • 定款の認証手数料(合同会社は不要)
  • 登記の登録免許税

定款(ていかん)とは、会社の基本情報が記載された書類で、会社設立時には必ず作成しなくてはいけません。

株式会社か合同会社かを問わず、定款の作成は必ず行います。

定款の認証は合同会社では不要ですが、株式会社の場合は定款の認証手数料がかかります。

登記の登録免許税は資本金の金額により異なります。

1円以上の資本金

株式会社でも合同会社でも、1円以上の資本金があれば会社は設立できます。

旧制度では、有限会社の資本金は最低300万円、株式会社は最低1,000万円と決められていましたが、2006年の会社法改定により最低資本金が撤廃されました。

ただし厳密には「最低1円から」とはいうものの、資本金は事業内容に合わせた金額を用意する必要があります。

安易に1円で会社設立が可能と捉えず、3ヶ月~半年程度の運転資金を資本金の目安にするといいでしょう。

会社印鑑や印鑑証明書などの費用

会社の印鑑は、銀行の手続きに必要な銀行印実印
源泉徴収で必要な角印の3本が必要になります。

3本セットで購入できる場合もあり、印鑑の代金は材質やサイズによって異なります。

株式会社を設立する際は、発起人、役員全員の個人の印鑑証明が必要です。

合同会社で実印を作る場合は、代表社員の印鑑証明書が必要です。

法人の印鑑証明書は申請や受け取り方法により、金額が異なります。

書面請求450円
オンライン請求・送付410円
オンライン請求・窓口交付390円

参照:法務省|登記手数料について

会社設立の方法

合同会社設立

会社を設立するには、株式会社か合同会社かをまず決めなくてはいけません。

株式会社と合同会社の主な違いについて、確認しておきましょう。

  • 株式会社とは
  • 合同会社とは

株式会社とは

株式会社とは、株式を発行して資金を集める、設立・運営される会社です。

資本金の提供者は株主となり、経営者は株主総会で選ばれます。

株主と経営者が異なるというのが大きな特徴で、世間での認知度が高く、信頼を得やすいというメリットがあります。

株式発行という資金調達が可能ですが、決算公告が必要になるというデメリットもあります。

合同会社とは

合同会社とは、出資者と経営者が同一な会社の形態です。

そのため経営が比較的自由に行えるのがメリットですが、株式会社よりも信用は劣りますし、資金調達の方法が限られるというデメリットがあります。

設立コストは株式会社よりも安いので、初期費用が抑えられますので、設立のハードルが低いです。

株式会社と合同会社でかかる法定費用の違い

合同会社法定費用

株式会社を設立する際には、主にこれらの法定費用がかかります。

株式会社合同会社
定款の収入印紙4万円
(紙の場合のみ)
4万円
(紙の場合のみ)
定款の認証必要不要
定款認定の手数料3~5万円0円
登録免除税15万円
または
資本金×0.7%のうち高い方
6万円
または
資本金×0.7%のうち高い方

株式会社と合同会社では、合同会社の方が費用が安く抑えられます。

これらの費用について、ご説明します。

  • 株式会社設立にかかる法定費用
  • 合同会社設立にかかる法定費用

株式会社設立にかかる法定費用

定款は株式会社でも合同会社でも必要で、紙の定款か電子定款か、どちらかの方法で作成します。

紙の定款で作成した場合は、収入印紙代が4万円かかります。

出資者との問題を防ぐため、株式会社の場合は公証人による定款の認証が必要なので3~5万円かかります。

定款の認証の費用は資本金の金額によって異なり、令和4年1月1日から以下のようになっています。

資本金認証手数料
100万円未満3万円
100万円以上300万円未満4万円
300万円以上5万円

参照:日本公証人連合会

登録免除税は最低でも15万円かかりますので、合同会社より株式会社の方が会社設立の費用がかかります。

合同会社設立にかかる法定費用

合同会社は株式会社と比べると、費用が抑えられます。

定款の認証が不要であるという点と、登録免除税が最低6万円という点が大きな違いです。

これらの費用から、合同費用にかかる費用は最低10万円~といえるでしょう。

定款の認証には1週間程度の時間がかかりますので、合同会社は会社設立にかかる期間も短縮できるというメリットがあります。

合同費用の会社設立費用を抑えるポイント

合同会社費用抑える

株式会社よりも会社設立の費用が安い合同会社ですが、以下のようなポイントを知っておくと、より費用を抑えられるかもしれません。

  • 定款は紙でなく電子で40,000円減
  • 登録免許税を最低額に抑える

定款は紙でなく電子で40,000円減

定款は紙の定款か電子定款かの選択が可能なので、
収入印紙代がかからない電子の定款を作成しましょう。

紙の定款だと課税文書となりますが、電子定款だと電子文書となり課税文書とならないためです。

電子定款を作成するには、まずは原本となる定款を作成し、PDFファイルに変換します。

ただし電子定款には電子署名を入れなければ有効とされませんので、電子署名機能がついた専用ソフトを用意しなければいけません。

この電子ソフトの購入がネックになる場合もあります。

登録免許税を最低額に抑える

登録免除税とは、登記登録のために国に納める税金です。

合同会社の場合は、6万円または資本金×0.7%のうち高い方なので、資本金が高い方が登録免除税も高額になります。

最低でも6万円となりますが、資本金が約857万円以下であれば登録免許税を最低金額に抑えられます。

登録免許税の最低額(60,000円)÷登録免許税の税率(0.7%)=資本金の額(857万1,429円)という計算式になります。

法定費用以外で合同会社設立にかかる費用

会社設立にかかる費用は、法定費用だけではありません。

先述した資本金や会社印鑑、印鑑証明書などの費用も必要になってきます。

また細かいですが、登記の申請書を提出するために出向いた際の交通費登記簿謄本の発行手数料(1通500円程度)もかかります。

定款の作成を専門家に依頼した場合には、その費用もかかってきます。

自身で定款の作成をする場合もありますが、専門知識を持つ人が作成した方が漏れなく、後のトラブルを回避できるというメリットがあります。

合同会社設立後にかかる費用

合同会社設立後にかかる費用

合同会社を設立した後にも、以下のような費用がかかりますので覚えておきましょう。

  • 社会保険料
  • オフィスの家賃や備品
  • 税金
  • 税理士や弁護士への報酬

社会保険料

会社を設立したら、必ず社会保険に加入しなくてはいけません。

社会保険とは、このような3つの保険を指します。

  1. 健康保険
  2. 厚生年金保険
  3. 雇用保険

かかる具体的な費用は、社員の数や給与額によって異なります。

社会保険は、株式会社か合同会社かを問わず加入しなければいけません。

オフィスの家賃や備品

会社を設立すると、オフィスの家賃だけでなく、備品を揃えるための費用も必要になります。

  • オフィスの家賃
  • オフィスの水道光熱費
  • 机やパソコン、周辺機器
  • 通信費用
  • 清掃費用
  • ホームページの運営費用

オフィス費用はランニングコストとなりますので、節約できる部分は節約すべきです。

賃料は売上総利益の10%前後が理想的だといわれていますので、事業をスタートしてから利益とのバランスを確認してみましょう。

また1人あたり13㎡の広さが適切という目安もあります。

雇用人数の規模に合わせたオフィスを選ぶようにしましょう。

税金

会社を設立すると、個人事業主とは異なる税金を納める義務が発生します。

主にこれらの税金を納めるようになります。

  1. 法人税
  2. 法人住民税(都道府県税・市区町村税)
  3. 法人事業税
  4. 固定資産税

法人税

法人税とは、法人の所得に対して課せられる国税です。

個人事業主は所得税として納めていた税金が、法人化すると法人税となります。

所得に関わらず税率が一律の比例課税方式が採用されており、普通法人の法人税の税率は23.2%です。
(参照:財務省|法人課税に関する基本的な資料

法人税の支払い方法は、窓口納付やクレジットカード納付だけでなく、ダイレクト納付やインターネットバンキング納付から選択できます。

法人住民税(都道府県税・市区町村税)

法人住民税とは、事業所がある地方自治体に納める地方税です。

道府県民税と市町村民税を合わせて、法人住民税とされています。

法人事業税

法人事業税とは、法人の事業そのものに課せられる税金です。

法人がその事業活動を行うに当たって地方団体の各種の行政サービスの提供を受けることから、これに必要な経費を分担すべきであるという考え方に基づき課税されるものです。

(引用:総務省|法人住民税の概要

固定資産税

固定資産とは1年以上保有する資産を指し、土地や建物、償却資産が課税対象となります。

償却資産はエアコンやプリンター、看板などが挙げられます。

固定資産税ときくと、土地や建物に対する税金というイメージがあるかもしれませんが、償却資産にも課せられると覚えておきましょう。

税理士や弁護士への報酬

会社設立後は、税理士や弁護士、会計士を雇い、サポートしてもらうのが一般的です。

税金の計算など、誤るとリスクが生じるものは専門家に依頼するといいでしょう。

当然報酬が発生しますので、会社に最適な専門家を選び、コスト管理をしていきましょう。

合同会社設立に関するよくある質問

合同会社設立に関するよくある質問

合同会社設立に関する、よくある質問をまとめました。

  • 合同会社が増えている理由は?
  • 合同会社にできないことは何ですか?
  • 合同会社として有名な企業は?
  • 合同会社は誰が責任を負うのですか?
  • 合同会社の最低人数は何人ですか?

合同会社が増えている理由は?

合同会社が増えている理由は、会社設立時のハードルの低さと、出資者と経営者が同一なため自由度が高いという点が挙げられます。

株式会社と比較すると、決算の公告や株主総会の開催費用も不要なので、ランニングコストも抑えられます。

合同会社にできないことは何ですか?

合同会社は、株式が発行できませんので上場できません。

上場すると資金調達がしやすくなったり、知名度が上がるという企業としてのメリットがあります。

将来的に上場させたい、事業を拡大させていきたいと考えているのであれば、合同会社より株式会社の方がいいかもしれません。

合同会社として有名な企業は?

合同会社は増えており、有名な企業もあります。

  • グーグル合同会社
  • アップルジャパン合同会社
  • アマゾンジャパン合同会社
  • 合同会社ユー・エス・ジェイ
  • ワーナーブラザースジャパン合同会社
  • 合同会社西友

外資系の大手企業が日本で法人設立する際に、合同会社を選択するケースが多いようです。

合同会社は誰が責任を負うのですか?

合同会社は有限責任となり、会社が倒産した時には出資額を限度として責任を負います。

もし会社が倒産した際には、出資したお金は戻りませんが、それ以上の責任も負わないという意味になります。

合同会社の最低人数は何人ですか?

合同会社の代表人数に規定はありませんので、1人でも設立できます。

株式会社の代表取締役は1人と決められていますが、合同会社は複数人でも構いません。

ただし代表が複数人いると、意見がぶつかった時に混乱を招く懸念があります。

設立費用を抑えるなら合同会社

株式会社と合同会社を比較すると、合同会社は設立費用を安く抑えられます。

合同会社にはメリットもデメリットもありますが、できるだけ費用を抑えたいのであれば、合同会社を検討してみてはいかがでしょうか。

また合同会社は会社設立のスケジュールが、株式会社よりもスピーディーにできるというメリットもあります。

会社を設立した後の事業のイメージをしながら、適切な方を選びましょう。


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