2024.10.19

創業融資

創業融資の金利は?日本政策金融公庫の金利と低金利で融資を受けるコツ

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

「これから事業を始めよう!」とする、起業や開業の際に利用できるのが創業融資です。

日本政策金融公庫では無担保・無保証人で融資を受けられますが、やはり金利は低い方がいいというのが本音でしょう。

創業融資の金利の相場や日本政策金融公庫の融資制度の金利について、細かくご紹介していきます。

特別利率として該当者だけが適用になるものもありますので、制度を正しく理解して融資の検討をしていきましょう。

創業融資の金利の相場

創業融資金利相場

創業融資にはいくつか種類があり、どの創業融資を選ぶかによって条件が異なります。

融資制度の目的や融資期間、担保の有無などによって
金利が変わってくるのが一般的です。

それぞれ金利が異なりますが、2%前後を目安と覚えておくといいでしょう。

金利はできるだけ低金利で融資を受けられるよう、融資制度のポイントを理解しておきましょう。

日本政策金融公庫の融資制度と金利

日本政策金融公庫の創業融資は、無担保・無保証人でも融資が通りやすいといわれています。

検討する人が多いのが、日本政策金融公庫の創業融資です。

そんな日本政策金融公庫の融資制度にはいくつか種類がありますので、制度の内容と金利についてご紹介します。

金利については、令和6年10月1日現在の数値となります。
参照:日本政策金融公庫|国民生活事業(主要利率一覧表)

  • 一般貸付の制度と金利
  • 新規開業資金の制度と金利
  • 経営環境変化対応資金の制度と金利
  • 取引企業倒産対応資金の制度と金利
  • マル経融資(小規模事業者経営改善資金)の制度と金利
  • 中小企業経営力強化資金の制度と金利
  • 信用保証協会付き融資の制度と金利

一般貸付の制度と金利

 運転資金設備資金特定設備資金
融資限度額4,800万円7,200万円
返済期間5年以内
(最大7年以内)
※据置期間1年以内
10年以内
※据置期間2年以内
20年以内
※据置期間2年以内
利率(年)【基準利率】
税務申告を2期終えている方:2.20~3.40%
税務申告を2期終えていない方:2.30~3.50%
有担保の方:1.20~3.00%
災害貸付の方:1.35~2.55%
担保・保証人要相談

参照:日本政策金融公庫|一般貸付

一般貸付とは、土地や建物などのための長期運転資金として資金を融資する制度です。

起業目的でなくても融資を受けられる制度で、ほとんどの業種で利用できます。

金利は基準金利となっており、税務申告2期以前か以降か、担保の有無などが関係しています。

有担保の方が金利が低く、融資を受けやすい状態にあるといえます。

新規開業資金の制度と金利

新規開業資金金利
 運転資金設備資金
融資限度額7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
返済期間10年以内
※据置期間5年以内
20年以内
※据置期間5年以内
利率(年)【基準利率】
税務申告を2期終えている方:2.20~3.40%
税務申告を2期終えていない方:2.30~3.50%
有担保の方:1.20~3.00%
災害貸付の方:1.35~2.55%
 【特別利率A】
税務申告を2期終えている方:1.80~3.00%
税務申告を2期終えていない方:1.90~3.10%
有担保の方:0.80~2.60%
災害貸付の方:0.95~2.15%
 【特別利率B】
税務申告を2期終えている方:1.55~2.75%
税務申告を2期終えていない方:1.65~2.85%
有担保の方:0.65~2.35%
災害貸付の方:0.70~1.90%
 【特別利率C】
税務申告を2期終えている方:1.30~2.50%
税務申告を2期終えていない方:1.40~2.60%
有担保の方:0.60~2.10%
災害貸付の方:0.60~1.65%
担保・保証人要相談

参照:日本政策金融公庫|新規開業資金

新規開業資金とは、2024年3月以前の新創業融資制度に該当する融資制度です。

新たに事業を始める方、もしくは創業7年以内の方が利用できるもので、基本的には基準年利が適用されます。

しかし新規開業資金には特別金利が設定されており、
条件を満たした場合には金利が低くなる可能性があります。

特別金利の対象について、「女性、若者/シニア起業家支援資金」「再挑戦支援資金」「中小企業経営力強化関連」をご紹介します。

女性、若者/シニア起業家支援資金の制度と金利

新規開業資金に含まれるもので、特に女性や若者、シニア起業家を支援するための融資制度です。

女性の方、35歳未満または55歳以上の方は、特別金利で新規開業資金を受けられます。

特別利率はA/B/Cがあり、以下のような方が対象となっています。

特別利率A女性の方、35歳未満または55歳以上の方
技術・ノウハウ等に新規性がみられる方、など
特別利率B技術・ノウハウ等に新規性がみられる方
デジタル田園都市国家構想交付金の交付決定を受けた方、など
特別利率C技術・ノウハウ等に新規性がみられる方
デジタル田園都市国家構想交付金の交付決定を受け、かつ移住支援金の両方の交付決定を受けた方、など

参照:日本政策金融公庫|新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)の概要

再挑戦支援資金の制度と金利

過去に廃業履歴があり、創業に再チャレンジするという方には再挑戦支援資金があります。

なぜ廃業したのかという理由が問われ、さらに廃業時の負債が整理される見込みであるという方が対象です。

運転資金の返済期間が15年以内と、長めに設定されているのが特徴です。

以下のような条件で、特別利率A/B/Cが適用されます。

特別利率A女性の方、35歳未満または55歳以上の方
特定外国人起業家の方認定特定創業支援等事業を受けた方
Uターン等により地方で新たに事業を始める方、など
特別利率B認定特定創業支援等事業を受けた女性の方
認定特定創業支援等事業を受けた35歳未満の方
起業支援金の交付決定を受けた方
Uターン等により過疎地で事業を始める方、など
特別利率C起業支援金と移住支援金の交付決定を受けた方、など

参照:日本政策金融公庫|新規開業資金(再挑戦支援関連)

中小企業経営力強化関連の制度と金利

中小企業経営力強化関連の制度とは、中小企業の経営力を強化するための融資制度です。

新規事業の開拓資金や経営革新の導入資金のための融資で、特別利率Aが適用されます。

新規開業資金の表でお伝えした通り、融資限度額は7,200万円となっており、初期投資に費用がかかる事業に挑戦できるようになります。

参照:日本政策金融公庫|新規開業資金(中小企業経営力強化関連)

経営環境変化対応資金の制度と金利

 運転資金設備資金
融資限度額4,800万円
返済期間8年以内
※据置期間3年以内
15年以内
※据置期間3年以内
利率(年)【基準利率】
税務申告を2期終えている方:2.20~3.40%
税務申告を2期終えていない方:2.30~3.50%
有担保の方:1.20~3.00%
災害貸付の方:1.35~2.55%
 【特別利率Q】
税務申告を2期終えている方:1.80~2.30%
税務申告を2期終えていない方:1.90~2.40%
有担保の方:0.80~1.90%
担保・保証人要相談

参照:日本政策金融公庫|経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)

経営環境変化対応資金はセーフティネット貸付のひとつで、一時的な業績の悪化に悩む方の経営基盤の強化を支援する融資制度です。

社会的、経済的環境の変化などの外的要因により一時的に経営が悪化しているが、業況が回復し発展するという見込みのある方が対象となります。

特別金利Qとは、ウクライナ情勢の変化やALPS処理水の処分に伴う風評影響などの社会的な要因によって業績が悪化している方が対象となります。

取引企業倒産対応資金の制度と金利

取引企業倒産対応資金金利
融資限度額3,000万円
返済期間8年以内
※据置期間3年以内
利率(年)【基準利率】
税務申告を2期終えている方:2.20~3.40%
税務申告を2期終えていない方:2.30~3.50%
有担保の方:1.20~3.00%
災害貸付の方:1.35~2.55%
担保・保証人要相談

参照:日本政策金融公庫|取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)

取引企業倒産対応資金とは、取引企業などの倒産が理由で業績が悪化している方を支援する融資制度です。

倒産した取引企業に対する取引依存度が20%以上である、倒産した企業に対して50万円以上の売掛金債権などを有するといった方が対象となります。

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)の制度と金利

 運転資金設備資金
融資限度額2,000万円
返済期間7年以内
※据置期間1年以内
10年以内
※据置期間2年以内
利率(年)【特別利率F】
1.35%
担保・保証人要相談

参照:日本政策金融公庫|マル経融資(小規模事業者経営改善資金

商工会、商工会議所又は都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている小規模事業者であり、商工会、商工会議所等の長の推薦を受けた方が利用できる融資制度です。

金利は特別利率Fが適用となり、1.35%です。

日本政策金融公庫以外の創業融資

創業融資は日本政策金融公庫以外のものもあります。

  • 地方自治体の制度融資
  • 信用金庫などの創業融資

地方自治体の制度融資

地方自治体の制度融資とは、自治体と信用保証協会と金融機関の三者によって成り立つ制度です。

自治体と信用保証協会が、対象企業の信用を補填し、
それを受けて金融機関が融資を行うという仕組みになっています。

自治体によって限度額や条件、内容が異なりますので確認してみましょう。

おおよその金利としては、2%前後を目安とするといいでしょう。

信用金庫などの創業融資

創業融資金利

信用金庫や地方銀行といった金融機関から、創業融資を受けるという選択肢もあります。

営業エリアで創業する予定であれば、融資を受けられる可能性があります。

ただし金利は2%~5%前後が目安となり、日本政策金融公庫の融資制度と比較すると高くなる印象です。

このような金融機関から融資を受けるには、事業実績が重要になると考えられます。

創業融資の場合は事業実績がありませんので、貸付をするにはリスクが高い顧客だと判断され、金利が高くなります。

創業融資の金利を下げるコツ

創業融資の金利はできるだけ下げたいものです。

ではできるだけ金利を下げるためのコツは、以下のようになります。

  • 担保・保証人をつける
  • 創業計画書を作り込む
  • 日本政策金融公庫の「特利」を利用する
  • 融資の担当者と積極的にコミュニケーションをとる

担保・保証人をつける

日本政策金融公庫の創業融資は、無担保・無保証人でも融資が受けられるという特徴がありますが、金利を下げるという点では担保・保証人がいた方がいいです。

担保となるのは、土地や工場といった不動産、有価証券や営業車両などの動産です。

また連帯保証人に心当たりがなければ、創業代表者自らが連帯保証人になるという方法もあります。

「代表者保証(経営者保証)」といい、創業代表者が個人として連帯保証人になります。

リスクはありますが、金利を下げるという意味では有効です。

創業計画書を作り込む

創業計画書創業融資金利

融資を申し込む際には、創業計画書が必要です。

実績のない創業者の返済能力を見極める大切な書類となりますので、しっかりと作り込んで説得力のあるものにします。

具体的な数値やデータを用いて説明し、見込みがあると判断されれば、金利にも影響する可能性があります。

日本政策金融公庫の「特利」を利用する

日本政策金融公庫の「特利」とは、特別利率です。

基準利率より低く設定された特別利率はA~Uまで種類があり、条件に該当すれば低金利で融資を受けられます。

融資の種類や条件がありますので、自身が該当するものがあるか調べておくといいでしょう。

参照:日本政策金融公庫|国民生活事業(主要利率一覧表)

融資の担当者と積極的にコミュニケーションをとる

あからさまに媚を売る必要はありませんが、融資担当者との信頼関係は大切です。

融資の金額や金利は、担当者の主観が必ず入らないとは言い切れません。

人柄や人間性といった観点も総合的に判断されると心得ておきましょう。

日頃から丁寧なコミュニケーションをとり、良い印象を与えておくと融資にも影響するかもしれません。

創業融資の金利はできるだけ低く

創業融資を受ける金額にもよりますが、たかが1%、
されど1%で、返済額に影響が出てきます。

できるだけ金利を抑えて融資を受けられる方法を探すべきであるといえます。

日本政策金融公庫の融資制度は金利が低いので、これから事業をスタートさせたいという方の負担を少なくしてくれます。

特別利率など使える制度をしっかりと調べ、賢く融資を受けられるように準備しておきましょう。


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