メニュー
会社設立
会社設立の最低資本金とは?重要性や決める際のポイントも徹底解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
2006年に施行された会社法により、資本金の最低額の規定が撤廃され、1円からでも会社を設立することが可能です。
しかし、資本金は事業を開始・運営するための資金としてだけでなく、納税義務の有無や取引先からの信用度にも大きく影響するため、自社の事業内容や将来計画に見合った金額を慎重に決めることが重要です。
本記事では、会社設立の最低資本金について紹介します。
他にも「会社設立の資本金の重要性」や「資本金を決める際のポイント」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、会社設立の資本金について理解を深めてみてください。
目次
会社設立の最低資本金とは?
株式会社は、資本金が1円でも設立することが可能です。
しかし、会社を立ち上げるためには設立費用がかかり、事業を継続していくためには運転資金も必要となり、取引先との信頼関係も重要になります。
資本金の額は信用力に影響を与えるため、実際には資本金が少ない会社とは取引を避けるケースが多いのも事実です。
このように、法的には資本金1円でも株式会社の設立は可能ですが、実際に事業運営を行う上では、ある程度の資本金を用意することが望ましいと言えます。
会社設立の資本金の重要性
会社設立の資本金の重要性については、以下の3つが挙げられます。
- 会社の規模を表す指標
- 与信調査に使われる
- 金融機関からの借り入れ限度額が決まる
それぞれの重要性について理解を深めてみてください。
会社の規模を表す指標
会社を設立する際の資本金は、事業の運転資金として活用されるため、「企業の経済的な基盤」を示す要素と見なされます。
そのため、資本金が少額である場合、資金調達の面で不利になりやすい傾向があります。
また、資本金の規模は企業の信用度に深く関係しているのも事実です。
特に設立直後の企業では、資本金の大きさが外部からの信頼性や事業の規模を判断する材料の一つとして捉えられることが多いです。
与信調査に使われる
会社設立の資本金は、与信調査に使われるので、重要度が高いと言えます。
実際に、企業が新たに取引を開始する際、多くの場合で与信調査が実施されます。
与信調査は、相手方が代金を適切に支払う能力や契約通りに商品を納品できる信頼性を確認する目的があります。
十分な信用が認められない場合、取引自体が見送られるケースも少なくありません。
このように、会社の信用度を判断するための要素の一つとして、資本金の額が重視されます。
金融機関からの借り入れ限度額が決まる
銀行から融資を受ける際には、資本金の金額が非常に重要な要素となります。
一般的には、融資額の目安は資本金と同程度から最大で2倍程度とされているので、創業直後から事業を大きく成長させたい場合には、ある程度まとまった資本金を用意しておくことが重要です。
また、銀行の融資審査では、売上高や未払いの債務状況などと並んで、資本金の額も確認対象となります。
資本金が極端に少ない場合、融資自体を断られる可能性もあります。
しかし、創業時や増資のために資本金を補填する目的での融資は受けられません。
資本金は「出資金」として事業の基盤となる自己資金であり、銀行融資とは性質が異なるので注意が必要です。
資本金を決める際のポイント
資本金を決める際のポイントについては、以下の5つが挙げられます。
- 許可書の確認
- 初期費用と運転資金
- 税金を考慮する
- 取引先を考慮する
- 融資額の要件
それぞれのポイントについて解説していきます。
許可書の確認
事業を開始する前に、特定の業種では許認可が必要になる場合があるので、資本金を決める際には、許可書の確認をするようにしましょう。
実際に、許認可の条件には、資本金の金額が求められることがあり、必要額を満たしていないと許可を取得できないので注意が必要です。
会社を設立したとしても、必要な許認可を取得していなければ事業活動が制限されるリスクがあります。
特に資本金額の基準が設けられている主な業種とその最低額は以下の通りです。
業種 | 最低資本金額 |
貨物利用運送業 | 300万円以上 |
一般建設業 | 500万円以上 |
特定建設業 | 2,000万円以上 |
有料職業紹介業 | 500万円以上(事業所ごと) |
労働者派遣業 | 2,000万円以上(事業所ごと) |
第1種旅行業 | 3,000万円以上 |
第2種旅行業 | 700万円以上 |
第3種旅行業 | 300万円以上 |
地域限定旅行業 | 100万円以上 |
資本金要件は業種によって異なるため、事業計画段階で関係法令を事前に確認しておくようにしましょう。
初期費用と運転資金
資本金を決める際の重要なポイントの一つは、会社設立時に必要となる初期費用や運転資金をしっかり算出することです。
会社設立時には、法人登記や各種手続きにかかる費用、事務所の契約金、備品・設備の購入費用などが発生します。
また、事業開始後も、仕入れ代金や賃料、従業員の給与などの支払いが継続的に必要となり、これらの資金は原則として資本金から賄うことになります。
事業内容や会社の規模によって、必要となる初期費用や運転資金は大きく異なります。
そのため、自社の状況に合った資本金額を慎重に検討することが大切です。
特に創業初期は、売上が思うように上がらない場合も多く、収益が発生しない間にも固定費がかかり続けるため、資本金が少なすぎるとすぐに資金不足に陥るリスクがあります。
こうした資金ショートを回避するためには、設立時に必要となる初期費用を計算し、さらに少なくとも半年分の運転資金を加えた金額を目安として資本金を設定するのが望ましいと言えます。
税金を考慮する
資本金の額は、消費税や法人住民税、法人税などの税金に関わる納税義務の有無や税額の算出方法に直接影響を与えます。
資本金を決定する際には、その金額が各種税金の負担にどのような影響を及ぼすかを把握し、必要な許認可の取得条件や事業運営資金とのバランスを慎重に検討することが重要です。
特に資本金が関係する税金としては、消費税、法人住民税、法人税が挙げられます。
それぞれの税金について、資本金額がどのように影響を及ぼすのか解説します。
消費税
資本金1,000万円以下で設立された企業は、原則として設立から最初の2年間、消費税の納税が免除されます。
しかし、2年目に関しては、設立1年目の最初の6か月間において、売上高が1,000万円を超えて、人件費(役員報酬を含む)が1,000万円を超えた場合には、消費税の納税義務が発生します。
法人税
法人税の税率は、会社の資本金の額によって異なります。
資本金が1億円以下の法人の場合、所得が800万円を超えた分については税率が23.2%となり、800万円までの部分については15%の税率が適用されます。
また、所得が800万円以下である場合は、全額に対して15%の税率が適用されます。
一方で、資本金が1億円を超える場合は、異なる税率体系が適用されることがあります。
法人住民税
法人住民税には、会社が赤字であっても支払い義務が生じる「均等割」という税金があります。
この均等割の金額は、資本金や従業員数によって決まります。
例えば、東京都23区において従業員が50人以下の企業の場合、資本金が1,000万円以下であれば年間7万円の均等割を納める必要があります。
一方で、資本金が1,000万円を超える場合は、均等割の年額が18万円に引き上げられます。
取引先を考慮する
多くの企業では、新たに取引を開始する際、取引先の信用力を確認する目的で与信審査を行うので、資本金を決める際には、取引先を考慮することが重要です。
特に設立間もない企業や、相手が大手企業である場合、資本金は信頼性を評価する要素の一つとみなされます。
資本金が極端に少ない場合、信用力が低いと判断され、取引を見送られる可能性もあるため、十分な配慮が求められます。
融資額の要件
会社設立後に融資を検討している場合は、資本金の設定に注意が必要です。
資本金が極端に少ないと、希望する融資額を満たせない可能性があり、事業運営に必要な資金を十分に確保できなくなる恐れがあるのも事実です。
このように、会社設立時に資本金を決める際には、融資額の要件を確認しておきましょう。
会社設立で資本金を増やすメリット
会社設立で資本金を増やすメリットについては、以下の3つが挙げられます。
- 返済の必要のない資金調達ができる
- 信用度が向上する
- 株主が増える
それぞれのメリットについて解説していきます。
返済の必要のない資金調達ができる
会社設立で資本金を増やすメリットとして、返済の必要のない資金調達ができるメリットが挙げられます。
銀行融資では、借入金に対して利息の支払い義務が発生し、さらに元本も期日までに返済する必要があります。
一方、増資の場合は資金提供者に株式を発行して引き渡すだけであり、借入金のように利息の支払いは不要です。
さらに、資金の返済義務も生じないため、会社設立で資本金を増やすことは、大きなメリットと言えます。
信用度が向上する
会社の資本金の規模は、取引先に対して信頼感を与える重要な要素となります。
資本金が多いほど、経済的な安定性や事業の信頼性が高いと見なされやすくなります。
さらに、増資は企業が成長段階にあることを示す場合が多く、資本を拡充することで事業の順調さを印象付ける効果があります。
これにより、対外的な信用度が一層高まることが期待できます。
株主が増える
会社設立で資本金を増やすことで、新たな株主が参加し、既存株主の比率が分散されるというメリットがあります。
特定の株主が大半の株式を保有している場合、その人物の影響力が過度に強まり、会社の意思決定に偏りが生じ、経営の柔軟性が損なわれるリスクがあります。
そのため、株主の構成をより分散化し、経営の健全性を高める手段として、増資により株主を増やすことは有効と考えられます。
会社設立で資本金を少なくするリスク
会社設立で資本金を少なくするリスクについては、以下の3つが挙げられます。
- 会社の信用が得られにくい
- 融資審査が通りにくくなる
- クレジットカードや法人口座が難しくなる
それぞれのリスクについて解説していきます。
会社の信用が得られにくい
会社の資本金は、企業の信頼性を示す重要な要素になるので、会社設立で資本金が少ないと会社の信用が得られにくくなるリスクがあります。
実際に、取引先によっては、契約前に相手の資本金額を確認し、資本金が少なすぎる場合は取引を見送ることもあります。
さらに、資本金が十分でないと、企業の運転資金に余裕がないと見なされやすく、財務的な安定性に不安を抱かせる原因となります。
その結果、赤字に陥るリスクが高まったり、投資家からの資金調達が難しくなったりする可能性があるので注意が必要です。
融資審査が通りにくくなる
金融機関から融資を受ける際には、審査過程で資本金の額が注目されることがあります。
融資は借入金を返済する義務が伴うため、金融機関は申請者の返済能力を判断する材料の一つとして資本金を確認しているのも事実です。
資本金の額は、企業の安定性や信用度を示す指標とされています。
このように、会社設立時に資本金が少ない場合、希望通りの融資を受けられない可能性が高まり、場合によっては審査に通らなかったり、融資額が大幅に制限されることも考えられます。
クレジットカードや法人口座が難しくなる
法人向けの銀行口座やクレジットカードを作成する際、審査の過程で資本金の額がチェックされることがあります。
特に、ネット銀行や一部のクレジットカードでは、資本金が少なくても比較的簡単に作成できるケースがある一方で、審査基準が厳しい場合は、申請が却下される可能性があります。
さらに、審査を通過したとしても、クレジットカードの利用限度額が低めに設定されるなど、使用条件が制限されるリスクもあります。
会社設立時の資本金は適切に設定しよう!
今回は、会社設立の最低資本金について紹介しました。
現在では、資本金がわずか1円でも株式会社を設立することが可能ですが、資本金が極端に低い場合、事業運営に必要な基盤が不足していると見なされることがあります。
金融機関からの融資を断られたり、取引先から信用を得られなかったりする可能性があるため注意が必要です。
また、会社設立時の資本金の額は税金にも影響を与えるため、自社の状況や将来の計画を考慮し、適切な金額を設定することが重要です。
今回の記事を参考にして、会社設立時の資本金は適切に設定するようにしましょう。
ー免責事項ー
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時点の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
税務・労務等のバックオフィス支援から
経営支援まで全方位でビジネスをサポート
本気で夢を追い求めるあなたの会社設立を全力サポート
- そもそも個人事業と会社の違いがわからない
- 会社を設立するメリットを知りたい
- 役員報酬はどうやって決めるのか
- 株式会社にするか合同会社にするか
会社設立の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 設立後に損しない最適な起業形態をご提案!
- 役員報酬はいくらにすべき?バッチリな税務署対策で安心!
- 面倒なバックオフィスをマルっと支援!
- さらに会社設立してからも一気通貫で支援