メニュー
読了目安時間:約 7分
どの業界でも脱税をしようとする人はいるかもしれませんが、実は 飲食店は脱税が多い業界であるといわれています。
キャッシュレス決済が進んできてはいますが、現金のみで会計を行う飲食店もあるので不正しやすい状態であるといえます。
キャッシュレス決済導入には費用もかかりますので、やむを得ず現金でやり取りをしているという飲食店もあるでしょう。
現金のみで会計をしている飲食店全てが不正をしているわけではありません。
しかし疑われやすい状態であるのは事実で、実際に調査をすると飲食店の多くで不正が発覚しています。
飲食店の脱税手口や調査官が調べるポイントを確認し、脱税を疑われないよう対策していきましょう。
目次
国税庁の調査により、脱税が多い業種というのは把握されています。
申告漏れ所得金額が高額な上位10業種では、焼肉店が4位となっていますし、不正発見割合の高い業種1位は外国料理店となっています。
参照:国税庁|事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種
参照:国税庁|平成30事務年度における法人税等の申告(課税)事績・調査事績の概要
また以下のような理由から、飲食店は申告漏れが起きやすい状態であると考えられます。
時代の流れとともに現金以外での支払い方法が多様化してきましたが、飲食店は現金商売が多いという傾向があります。
お客様から現金を受け取っていると、記録が残りにくく、売上を隠ぺいしやすくなります。
売上の除外が疑われやすくなりますので、売上や経費の計上を正確に行いましょう。
売上と経費にズレがあると、小さなものでもそこから脱税を疑われる可能性があります。
飲食業は、仕入れの量や取引の回数が多くなる業種のひとつです。
やり取りが多いと単純にミスが起こる確率も上がりますので、計算ミスや記入漏れが多くなります。
計算ミスや記入漏れが起きていると自覚がある場合は、従業員数やマニュアルを見直してミスを減らせるよう対策していきましょう。
また紙資料で帳簿を作っている場合は、特に不正が可能な状態となりますので、電子化を検討するなどの配慮も必要になるでしょう。
税務調査を行う調査官の数や調査件数には限りがあります。
全ての飲食店に税務調査を行うわけにはいきませんので、税務署は 1回の調査で成果が出せるような調査先を選んでいます。
飲食店は他の業種よりも不正の発覚割合が高いとされていますので、税務調査の対象になりやすいです。
特に不正発覚割合が高いのは、中華料理、インド料理、食堂、レストラン等とされており、業界全体でマークされているといっても過言ではありません。 参照:国税庁|平成30事務年度における法人税等の申告(課税)事績・調査事績の概要
飲食店の脱税でよくある手口をご紹介します。
基本的には利益を少なく見せるために、売上を減らすか経費を増やすという方法です。
これらの方法は税務調査の調査官も把握している内容であり、特に調査される事柄であると覚えておきましょう。
飲食店の脱税で多いのが、売上の一部をなかったように見せかける 売上除外です。
売上伝票を処分し、そもそも売上がなかったようにするので、当然帳簿にも記録を残しません。
毎日数万円ずつだと大きな金額に感じられず、「脱税をしている」という感覚は薄いかもしれませんが、年間になると金額は大きくなります。
誰もが思いつく脱税のやり方で、税務署が目を光らせている部分のひとつです。
レジを打っていれば記録が残りそうで不正を行っていないように見えますが、レジを改ざんして削除してしまうという手口もよくある方法です。
レジに削除記録が残っていて、すぐにバレてしまったという事例があります。
お客様がレジに並んでいる忙しい時間に、レジの箱を開きっぱなしにしておつりを渡すという光景も見かけますが、伝票を打っていないと怪しまれてしまうでしょう。
税務員の潜入調査を恐れ、新規のお客様の伝票ではなく、常連さんの伝票のみを選んで削除するという手口もあります。
また「継続してレジ打ちをする際に、同金額のお会計だと不正をしやすい」というデータがありますので、調査官が2人連続して並び、 同金額のお会計をして不正を見極めるという場合もあります。
本当は営業していたのにも関わらず、営業時間をごまかして、その時間の売上をゴッソリと抜いてしまうという手口があります。
例えば22時閉店としている飲食店なのにも関わらず、23時まで営業して1時間分の売上をごまかす方法です。
クレジットカードやQRコード決済を利用すると、時間の記録が残りますので「現金のみ」としている飲食店にみられます。
営業時間をごまかすよりも大胆な手口で、営業日をごまかすという方法があります。
本当は営業をしていたのに、店休日として1日分の売上をなかったように見せかけます。
年末年始に多い手口ですが、従業員のタイムカードや給与の支払いからバレる場合があります。
個人経営の小さな飲食店ではなく、チェーン展開しているような飲食店では店舗そのものの売上を隠ぺいしてしまうという手口があります。
X店舗を隠すために、A店舗やB店舗の売上のみを申請します。
X店舗の経費はA店舗やB店舗に入れるなどすれば、経費を増加させながら売上を一部隠ぺいできます。
しかし「X店舗の仕入れ伝票が出てくる」「X店舗限定クーポンチケットがある」などの理由から、X店舗の存在がバレてしまいます。
税務署が飲食店の脱税を調査するときには、どのような調査方法があるのでしょうか。
4つの調査方法をご紹介します。
内観調査とは、飲食店の店舗内の調査です。
調査官が客として店内に入り、従業員の数やメニューの内容や価格帯、混雑具合などを見て1日の売上を推測します。
特に目を光らせているのが、お会計のシーンです。
誰がレジを打っているのか、どのように打っているのか、伝票や領収書の取り扱いなどをチェックし、不正がないかを確認します。
外観調査とは店内には入らない予備調査で、店の立地や人の流れをチェックしています。
立地条件が良い店であれば家賃は高額になりますので、回転率を上げていく必要があります。
売上とこれらの条件のつじつまが合うか、内観調査での推測と合うか、というような点をチェックされています。
例えば、立地条件が良いのに売上が低い、という場合は売上除外が疑われ、税務調査の対象になる可能性があります。
臨場調査とは、調査官と納税者が対面で行う調査です。
この段階ではすでに内観調査や外観調査が行われており、税務代理を委務した税理士立ち合いで調査を受けても構いません。
過去の申告書や保管資料を確認し、正しく納税が申告されているかを調べます。
故意でない脱税なのか、脱税の意思があったのか、なども確認しています。
売上だけでなく、店主の暮らしぶりやSNSなども重要な情報源となります。
例えばお店の情報を調べるために、検索をしたりホットペッパーや食べログといった口コミサイトもチェックします。
「評判はいいのか」「流行っている飲食店なのか」というのは、現地に出向かずとも情報収集できてしまいます。
また店主や社長のフェイスブックやインスタといった個人アカウントをチェックすれば、暮らしぶりがわかります。
もし税務調査の対象になったら、「何を確認されているのか」「どんな点が調査の対象になっているのか」と気になる方が多いでしょう。
飲食店の税務調査での確認事項をまとめました。
先述した通り、売上除外はよくある改ざんの手口のひとつなので、 まずは売上が正しく申告されているかを確認されます。
売上金はもちろん、管理方法や管理の状態について不自然な点がないかをチェックされます。
レジを打っている飲食店では、レシートの控えを見ていきますが、 売上が途切れている時間があると不審点だと判断されるでしょう。
レジを使用していない飲食店では、集計方法を細かくチェックされるでしょう。
もちろん正しく管理ができていれば問題ありませんので、売上集計をきちんと説明できる状態にしておきましょう。
脱税の意思がなかったとしても、売上と帳簿の整合性がとれていないと正しい申告ができているとはいえません。
内観調査や外観調査で売上に関する情報を集めていますので、税務官の調査に虚偽答弁をしないよう誠実に対応しましょう。
意図的に虚偽の申請をしたと判断されると、重加算税が課されます。
飲食店は食材を扱う業種なので、毎日のように仕入れがある業種です。
故意であるか否かに関わらず、仕入れや在庫の確認を行う際ので 帳簿の記載漏れがないか、水増しが行われていないかをチェックします。
仕入れだけでなく、在庫が適切に管理されているかもチェック項目です。
自家消費をする際には売上に計上しなければいけませんので、適切に処理するようにしましょう。
飲食店では、アルバイトやパートを雇う場合があります。
勤務状況やその勤務に応じた給与が適切に支払われているかも、調査の対象となります。
中には架空のアルバイト従業員がいるように装い、人件費を水増ししていたという不正もあります。
調査官に聞かれたら、シフト表など証拠となるものを提出できるようにしておきましょう。
飲食店の脱税に関するよくある質問をまとめました。
税務調査が行われる場合、原則として納税者に事前通知があります。
しかし先述した通り、飲食店は不正が多い業種であるため、 証拠隠滅を恐れて無通知で来る場合もあります。
不正をしていなければ無通知で税務調査が来たとしても、問題はないはずです。
日頃から適切に売上や経費を処理しておきましょう。
内観調査や外観調査が行われた後、調査官が来店し臨場調査を行います。
無通知で突然調査が行われるとなるとパニックになってしまう人もいるかもしれませんが、冷静に対応しましょう。
「営業に支障がある」「税理士の立ち合いを希望する」と理由がある場合には、日を改めてもらえるよう交渉してみましょう。
税務調査の期間は、最大で過去5年分です。
しかし脱税が発覚した場合には、過去7年分まで遡って調査されますので、7年分の資料は大切に保管しておきましょう。
税理士を依頼するには費用がかかりますので、「自分で経理まで頑張ろう」と思う方がいるかもしれません。
しかし飲食店を始める段階から、顧問税理士がついていると安心した経営ができるようになります。
正しい納税の申告ができるのはもちろん、店主として飲食店での仕事に注力できるようになるためです。
その店舗に合った節税の提案もできますので、無駄な税金を抑えられるようになるでしょう。
税務調査が入ってから慌てて税理士を探す方がいますが、その飲食店の状況を熟知している税理士がついていた方が良いのは間違いありません。
「バレなければいいだろう」「少しくらい大丈夫」という気の緩みから売上除外をし、多額の脱税を行ってしまう飲食店があります。
もちろん適切に税申告をしている飲食店もありますが、脱税が多い業界だとマークされているのは事実です。
脱税を疑われないようにするには、日頃から適切に仕入れや売上の状況を記録しておくだけでなく、税理士をつけておくといいでしょう。
確定申告書を税理士が作成するだけで、税務調査の対象になりにくくなるともいわれています。
将来的にたくさんのお客様に美味しいお料理を楽しんでもらうためにも、誠実な税申告を心がけましょう。
免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断
←前の記事
お寺なぜ脱税?非課税のはずの宗教法人に課税される収益事業とその判断
次の記事→
経費の水増しは脱税!税務調査で法人・個人事業主がバレたときのリスクとは
あわせて読みたい記事
税務調査
税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!
専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。