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消費税の還付は税務調査の対象になりやすい?調べられる内容を解説

読了目安時間:約 6分
法人・個人事業主が気をつけなければならない税務調査において、消費税に関してしっかりと対策をとっているでしょうか。
実は、近年では消費税について不正還付防止の目的で重点的に税務調査を実施していると言われているのです。
本記事では、消費税の税務調査で調べられる内容やチェックポイントについて解説します。
事業の取引において消費税がかかるものとそうでないものを区分するのには専門的な知識が必要となるので、ぜひこの記事を参考に、消費税に関する税務調査の実態についての理解を深め、税務署から指摘を受けないためにも、適切な税務処理と正しい申告・納税が行えるよう対策を取りましょう。
目次
税務調査とは
税務調査とは、国税局が管轄する税務署などによる、法人や個人事業主の税務申告内容が正確かどうかを確認するために行う調査をいいます。
税務調査には強制調査と任意調査があり、強制調査、いわゆる「マルサ」のような調査で、不正をしたことが明らかな場合に行われ、突然、国税局査察部が訪問して強制的に行われる調査です。
任意調査は調査対象者に事前に連絡をし、日程調整をしたうえで行われる税務調査ですが、任意という名称だからとはいえ拒否できるものではなく、拒否した場合には罰則規定もあるので注意しましょう。
税務調査を行う理由
税務調査の主な目的は、内国税の適正かつ公平な徴収であり、悪質な不正計算や税金逃れを是正することです。
納税者に対してヒアリングや帳簿の確認などを行い、誤りがないかを見つけ出します。
そのため、税務調査によって意図していない誤りを指摘されないよう、申告や納税についての理解を深め、適切に税務処理を行わなければなりません。
消費税も税務調査の対象になる
税務調査に入る法人・個人は完全にランダムで選ばれるのではなく、規模の大きい企業や不正が疑われる企業など、一定の条件のもとに行われるケースが多いです。
また、税務調査ではあらゆる税を対象に調査が行われますが、基本的に法人の場合は法人税の調査が、個人事業主が事業を行っている場合には所得税の調査が行われます。
ただし、消費税の申告を行っている事業者に対しては、消費税も調査対象となるので覚えておきましょう。
消費税は一番身近な税金であるため、簡単に考える方が多いのですが、全ての取引が課税対象になるわけでなく、非課税もしくは不課税のものもあり、経理処理は意外と複雑になっているため、税務調査で指摘されやすい項目なのです。
消費税だけを対象とした税務調査は基本的に行われない
税務調査においては、消費税について単独で調査が行われることはほとんどありません。
多くの場合、法人税や所得税の税務調査と同時に消費税の調査も行われ、法人税や所得税についての調査時に、消費税に関係する資料を求められたり、消費税の会計処理が正しいかどうかをチェックされたりします。
ただし、消費税は顧客から預かった税金を納付するものであり、たとえ赤字であっても納付しなければならないため、赤字会社でも消費税の調査が単独で行われる可能性は十分考えられます。
消費税の還付を受けている会社は注意
「消費税の還付を受けると税務調査が来やすい」という噂を耳にしたことはないでしょうか。
実は、これは事実であり、消費税の還付を受けた場合には税務署がその申告内容を詳しく調査しているのです。
特に、高額な還付の場合は税務調査が行われやすくなるため、注意が必要です。
消費税の還付に関しての税務調査について、詳しく説明していきます。
消費税の還付とは
消費税は、「売上にかかる消費税等」から「仕入にかかる消費税等」を差し引いて納付すべき消費税を算出します。
消費税還付の仕組みとして、仕入や経費にかかる消費税等が売上にかかる消費税等よりも多かった場合に、差し引きされた消費税が還付されるということになります。
ただし、免税事業者や簡易課税を選択している事業者は還付を受けられません。
消費税が還付されるケース
前述した通り、免税事業者や簡易課税を選択している事業者は還付を受けられませんが、以下のようなケースで消費税が還付されます。
- 売上に比べて給与、法定福利費、保険料、租税公課等を除く課税仕入にかかる諸経費が多い場合
- 多く仕入を行ったものの、在庫が大量に残った場合
- 高額な資産を購入した場合
- 売上先が海外の場合
消費税は、日本国内における商品の販売やサービスの提供に対して課税されるため、外国で消費されるものに対しては消費税が免除されます。
上記のような場合では多額の消費税が還付される可能性があり、税務調査の対象となることがあるのです。
税務調査で消費税が重要視される理由は?
税率が8%から10%になって以降、消費税についても重点的に税務調査を実施していると言われています。
なぜなら、消費税は法人税や所得税などと異なり、「他人から預かった税金」という位置付けであるため、厳しくチェックすべき項目であるという認識が税務当局にはあるからです。
近年では、消費税について虚偽の申告を行い、不正に還付を受けるケースも増加しているため、税務当局も不正還付防止を目的に消費税に関する税務調査を重点的に取り組んでいる傾向にあります。
消費税の税務調査で調べられること
税務調査ではどのような項目について調べられるのか気になる方も多いでしょうが、事業に関する全ての事項がくまなく調べられると思っておいた方が良いでしょう。
消費税に関しては、主に以下の項目が詳しく調べられます。
- 消費税申告書と決算書などとの整合性チェック
- 帳簿の確認
- 請求書の確認
- 領収書の確認
消費税の税務調査でチェックされる項目について、それぞれ具体的に説明していきます。
消費税申告書と決算書などとの整合性チェック
一般的に、消費税申告書は決算書や市販の会計システムで作成した消費税集計表をもとに作成するため、通常は消費税申告書と決算書の内容は整合するはずです。
しかし、会計システムの処理方法を理解していなかったり、他のシステムと連動させたりすることによって、消費税の整合性が取れていないケースもよくあります。
消費税申告書と決算書との整合性が取れていないときは、調整を行った内容が正しいものであるかどうか、詳しく調査されます。
帳簿の確認
税務調査では、仕入にかかる消費税や売上にかかる消費税の区分に誤りがないかどうか、帳簿を細かく見て確認します。
福利厚生費、通勤費、交際費、賃借料などの課税や非課税の区分が混じっている勘定科目に関しては重点的に調べられるほか、固定資産の取得や売却などがあれば、詳細な確認が行われるでしょう。
帳簿書類は仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳などが該当し、事前の税務署内での調査や、対象事業者への事業内容のヒアリングなどを行ったうえで、よく指摘される項目から順番に確認されます。
請求書の確認
帳簿だけでなく、請求書や領収書の確認作業も行われ、実際の取引に基づき正確な記帳がされているかチェックします。
請求書の確認作業では具体的に、仕入・外注などの支払いに関する請求書と、得意先が発行する売上に関する請求書の控えをチェックし、請求の内容や計上時期がズレていないかなどが確認されます。
経費の過大計上などが法人税の調査で見つかった場合には、消費税の修正事項にもなるので注意しましょう。
また、請求書に関連する納品書や見積書に関しても提出を求められる可能性もあるため、事前に整理しておくのが望ましいです。
領収書の確認
税務調査における領収書の確認では、現金で支払った経費に関する領収書のほか、現金売上がある場合には、その売上の領収書も詳しくチェックされます。
特に、高額な支払いに関する領収書に関しては、重点的に確認されるでしょう。
また、売上の計上漏れは消費税の修正事項にもなり得ますし、現金売上の領収書については、通帳へ入金されるものとは違い、実態がわかりづらく不正が行われやすいため、どのように管理しているのか、詳しく説明を求められる場合があります。
さらに、インボイス制度の導入に伴い、今後はクレジットカードの控えや明細のほか、支払い先が発行したレシートについても確認される可能性が高いです。
税務調査における消費税のチェックポイント
消費税の税務調査で調べられる項目について説明してきましたが、税務調査官は以下の点について厳しくチェックしています。
- 消費税の申告を怠っていないか
- 仕入税額控除の算定が正しいか
- 簡易課税制度の活用が正しくなされているか
- 架空の仕入や売上があったように見せかけていないか
消費税のチェックポイントについて解説しますので、税務調査対策をするためにも、詳しく把握しておきましょう。
消費税の申告を怠っていないか
消費税については、法人・個人に関わらず、課税売上高が1,000万円を超えると2年後から消費税を納める義務が発生するため、まず2年前の課税売上高の1,000万円判定が適正に行われているか、そして正しく申告を行っているかを確認されます。
小規模な事業者の場合、売上高が1,000万円を超えていないケースもあるでしょう。
しかし、売上高がギリギリ1,000万円を超えないような場合は、調整がされていないかを疑われることもあるので、注意が必要です。
仕入税額控除の算定が正しいか
消費税の仕入税額控除は、課税事業者が消費税を計算する際に、売上にかかる消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて計算することで、ミスが起こりやすく、税務調査で指摘されやすい項目の一つです。
課税対象ではない取引であるにも関わらず、課税取引として仕入税額控除の対象としていた場合には消費税の納付額は少なくなるため、このようなミスや不正がないかを詳しくチェックされます。
仕入税額控除は、正しく理解をしていなければ納税額に大きな影響を及ぼすため、仕入区分の判定基準をしっかり確認しつつ、適切に対応できるようにしましょう。
簡易課税制度の活用が正しくなされているか
簡易課税制度とは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の中小事業者の納税事務負担を軽減することを目的に作られた制度です。
要件を満たせば「みなし仕入率」を使って消費税額を簡単に計算できるというメリットがあるのですが、簡易課税制度を適用させるためには、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることに加え、事前に簡易課税制度選択届出書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
また、簡易課税制度を利用している場合には、税務調査時に自社が該当する業種のみなし仕入れ率を使って正しく消費税の計算がなされているかについての確認も行われます。
架空の仕入や売上があったように見せかけていないか
消費税の還付を受けている事業者においては、架空の仕入があったように見せかけて書類を作成したり、消費税が免除となる海外へ売上があったように偽装していたりしていないか、税務調査で詳しく調べられます。
過去には、取引実態がないにも関わらず国内での仕入を装って架空の課税仕入を計上し、国外への販売を装い架空の免税売上を計上する方法で不正に消費税の還付を受けようとするケースもありました。
この場合、偽造された請求書や輸出許可書を用いることが多いですが、実在しない取引を偽装してもすぐに見破られてしまいます。
申告内容に不安があれば税理士への相談がおすすめ
税務調査でミスや申告漏れが発覚した場合には、修正申告が必要となり、たとえ故意でなくても過少申告加算税や延滞税なども支払わなければならず、額が大きくなるほど追徴される額は大きくなり、会社にかかる負担も大きくなってしまいます。
近年では税務当局は消費税に関する税務調査を重要視しており、特に消費税の還付を受けている会社は注意が必要です。
「こうしておけば」と後悔しないためにも正しく会計処理を行い、適切な申告・納税を行うよう心掛けましょう。
正しい申告を行っていれば、申告漏れや税務調査を過度に恐れる必要はありませんが、申告内容に少しでも不安がある場合には、税理士に相談して適切なアドバイスを受けるのがおすすめです。
税務調査対応に強みを持つ税理士に依頼すれば、心強いサポートを得られるはずです。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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