2025.01.10
  • 税務調査

税務調査でも任意調査だったら断れる?調査の流れや調査後の対応方法

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

一定の所得を得ている法人や個人は、納税の義務があります。しかし、日本では納税者が自ら所得額を申告し、納税するシステムを採用しているため、中には正しく納税を行っていないケースがあります。税務調査は、納税の公平性を維持するために適正な納税が行われているかをチェックする税務署などによる調査です。

税務調査は、大きく任意調査と強制調査の2つに分けられますが「任意」調査の場合、納税者は調査を拒否することができるのでしょうか。

今回は、任意調査の概要や調査の流れ、調査対象に選ばれた場合の対応法などについてご説明します。

 

任意調査とは

任意調査とは、納税者の同意を得て実施される税務調査のことです。税務調査の多くは任意調査に該当し、任意調査では管轄の税務署の調査官が調査を担当します。

税務調査には、任意調査のほかに、強制調査と呼ばれる調査があります。強制調査は、国税局査察部が裁判所の令状を持って強制的に行う調査であり、国税局査察部はいわゆる「マルサ」と呼ばれる組織です。強制調査は多額の脱税などが疑われる場合や仮装・隠蔽等による悪質な行為が疑われる場合などに実施されるケースが多くなっています。

そのため、一般的に税務調査と呼ばれる調査のほとんどは、税務署の調査官による任意調査となります。

 

税務調査も任意調査なら拒否できる?

強制調査は、納税者の意思にかかわらず強制的に実施されます。そのため、納税者が強制調査を断ることはできません。では、税務調査であっても、納税者の同意が必要な任意調査であれば、納税者が拒否することはできるのでしょうか。

 

任意調査も原則として拒否はできない

結論から申し上げますと、任意調査であっても納税者が税務調査を拒否することはできません。それは、税務調査を実施する調査官に質問調査権が与えられているからです。

質問調査権とは、調査官は必要に応じ、納税者に対して質問をし、帳簿などの検査・提示・提出を求めることができるという、国税通則法によって認められている権利です。また、納税者には質問検査権に対応する義務があり、この義務を受忍義務といいます。

 

任意調査を拒否すると罰則が科せられる

任意調査と名の付く税務調査であっても、納税者は正当な理由なく調査を拒否することはできません。それは、受忍義務に違反し、質問検査権に応じなかった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることになるからです。つまり、税務調査から任意調査の調査対象として選ばれたときは、納税者は調査を受け入れざるを得ないということになります。

また、罰則が科せられるのは、任意調査を拒否した場合だけではありません。税務調査時に、調査官の質問に対し正しく回答しなった場合や帳簿の提示を求めたにもかかわらず、帳簿を見せなかった場合、偽装した内容の帳簿を見せた場合なども罰則の対象となります。

 

税務調査(任意調査)の流れ

強制調査は、納税者の都合にかかわらず、事前連絡なしに実施される税務調査ですが、任意調査の場合は、次のような流れで調査が進められるケースが一般的です。

 

  1. 税務署から事前通知がなされる
  2. 調査日時の調整
  3. 必要書類の準備
  4. 実地調査
  5. 調査結果の報告

 

それぞれの流れについて詳しくご説明しましょう。

 

1.税務署からの事前通知

任意調査が実施される前には、税務署から電話によって税務調査に入る旨の通知が行われます。この通知を事前通知といいます。

任意調査の際に、納税者に協力を促し、透明性の高い調査を実施するため、平成23年12月の税制改正において、任意調査前には事前通知を行うことが法律で明確に示されました。

事前通知の際には、納税者に対し、調査の開始日時、開始場所、調査対象の税目、調査対象期間などが通知されます。事前通知は電話で実施されるケースが一般的ですが、電話での通知が難しい場合には、文書などにより通知される場合もあります。また、申告を行う際に、税理士が申告書に税務代理権限証書を添付して申告している場合は、納税者ではなく、税務代理権限を持つ税理士に対し、事前通知の連絡が入ります。

ただし、事前通知は必ず実施されるものではありません。事前に税務調査の実施日などを伝えることで正しく調査が行われない恐れがあると判断される場合には、事前通知は行われません。その場合、調査官が調査場所となる事務所や店舗、自宅などを予告なく訪問し、直接調査を行います。

 

2.任意調査日時の調整

任意調査は、税務署の調査官が調査対象者のもとを訪れ、帳簿などの確認をしながら、質問検査権に基づき、質問や調査を行うものです。したがって、納税者や代理権限を持つ税理士が不在の場合、適正な調査を行えない可能性があります。そのため、任意調査を拒否することはできませんが、任意調査の実施日時について相談をすることは可能です。

例えば、経営者が検査や手術などのために入院することがあらかじめ決まっており、税務調査に立ち合えない場合、業務の繁忙期で税務調査への対象が難しい場合などは、その旨を口頭で伝えれば、税務署側のスケジュールと合わせ、調査日時を調整してもらえます。また、税理士に立ち会いを依頼する場合にも、税理士のスケジュールを確認したうえで、税理士が立ち会える日程で調整することが可能です。

 

3.必要書類の準備

税務調査の日時が決定したら、スムーズに調査を実施できるよう必要な書類を準備しておきます。税務調査の際には、次のような書類の提示を求められるケースが多くなっています。

 

帳簿

・仕訳帳

・総勘定元帳

・現金出納帳

・当座預金出納帳

・受取手形記入帳

・支払手形記入帳

・売掛帳

・買掛帳 など

 

帳簿作成の基となる信憑書類

・納品書

・請求書

・領収書

・小切手控え

・預金通帳

・借用書 など

 

決算に関連する書類

・損益計算書

・貸借対照表

・棚卸表 など

 

人件費に関わる書類

・源泉台帳(一人別徴収簿)、扶養控除申告書等

・社会保険関係の書類

・特別徴収の住民税の通知書、タイムカードの記録 など

 

そのほかの書類

・契約書

・見積書

・稟議書

・議事録

・会社案内のパンフレット  など

 

4.実地調査

相談のうえで決定した税務調査の実施日時に、税務署の調査官がオフィスや店舗などを訪れ、実地調査が開始されます。その際、担当する調査官は、身分証明書と質問検査章を納税者に提示し、身分や名前を公開したうえで調査を行います。

実地調査にかかる日数は1~3日程度が一般的です。個人に対して実施される税務調査の場合は1日で終了するケースもありますが、法人の場合、規模などによっては3日以上の時間がかかるケースもあります。

 

実地調査時には、まずは会社の事業内容や業績などについて調査官から質問がなされるケースが多く、その後、帳簿の提示を求められ、帳簿を確認しながら、内容を確認するための質問が行われます。税理士に対応を依頼している場合には、事前に税理士と相談しておくと、当日に調査官から質問を受けそうな箇所や調査官から指摘を受ける可能性が高い箇所などについて打ち合わせをしておくことができます。そのため、想定された質問がなされた場合には、落ち着いて質問に回答することができるでしょう。

 

また、実地調査だけでは帳簿等の確認が終わらない場合などは、納税者の承諾を得たうえで、調査官が帳簿書類を預かり、税務署に持ち帰って調査を継続します。その際には預かり証が渡されるため、調査官に渡した帳簿書類が手元に戻るまで、必ず預かり証を保管しておくようにしましょう。

 

実地調査によって十分な情報を得られなかった場合や、提出された帳簿などに疑義が残る場合などは、取引先や雇用主などに対し、質問や検査などが行われるケースがあります。

納税の当事者ではなく、第三者に対して実施されるこの調査を反面調査といいますが、反面調査は任意調査のように事前に通知がなされるわけではありません。そのため、税務調査時に正しい情報を提示しなかったり、調査官の質問を拒んだりすると、取引先に多大な迷惑をかける恐れがあるのです。反面調査の対象となった取引先には不信感を抱かせる可能性があるため、今後の取引にもマイナスの影響が生じる恐れもある点に注意しなければなりません。

 

5.調査結果の報告

任意調査が終了すると、調査結果の報告がなされます。税務調査の結果には「申告是認」、「修正申告」、「更正」の3種類があり、それぞれの結果によってその後の対応方法が異なります。

 

税務調査後の対応方法

税務調査の結果には、3つの種類があることをご紹介しました。では、それぞれの結果を受けた場合、どのような対応が必要になるのでしょうか。税務調査終了後の対応法を3つのパターンに分けてご説明します。

 

申告是認の場合

申告是認とは、申告内容に何も問題がなかった場合を指す言葉です。申告是認の通知が届いた場合は、特にその後の対応は必要なく、税務調査はそのまま終了することになります。

 

修正申告の場合

税務調査の際に、調査官に申告内容の誤りを指摘され、その指摘事項に納得できる場合は、指摘事項を受け入れ修正申告を行います。修正申告とは、納税者が自ら申告の誤っている点を正して申告をやり直し、税務署に修正申告書を提出し、不足分の税額を納める行為です。

しかし、修正申告の場合に納める必要があるのは不足分の税額だけではありません。申告内容に誤りがあり、納税額が不足していたことに対するペナルティとして課せられる過少申告加算税の納付も必要です。また、そもそも申告をしていなかった場合については、より税額の重い無償申告加算税が課せられます。

さらに、税金の納付が遅れたことに対する利息の意味を持つ延滞税も加算されるため、修正申告が必要になった場合、納税者は本来よりも多くの税金を納めなければなりません。

 

更正の場合

税務署から申告内容の誤りを指摘されても、指摘内容に同意できないケースがあるかもしれません。その場合は、税務署に指摘されたとおりに申告内容を修正し、申告をしなければならないわけではありません。しかし、修正申告に応じない場合、税務署は納税者に対し、更正処分を下します。更正とは、税務署側が納税者の申告の誤りを正す行為のことです。

つまり、税務調査の結果、何らかの誤りがあると税務署が判断した場合は、納税者が指摘を受け入れて自ら修正申告を行うケースと税務署側が誤りを正す更正の2つのケースに分けられるというわけです。ただし、修正申告を行う場合であっても、更正処分が下される場合であっても、過少申告加算税や無申告無新加算税、延滞税などの金額が変わることはありません。

更正処分を受け、処分内容に納得できない際には、処分の通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内であれば、税務署長などに対して再調査の請求を行うか、国税不服審判所などに不服申し立てを行うことができます。

 

・再調査の請求

再調査の請求とは、簡易的な手続きによって処分の見直しを求める事後救済手続きです。再調査の請求は、再調査の請求書をe-Taxで送付するか、税務署に提出することで行えます。

再調査の請求書が提出されると、税務署長は再調査を実施します。再調査によって請求内容が妥当ではないとされると納税者の請求は棄却され、請求内容が認められた場合には、処分内容の見直しや取り消しを行う決定が出されます。

 

・国税不服審判所への不服申し立て

国税不服審判所とは、納税者の正当な権利を救済することを目的に設立された国税庁の特別機関であり、税務署長などが下した処分についての審査請求に対し、第三者的な立場で公正な判断を行います。

税務調査の結果に不服がある場合は、税務署長に再調査の請求を行うか、国税不服審判所に不服を申し立てるか、いずれかの選択が可能です。しかし、税務署長に再調査の請求を選択した場合でも、再調査後の処分について不服がある場合は、決定の翌日から1ヶ月以内であれば、国税不服審判所への不服申し立てをすることもできます。

国税不服審判所長は、納税者の不服申し立てを受けて調査・審理を実施した後、その結果を「裁決書」として納税者と税務署長に通知します。国税不服審判所長の判断にも不服がある場合は、裁決があったことを知った日の翌日から6ヶ月以内に訴訟を起こすことも可能です。

 

まとめ

税務調査には、大きく分けて強制調査と任意調査の2つがあります。強制調査は多額の脱税が疑われる場合などに実施される税務調査で、一般的な税務調査のほとんどは納税者の同意を得て行われる任意調査です。

しかし、任意調査であっても納税者が正当な理由なく、税務調査を拒否することはできません。税務調査時には細かなチェックが行われますが、解釈の違いによって、申告内容が誤っていると捉えられるケースもあれば、正しいと考えられるケースもあります。納税者側の主張を正しく行い、修正申告や不要な追徴課税を避けるためには、事前通知を受けた際に税理士に相談し、税務調査への立ち会いを依頼することをおすすめします。

 


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