2025.02.27
  • 税務調査

税務調査が来たことないって本当?来やすいケースや対処法を解説

読了目安時間:約 7分

「開業してから税務調査なんて来たことない」「個人事業主に税務調査は来ない」「税務調査が来る確率はとても低いから心配しなくてよい」など、税務調査に関するさまざまな噂を耳にしたことはないでしょうか。税務調査は本当になかなか来ないのか、来やすいケースはあるのかなども気になるところです。

この記事では、税務調査の概要や税務調査が来たことないというケースの理由、逆に税務調査になりやすいケースなどについて解説しています。税務調査への対処法についても紹介していますので、日頃の疑問を解消する参考としてお役立てください。

 

税務調査とは

税務調査とは、納税者を対象に実施される調査のことで、申告や納税した内容を確認するために行われるものです。

所得税や法人税といった税金の申告、納付は「申告納税制度」によって、納税者が自主的に申告して納税を行うケースがほとんどです。

納税者が申告した内容に間違いや不正があれば正し、適正な申告、納税へと導くことが税務調査の目的となっています。

 

税務調査の種類

税務調査は、一般的な事業者や会社に対して行われる「任意調査」と、巨額の脱税や取引規模が大きいなど、悪質性が高いケースに対して実施される「強制調査」とに大きく分けられます。

 

任意調査と強制調査の違い

任意調査は、犯罪性があると判断されない納税者に対して実施されるもので、管轄する税務署の調査官から訪問を受け(実地調査)、過去の帳簿や申告書、決算書類などについて確認されたり、質問を受けたりされるのが一般的です。

「任意」という名称がついており、実地調査の前には事前に電話などで調査をする旨の連絡を受けるため、調査への協力は任意なのかと思いそうになりますが、実際は正当な事由のない限り任意調査を拒否することはできません。

帳簿やデータの閲覧、証明書類の提出なども、その都度調査官から確認があり、了承した後に確認作業が進められます。訪問する調査官は1~2名で、調査にかかる日数も2日前後であるケースが多いでしょう。

一方、強制調査は犯罪性や悪質性が疑われる納税者に対して実施されるもので、国税局査察部によって行われます。

任意調査と違い事前の連絡などはなく、ある日突然多数の査察官がやって来て、裁判所の令状を持ってオフィスや倉庫、店舗や経営者の自宅などへ押しかけ、臨検と呼ばれる立ち入り検査が実施されます。

ドラマや映画、ニュースなどで目にしたことのある方もいるかもしれません。強制調査では、調査対象者の同意を得ることなく、証拠品の押収や捜索などが行われます。

 

税務調査が実施される確率

税務調査はどのくらいの確率で実施されるのかについて見ていきましょう。

 

税務調査にあう確率はどのくらい?

国税庁では、毎年所得税や法人税などの税務調査に関する状況を公開しています。2023年度の数値を見ると、法人税に関する税務調査が入る確率は約1.9%、所得税に関する税務調査が入る確率は約0.2%であることがわかります。

法人税の場合は約50回に1回程度、所得税は約500回に1回程度の割合で税務調査がやって来る計算になります。

 

参照:国税庁

「令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0024005-100.pdf

 

「令和5事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/hojin_shinkoku/pdf/hojin_shinkoku.pdf

 

「税務調査が来たことない」は本当?

上記の確率がすべての納税者に当てはまる場合「起業して10年程経っても税務調査が来たことない」というケースもあると考えられます。

しかし、税務調査は申告された内容について調査を行うだけでなく、確定申告を行う必要があるにもかかわらず申告を行っていない「無申告」の状態にある納税者も対象となります。上記国税庁のデータでは、2023年度に無申告者に対して実施された調査件数は5,274件、2022年度は5,229 件であったことがわかっています。しかし、無申告状態の納税者へ調査が実施される確率については、はっきりとは公表されていません。

また、実地調査を行う前に、税務署内で疑わしい点についてある程度把握した状態で調査対象とされるケースも少なくないのです。

税務調査が実施される前から、申告漏れや虚偽申告があればほぼバレていると考えておいた方がよいでしょう。

 

税務調査が来やすいケース

税務調査にあう確率が高いのはどのようなケースなのかについて解説します。

 

そもそも申告をしていない

確定申告の必要があるにもかかわらず、申告自体をしていない無申告状態は、税務調査の対象となる確率がかなり高いといえます。

「申告をしていなければバレないだろう」と考えたくなるかもしれませんが、税務署では独自のルートによって、無申告状態について把握することが可能です。

税務署では税務調査を目的として、取引先が申告時に提出する支払調書や、金融機関の口座状況について確認することができる権限を持っています。

「支払調書に載っているのに申告されていない」「銀行に入金があるのに申告されていない」「証券会社の取引口座で売却益が出ているのに申告されていない」といった情報から無申告が発覚するケースや、第三者からの密告で発覚するケースもあります。

税務署では、無申告状態について積極的に調査対象としています。税務調査では最低でも過去3年間、最大で7年間まで遡って調査対象とすることができます。無申告状態を何年も続けて「もう税務調査は来ないだろう」と油断した頃に、税務署から連絡が来る可能性も少なくないのです。

 

税務署が積極的に調査対象としている業種に従事している

国税庁では、毎年税務調査で不正発見割合の高い業種や、申告漏れ所得額が高額な業種を発表しています。

所得税の税務調査で、2023年度の1件当たりの申告漏れ所得⾦額が高額な業種は以下のようになっています。

1位:経営コンサルタント 3,871 1,040 (前年度も1位)

2位:ホステス・ホスト 3,654 507

3位:コンテンツ配信 2,381 436

4位:くず⾦卸売業 2,068 683(前年度2位)

5位:ブリーダー 2,028 459(前年度3位)

6位:焼き鳥 1,657 427

7位:太陽光発電 1,625 119(前年度8位)

8位:内科医 1,621 408

9位:スナック 1,616 326(前年度18位)

10位:⻄洋料理 1,517 288

 

また、2023年度の法人税の税務調査で不正が発見された割合が高かった業種は以下の通りです。

 

1位:バー・クラブ

2位:その他の飲食(前年度1位)

3位:外国料理

4位:土木工事(前年度も4位)

5位:美容(前年度10位)

6位:一般土木建築工事(前年度7位)

7位:職別土木建築工事(前年度5位)

8位:廃棄物処理(前年度2位)

9位:船舶

10位:その他の道路貨物運送

 

順位に上がる業種は政策や動向によって毎年変化があり、過去には頻繁に登場していた業種などもありますが、半数くらいは毎年同じ業種が上がっています。

不正発見の割合が高い業種や、1件当たりの不正額が大きい業種に従事している場合、税務署からマークされやすいと考えた方がよいでしょう。

 

参照:国税庁

「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/shotoku_shohi/pdf/shotoku_shohi.pdf

 

「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/hojin_chosa/pdf/01.pdf

 

開業して3年以上が経過している

税務調査にあう確率は、開業してから時間が経過するほど高まります。開業してから3年以上が経過している場合、事業や申告に慣れてきて油断が生じる可能性もあるからです。税務調査では過去3~5年(最大7年)まで遡って調査が可能となります。特に3年以上経過して売上が大きく伸びているようなケースでは、いつ税務調査がやって来てもおかしくないと考えた方がよいでしょう。

以前は開業後3年が経過すると消費税の課税業者となるため、消費税に関する不正が発覚しやすい時期とされていましたが、近年ではインボイス制度の導入などもあり、3年経たずに消費税の課税事業者となるケースも増えています。

 

現金取引や海外取引が多い

事業において現金による取引が多いと、振り込みや電子決済などと比べて足取りが掴みにくく、所得隠しや脱税などをしていないか疑われやすくなります。現金商売をしている飲食店などは、任意調査であっても事前連絡なく、抜き打ち的に調査が行われるケースもあるのです。

また、海外投資や輸出入など、海外との取引が多い場合も注意が必要です。消費税の課税対象を免税とするために海外経由にしていないか、国内で売上計上するべきものを海外へ移転していないか、といった点がチェックされやすく、税務調査の対象となる確率が高まるといえます。

 

申告内容に不審な点がある

売上に対して多額の経費が計上されている、収入が低く申告されているのに高額品を購入している、出所不明な入金や出金があるなど、申告内容とお金の動きに不審な点がある場合にも、税務調査の対象となりやすいでしょう。

税務署では、KSK(国税総合管理)システムと呼ばれるシステムから、同業種の収支バランスから逸脱しているものや、売上と経費のバランスがおかしいものなどをピックアップすることが可能です。税務調査の目的で銀行や証券会社などへ取引履歴を確認する権限も持っています。その他第三者からのタレコミなど、情報収集や調査を進め、不審点についてある程度裏を取ってから税務調査を実施するケースも少なくないのです。

 

過去に税務調査で指摘を受けたことがある

過去に税務調査を受けたことがあり、修正申告や更正処分を受けた過去がある場合、比較的短期間のうちに再度税務調査が実施されるケースもあります。

なお、過去の税務調査で追徴課税がゼロとなる、いわゆる「是認」であった場合には、次回の税務調査の確率を下げやすくなるでしょう。

 

顧問税理士がついていない

確定申告に当たり、顧問税理士をつけていない場合には、申告内容が適正であると判断しづらくなるため、税務調査が入る確率は高くなります。

「毎年正しく申告している」つもりでも、思い込みやうっかり間違い、法改正の内容で更新できていないといった理由で、申告漏れや過少申告が起きている可能性もあります。現在顧問税理士がついていない場合は、一度申告方法について間違いがないか相談してみることをおすすめします。

 

税務調査が来たことないケースで押さえたい対処法

これまで税務調査が来たことないケースにおいて、押さえておくべきポイントや対処法をご紹介します。

 

過去の書類や申告内容をチェックする

税務調査はどの納税者の元にもやって来る可能性があるものの、適正な申告や納税を続けることで、税務調査にあう確率を低く抑えることは可能です。

今後の申告や納税を間違いやミスがないようにするのはもちろん、過去の申告状況や保管書類などについてもチェックを行い、間違いが見つかった場合は速やかに修正申告することが大切です。

 

不安な場合は税理士へ相談する

顧問税理士がついていないか、顧問税理士がいても税務調査になった場合の対応などを相談しにくい場合は、税務調査対応の実績豊富な税理士事務所などへ相談してみるのも一つの方法です。

1人で思い悩む前に、無料相談などを活用して専門家へ相談してみましょう。

 

税務調査対応は税理士法人松本へご相談を

「今まで税務調査が来たことはないが、これから来るのか不安」「過去に無申告や過少申告があり、どうしたらよいのかわからない」といったお悩みがある場合は、税理士法人松本へ一度ご相談ください。

税理士法人松本は、国税OBや元税務署長の税理士が10名以上在籍しており、税務調査に関するご相談に全力で対応いたします。

税務調査の連絡を受けてからの相談や、顧問にしている税理士には言いにくい内容などもご相談ください。

全国どこでも、ご相談予約はフリーダイヤルまたは専用フォーム、LINEなどから、お気軽にお問い合わせいただけます。

 

まとめ

統計上は税務調査が来る確率はそこまで高くはないため、事業を続けていてもこれまで税務調査が来たことない、というケースは少なくありません。しかし、申告内容に間違いがある、調査で不正が発覚しやすい業種に従事している、そもそも申告をしていないといった状況にある場合は、税務調査が入る確率は高くなります。また、開業して3年以上が経過している場合は、いつ税務調査が来てもおかしくないと考えた方がよいといえます。

税務調査では3~5年、最大で7年前まで遡って調査対象となるため、過去の申告内容に不安がある場合は、専門家へ相談するなどして来るべき税務調査へ対処しておくようにしましょう。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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